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シュトルムを知ったのは、
周恩来の伝記からだった。
彼の愛読書が『みずうみ』と知り、読んでみた。
それから、すっかりシュトルムのファンになった。

 しずかなま昼だ 原野には
 陽があたたかく 照っていて
 古びたお墓のまわりには
 バラいろの 光がほのかに流れてい、
 野生の草花さきみだれ 立ちのぼってゆく
 野のかおり 夏の青空のただ中へ。

 遠くの方で 村の時計がひとつ打ったが
 ま昼のしずけさは さゆらぎもせず、
 年よりの まつ毛がしだいにたれてゆき
 夢みているのだ ハチミツのとりいれどきを。
 ― さわがしい時代のひびきも
 このしずけさに まだ押しよせてはこなかった。

 シュトルム「遠くで」より