流れのままに

流れのままに おのが道をゆけ ひたすらに ひたむきに

二〇一四年文月

69年前の1945(昭和20)年7月26日、米英中の3か国(のちにソ連も参加)はポツダム宣言(Potsdam Declaration)を発し、日本国ではなく、日本軍の無条件降伏を要求した。日本政府は、日ソ中立条約があるソ連に和平講和の仲介を託していたが、8月6日広島市に原子爆弾が投下され、8月8日ソ連対日宣戦布告、8月9日広島市に続き長崎市にも原子爆弾が投下されるという重大な事態が続いた。8月10日、日本政府は中立国を通じて、国体の変更を伴わないかどうかを連合国側に確認した。しかし、確答が得られぬまま、8月14日の御前会議で、昭和天皇の聖断により、「全日本軍の無条件降伏」等を求めた全13か条から成るポツダム宣言受諾が決定され、終戦の詔勅が発せられ、連合国に対しポツダム宣言の受諾を通告した。他の枢軸国が降伏した後も抗戦を続けていた日本はこの宣言を受諾し、先の大戦(大東亜戦争)は終結した。

特筆すべきは、ポツダム宣言10条にある「日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではない」(We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation)と明記してあること。日本はこれを受諾したので、奴隷にもされないし、皆殺しにもされなかった。無条件降伏をしたのは日本の軍隊のみであって、日本国自体は無条件降伏したわけではなかった。だから、天皇の地位は自由に日本国民の意志によって決めることができ、合衆国もこれを了解した。日本国民の意志を無視しないという条件を日本側は付け、交渉に臨んだ。(詳しくは→国立国会図書館「ポツダム宣言受諾に関する交渉記録」) これ以降、日米間には交渉が見当たらず、「アメリカ様のおっしゃる通りでございます」のみがベストアンサーという意識になってしまった。
Potsdam Declaration (Proclamation Defining Terms For Japanese Surrender)
ポツダム宣言(米、英、華三国宣言)
July 26, 1945 1945年7月26日

(1) We - the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China, and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our countrymen, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.
1.吾等(合衆国大統領、中華民国政府主席、及び英国総理大臣)は、吾等の数億の国民を代表し協議の上、日本国に対し戦争を終結する機会を与えることで一致した。
(2) The prodigious land, sea and air forces of the United States, the British Empire and of China, many times reinforced by their armies and air fleets from the west, are poised to strike the final blows upon Japan. This military power is sustained and inspired by the determination of all the Allied Nations to prosecute the war against Japan until she ceases to resist.
2.3ヶ国の軍隊は増強を受け、日本に最後の打撃を加える用意を既に整えた。この軍事力は、日本国の抵抗が止まるまで、同国に対する戦争を遂行する一切の連合国の決意により支持され且つ鼓舞される。
(3) The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.
3.世界の自由な人民に支持されたこの軍事力行使は、ナチス・ドイツに対して適用された場合にドイツとドイツ軍に完全に破壊をもたらしたことが示すように、日本と日本軍が完全に壊滅することを意味する。
(4) The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.
4.日本が、無分別な打算により自国を滅亡の淵に追い詰めた軍国主義者の指導を引き続き受けるか、それとも理性の道を歩むかを選ぶべき時が到来したのだ。
(5) Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.
5.吾等の条件は以下の条文で示すとおりであり、これについては譲歩せず、吾等がここから外れることも又ない。執行の遅れは認めない。
(6) There must be eliminated for all time the authority and influence of those who have deceived and misled the people of Japan into embarking on world conquest, for we insist that a new order of peace, security and justice will be impossible until irresponsible militarism is driven from the world.
6.日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を除去する。無責任な軍国主義が世界から駆逐されるまでは、平和と安全と正義の新秩序も現れ得ないから。
(7) Until such a new order is established and until there is convincing proof that Japan's warmaking power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.
7.第6条の新秩序が確立され戦争能力が失われたことが確認されるまでの日本国領域内諸地点の占領
(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
8.カイロ宣言の条項は履行されるべき。又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等の決定する諸小島に限られなければならない。
(9) The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.
9.日本軍は武装解除された後、各自の家庭に帰り平和・生産的に生活出来る。
(10) We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation, but stern justice shall be meted out to all war criminals, including those who have visited cruelties upon our prisoners. The Japanese Government shall remove all obstacles to the revival and strengthening of democratic tendencies among the Japanese people. Freedom of speech, of religion, and of thought, as well as respect for the fundamental human rights shall be established.
10.日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではない。捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処罰されること。民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除されるべきこと。言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されること。
(11) Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those which would enable her to re-arm for war. To this end, access to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese participation in world trade relations shall be permitted.
11.日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わらないものが保有出来る。また将来的には国際貿易に復帰が許可される。
(12) The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.
12.日本国国民が自由に表明した意志による平和的傾向の責任ある政府の樹立を求める。この項目並びにすでに記載した条件が達成された場合に占領軍は撤退する。
(13) We call upon the government of Japan to proclaim now the unconditional surrender of all Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The altenative for Japan is prompt and utter destruction.
13.我々は日本政府が全日本軍の無条件降伏を宣言し、かつその行動について日本国政府が示す誠意について、同政府による十分な保障が提供されることを要求する。これ以外の選択肢は迅速且つ完全なる壊滅のみ。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19450726.D1E.htmlより転載


閑話休題(それはさておき)


69年前にアメリカ合衆国が犯した取りかえしがつかない犯罪は、日本の民衆に対して原子力爆弾を用いたこと。国際法でその使用は禁じられていたと見ることができる。1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議で採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(Convention respecting the Laws and Customs of War on Land)」は1907年の第2回万国平和会議で改定され、今日に至る。第23条5項では「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁じている。また第27条では「攻囲及び砲撃を行うにあたっては、宗教、技芸、学術、慈善の用途に使用されている建物、歴史上の記念建造物、病院、傷病者の収容所は、同時に軍事目的に使用されていない限り、これに対しなるべく損害を与えない為の必要な一切の手段を取らなければならないものとする。攻囲された側は識別し易い徽章をもって建物または収容所を表示する義務を負う。前述の徽章は予めこれを攻囲者に通告すること」になっている。

合衆国には原子力爆弾を使用するのは止めようという議論があった。ドイツには用いずに日本に使用するのは人種差別ではないかという議論もあったが、日本にのみ使用した。これが国際法違反であるということは明白。以降、いかなる国へも原子力爆弾は用いられていない、のだから分かる。

合衆国は、禁止されたものであると解釈される原子力爆弾を用いた。ならば、この時の責任者は戦争犯罪者として裁かれるべきであった。現在にたるまで、合衆国では日本の民衆(非戦闘員)への原子力爆弾使用が戦争犯罪であるという意識は醸成されていない。日本国内においても広島と長崎の未だかつてない被害が戦争犯罪(the war crime)によるものであるという意識は希薄だ。

戦争犯罪は今も続いている。ベイト・ハヌーンの学校に対して行われた攻撃がそれで、虐殺されているのは罪もない子らだ。一刻も早く、日本が介入して止めたい。これは戦争ではない、民族浄化(ethnic cleansing)である。
【ガザ発】イスラエル軍、国連避難所を攻撃 死傷者200人超
(田中龍作ジャーナル 2014年7月25日 00:46)
2014年7月24日@ベイトハヌーン 
避難していたはずの肉親が攻撃で殺され、泣き叫ぶ母と娘。=24日、ベイトハヌーン 写真:筆者=

 イスラエル軍の爆撃を逃れて住民が避難していた国連の小学校を、24日午後4時(日本時間同日午後10時頃)、同軍のヘリが攻撃、16人が死亡、約200人が負傷した。
 現場はガザ北部の町、ベイトハヌーンにあるUNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)の小学校。ベイトハヌーンはイスラエルとの国境に比較的近いことから、イスラエル軍の激しい爆撃にさらされており、千人を超える住民がUNRWAの小学校に避難していた。
 筆者は現場に急いだ。取材車は救急車の後にぴったりと付いた。単独で行くと、空から狙われるからだ。
 攻撃された小学校の校庭には大量の血が流れていた。イスラエルの無人攻撃機の音が耳に迫った。避難民は小学校からすでに脱出していた。
 イスラエル軍のヘリから発射されたのは、対人用ミサイルで、2004年にハマスの指導者ヤシン師を暗殺した時の物と同型と見られている。
 確実に攻撃対象をヒットすると共に、子爆弾も炸裂し周囲の人間も大勢殺傷する。
 イスラエルは避難民のなかにハマスのメンバーが紛れ込んでいるとの情報を得て、オペレーションを実行したものと見られている。http://tanakaryusaku.jp/2014/07/0009746より転載

7月22日にガザからのロケット弾がイスラエルの主要な空港であるベングリオン国際空港付近に着弾。当然、各国はイスラエルへのフライトを停止した。イスラエルは社会経済的な打撃をうけた。イスラエル兵の死者は20人を越えている。ネタニヤフ首相は、今以上の陸軍部隊を送り込んでガザの全域を占領することで、ロケット弾を止めようとしているのだろうか。その場合は双方の流血を覚悟する必要がある。それとも、ハマスの条件であるガザに対する経済的封鎖の解除を受け入れて停戦するのだろうか。しかし、後者はハマスに政治的勝利をもたらす。同時に、ネタニヤフ首相はイスラエル国内のタカ派による批判の嵐に巻き込まれるだろう。
両陛下、イスラエル首相夫妻と懇談 「大虐殺痛ましい」
(朝日 2014年5月13日18時36分)
 天皇、皇后両陛下は13日、皇居・宮殿で、来日中のイスラエルのネタニヤフ首相夫妻と懇談した。
 宮内庁によると、懇談でネタニヤフ首相は「イスラエルと日本には共通点がある」と述べ、いずれもおびただしい数の市民が犠牲となったホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と、広島、長崎への原爆投下を挙げた。天皇陛下は「ホロコーストは大変に痛ましいことだったと思います」と語ったという。http://www.asahi.com/articles/ASG5F4W42G5FUTIL01J.htmlより転載

今、イスラエルのネタニヤフ首相は、デイレンマに直面していて、コミュニケーション手段としての最優先課題をハマスとの関係に見いだせないでいる。今上陛下との対話を想い起こし、人命の尊重を最優先とした策をとってもらいたい。

さて、いつものように長くなってしまった。これを今日の最後にしましょう。
ヘイトスピーチ処罰を=慰安婦問題、国家責任認めよ−国連対日勧告
【2014/07/24-21:01 ジュネーブ時事】
 拷問禁止、表現の自由などに関する国連人権規約委員会は24日、日本政府に対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)など、人種や国籍差別を助長する街宣活動を禁じ、犯罪者を処罰するよう勧告した。また、旧日本軍の従軍慰安婦問題についても、「国家責任」を認めるよう明記した。
 規約委は勧告となる「最終見解」の中で、ヘイトスピーチや「Japanese only」の表示など、外国人への差別をあおる行為が広がっているとして問題視。差別される側が「刑法、民法で十分に保護されていない」と懸念を示した。
 その上で、「差別や暴力を誘う人種的優位や憎悪を助長するプロパガンダをすべて禁止すべきだ」と提言。日本政府に対し、犯罪者を処罰するルールを整備するよう促した。
 一方、従軍慰安婦問題に関しては、元慰安婦への人権侵害が続いており、教科書への十分な記述を含めた教育の重要性を指摘。「公式謝罪、国家責任を公式に認めること」を求めた。
 このほか、死刑確定後に再審が認められ釈放された袴田巌さんの事例を踏まえ、死刑制度の廃止検討を盛り込んだ。また特定秘密保護法の厳格な運用も勧告した。
 規約委の対日審査は15、16両日、ジュネーブの国連欧州本部で約6年ぶりに行われた。勧告の解釈は各批准国に委ねられ、法的拘束力はない。http://www.jiji.com/jc/zc?k=201407/2014072400979&g=polより転載

このような勧告を出される前に、日本側はどのような交渉を重ねたのだろうか。旧日本軍の従軍慰安婦問題とは何を示し、なぜ日本が国家責任を認め無ければならないのかを立証する責任を国連人権規約委員会に求めたのだろうか。「差別や暴力を誘う人種的優位や憎悪を助長するプロパガンダ」は一体全体、日本国内で誰が、どの勢力が仕立てているのかを見極めてもらいたいものだ。

今、日本側にはポツダム宣言受託時に発揮できたネゴシエーション(交渉)が求められている。従来のバーゲニング(取り引き)や減点されないためだけの努力(官僚的・お役人的処世術)から卒業して、日本の民衆の尊厳を守るべく果敢に世界に向かってコミュニケートしていきたい。新生日本を作り直す今という時代には、プライオリティ(優先順位)による選択を共通のコミュニケーション手段にできる人材が求められている。


大きな笑顔の佳き日曜日を   感謝

第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会で、大日本帝国は人種差別の撤廃を明記するべきという人種的差別撤廃提案(Racial Equality Proposal)を主張した。しかし、大英帝国自治領であったオーストラリアやアメリカ合衆国上院が反対し、合衆国大統領ウッドロウ・ウィルソンの裁定で否決された。しかしながら、これは国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した世界最初のプレゼンであった。これぞ、大和魂(やまとだましい)。四海同胞、世界の人々は一緒に手をつないで仲良くするものだという方向性を示唆した。打算や私欲を乗り越えて、こころの底から世界の平和と人間の幸福を願う姿勢(philosophy)でもあった。

「大和魂(やまとだましい)」という言葉を、Yamato Damashii として海外で紹介したのは新渡戸稲造であった。彼によって英文で記された『武士道』は、1900(明治33)年に合衆国の首都(当時)フィラデルフィアで出版された。日清戦争で初めて海外にその名を馳せた新生日本が、世界に知られていないばかりか、誤解されていることに氣づいた彼の世界へ向けた啓蒙の書であり、世界的なベストセラーとなった。

本書では、武士道に象徴される日本人の生き方と考え方が紹介されている。彼によれば、武士道は儒教と仏教の長所を継承していながら義を中心にして勇・仁・礼・誠と名誉を重んじるのだから、騎士道と共通している。キリスト教の長所やバークレーやフィヒテの理想主義にも通じている。しかしながら、武士道はキリスト教の「愛」が欠けていると思うから、武士道とキリスト教が包摂し合えば、更にすばらしいものになるのではないか。日本はキリスト教に肩を並べるだけの道徳の伝統があるという内容。
In manifold ways has Bushido filtered down from the social class where it originated, and acted as leaven among the masses, furnishing a moral standard for the whole people. 武士道は、その生みの親であった社会階級から多様な道筋を経て流れ出し、さまざまな形で、大衆の間に酵母として作用し、日本人全体に対する道徳的規準を供給した。The Precepts of Knighthood, begun at first as the glory of the elite, became in time an aspiration and inspiration to the nation at large; and though the populace could not attain the moral height of those loftier souls, 騎士道の最初はエリート(選良)の光栄として始まったが、時を経るに従い国民全体の志及び感化となった。しかし平民は武士の道徳的高さまでは達し得なかったけれども、yet Yamato Damashii, the Soul of Japan, ultimately came to express the Volksgeist of the Island Realm.大和魂は日本の魂として、遂には島帝国の民族精神(フォルクスガイスト)を表象するに至った。If religion is no more than "Morality touched by emotion," as Matthew Arnold defines it, few ethical systems are better entitled to the rank of religion than Bushido. もし宗教というものが、マシュー・アーノルドの定義した如く、「情緒によって味付けされた道徳」に過ぎないのなら、武士道ほど宗教と呼ぶに相応しい倫理体系は他にはないだろう。Motoori has put the mute utterance of the nation into words when he sings:— 本居(宣長)は、国民の声にならない声をこのような歌にした。

"Isles of blest Japan! Should your Yamato spirit Strangers seek to scan,
Say—scenting morn's sun-lit air, Blows the cherry wild and fair!"

敷島の 大和心を人 問はば
朝日に 匂ふ 山桜花

(参照:http://www.gutenberg.org/files/12096/12096-h/12096-h.htm


大切なポイントは二つ。ひとつは、新渡戸博士は「大和魂(やまとだましい)」を日本の民衆の魂であり、民族精神(フォルクスガイスト)であるとしたこと。そしてもうひとつは、大和魂は武士道とは違うと見極めていたこと。大和魂>武士道。

(追記)
日清日露戦争頃からにわかに唱えられた「大和魂」は現状打破的突撃精神の意味であった。これが本来の大和魂とは違うという指摘は、先の大戦中も多くの学者によりなされた。奥村伊九良著『大和魂―歴史篇(日本の美と教養7)』(一條書房・1944年)では、諸例として以下の点が指摘されている。
(1)源氏物語・乙女の巻
「なほ才をもととしてこそ、やまとだまし ひの世にもちゐらるる方も強うはべらめ」
 光源氏は息子の夕霧をいきなり高位高官につけず、学問もさせ、世間的常識を身に着けさせようとした。才(漢学の教養)に裏付けられた世間的常識こそ、大和魂であった。
(2)大鏡 左大臣時平の逸話 
 学問一途で融通の利かない右大臣菅原道真より、総合的見識があり、臨機応変で、法典(格式)編纂能力のある時平を賞賛したくだり。
(3)今昔物語 巻二十九 明法(みょうぼう)博士善澄被殺強盗語第二十
 学者の善澄は強盗に立ち向かい殺された。
「善澄才は微妙(いみじ)かりけれども、露(つゆ)、和魂(やまとだましひ)無かりける者にて、心幼き事を云て死ぬる也とぞ、聞きと聞く人に云ひ被謗(そしられ)けるとなむ語り伝へたるとや。」
 善澄が猪突猛進して殺されたことを謗ったもので、大和魂は沈着冷静な常識的判断を指している。猪突猛進は軽蔑されている。
(4)愚管抄
(5)詠百寮和歌(群書類従巻七十二)
大和魂・大和心は、平安時代の宮廷文化で成立したもので、漢魂・漢意(漢心)に対応し、「才」(漢的教養)を基にした世渡りの常識という意味が強い。菅原道真と対立した左大臣時平に大和魂があり、暴漢と闘って殺された学者には臨機応変に難を避ける大和魂がなかったと評されている。(以上)


閑話休題(それはさておき)


原文が英文である本書の和訳は、1908(明治41)年に桜井鴎村によるものが出版された。これは漢文調で、読者の漢籍の素養を前提としていた。現代日本語訳は、1938(昭和13)に矢内原忠雄により岩波文庫として世に出された。すでに日中戦争に突入していた大日本帝国は、後戻りできない時期に入っていた。

第一陣・神風特別攻撃隊には、本居宣長の自讃(上記)からとられた敷島・大和・朝日・山桜という隊名が附されていた。日本文化における桜の美的な価値と、なぜ、このような悲劇が起こったのかを、特攻隊員の手記を分析して究明したものに、大貫恵美子著『ねじ曲げられた桜―美意識と軍国主義』(岩波書店・2003年・607頁)がある。著者は、明治の大日本帝国憲法をはじめ、軍国主義の発展を分析。そして、特攻隊員の遺した記録を読み解き、桜の美的価値と象徴によるコミュニケーションに伴う「解釈のずれ」を中心に、国家主義・理想主義がいかに民衆の持つ郷土・家族への愛情という「象徴的誤認」をともなって浸透していったのかを検証した。平和への願いが伝わる、実り多き一書である。

童謡「ふるさと」を聞いていると、世界の人々がみな一緒に手を繋いで仲良くするという『志を果たして』、天に帰ろうと聴こえる。


大きな笑顔の佳き水曜日を    感謝

外国人技能実習制度は、従前、日本で培われた技術等を開発途上国へ移転し、人材育成を支援することを目的としていた。しかしながら、最近は建設現場などでの人手不足の対応策として機能させている。2010年7月の制度改正以降は、技能習得期間のうち実務に従事する期間はすべて労働者として扱われることとなり、労働関係法令が適用されるようになった。にもかかわらず、「強制労働の温床」と呼ばれている。日本国内にもこの制度の廃止を求める声もあるが、農業や漁業の現場では外国人が必要とされている。これは人口減少によってもたらされた、社会的要請。2050年に日本の人口は、2000年比で3100万人以上減少するという。外国人技能実習制度の活用や定年退職年齢の引き上げというありきたりな政策では、本質的に人手不足を解消できそうにない。子をもつ家族が不利益を被らないようにする(社会全体で子どもを支える)社会政策及び日本社会の取り組み(企業・被傭者・政府の緊密な連携)を背景とした家族政策・少子化対策が必要とされている。
日本の外国人実習に懸念=「強制労働の温床」−米大使
(ワシントン時事 2014/07/09-07:02)
 人身売買問題を担当する米国のシデバカ無任所大使は8日、上院外交委員会の小委員会で開かれた公聴会で証言し、日本政府が運営する外国人技能実習制度が「強制労働」の温床になっていると改めて懸念を示した。
 シデバカ大使は「人身売買業者は(外国人を)強制労働に服させるのに同制度を利用し続けている」と指摘。日本政府が運用を十分に監督できていないところに問題があるとした上で、「われわれは監督機能を強化するため、日本政府と緊密に協力していくつもりだ」と語った。 
 外国人技能実習制度の拡充は、安倍晋三首相の成長戦略の柱の一つとなっている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014070900079より転載

人手不足で注目集まる外国人実習制度、拡充に賛否両論
(ロイター東京 2013年 12月 24日 16:29JST)
 建設現場などでの人手不足の対応策として、外国人技能実習制度が政府内で注目されつつある。3年間を上限と定めている期間の延長などが規制改革会議などで提言されているが、政府・与党内に慎重論も根強く本格的な検討に入るには曲折を経ることになりそうだ。
 外国人技能実習制度とは、日本の技術を途上国に移転し人材育成を支援するため1993年に開始された。財団法人国際研修協力機構(JITCO)が制度を運営。中小企業が集まり日本側の窓口となる協同組合を設立し、一定期間の研修後に企業に派遣することが多い。この制度による国内在留外国人は現在約15万人。
 この制度の趣旨は、日本企業が海外進出する際に現地で採用する労働力の確保を主眼とした制度だったが、ここに来て注目されているのは、産業界で人手不足の対策として同制度を活用した外国人労働力を確保したい意向が高まってきているからだ。
 政府の規制改革会議は今年10月、創業・IT分野の作業部会で、制度の受け入れ期間を5年程度まで延ばすことで大筋一致。これを受けて首相官邸が設置した農林水産業・地域の活力創造本部がまとめた答申にも5年への延長が盛り込まれ、法務大臣に私的懇談会である「第6次出入国管理政策懇談会」で議論し、2014年内に結論を得ることとなっている。
 しかし、政府内で制度延長に対する合意が形成されてはおらず、議論の先行きは不透明だ。政府内の主張を単純化すると、「官邸が前向き、厚生労働省が慎重、法務省は中立」(政府関係者)との構図だ。
 慎重派は、国内で職に就かず学校にも通わないニートが多数いるにもかかわらず、外国人労働力を求めるのは拙速であるうえ、制度が賃金不払いなど不正の温床になっているなどの理由を上げる。
 3月に広島県で中国人実習生がカキ養殖業の経営者らを殺害する事件が発生したことから、治安上の懸念を指摘する声も多い。日本労働組合総連合会は9月、不正・違法行為のあった受け入れ機関が制度を利用できないように制度厳格化を求めた。日本弁護士連合会は6月、人権上問題があるため制度廃止を求める意見書を出している。
 これに対し、積極派は産業界だ。日本経済団体連合会が3月、全国中小企業連合会が8月、それぞれ制度拡充の方向で見直しを行うべきとの意見書を出している。農林水産加工業が集まる農村や漁村などでも高齢化が進み、加工業の労働力確保が難しくなっているため、実習を受ける外国人が実質的な労働力としての重要性を増している。
 背景にあるのは深刻さが増す人手不足の問題だ。2012年度の国内総生産(GDP)は、公共投資の伸びが推計値の前年度比14.9%増から確報値は1.3%に大幅に下方修正された。人手不足で公共工事の進捗が大幅に遅れた結果だ。「体力が必要な建設現場は、ニートでは対応が難しい」(別の政府関係者)として、外国人労働力に期待が集まる背景となっている。
 制度の廃止を求めている日弁連も、外国人の人権にも配慮したうえで非熟練労働者の受け入れを前提とした在留資格の創設を国会などで検討するよう提言している。
 政府関係者の間でも、東南アジアの国々などとの就労ビザの拡充などを検討したいとの声も聞かれる。日系ブラジル人と地域社会との間の摩擦などを参考に、外国人が日本社会に溶け込みやすい体制づくりについて、検討の余地があるとの声も浮上している。
 JPモルガン証券・シニアエコノミストの足立正道氏は「日本社会最大の問題が人口減少。農業や漁業の現場では、すでに外国人が必要とされている。今すぐ必要な労働力については、研修制度の活用などが有効」とみる。
 安倍晋三政権は今月26日で発足から2年目に入り、ここから先の経済政策に注目集まっている。株式市場関係者の間では、1)法人税引き下げ、2)移民など外国人労働者の導入を求める声──などが多く、政府が外国人労働者について早期の本格的検討を始めれば注目されそうだ。(ロイターニュース 竹本能文 編集:田巻一彦)http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9BN05D20131224?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0より転載

(参考)
『少子化を克服したフランス〜フランスの人口動態と家族政策〜』(第三特別調査室 縄田康光・2009年)


閑話休題(それはさておき)


現在、日本の後期高齢者の貧困世帯数は際だって高く、75歳以上の25.4%が貧困下にある。他方、経済協力開発機構(OECD)の平均で75歳以上の貧困者は16.4%、フランスは10.6%。団塊世代が後期高齢者になる10年後には、この高貧困率を解消したい。しかしながら、今のところこの問題は私たち日本の民衆の争点とはなっておらず、国政における最優先事項の上位にもランキング入りしていない。限定的な集団的自衛権の行使容認は、現在日本の最優先課題ではない。先ずは、貧困下にある後期高齢者を貧困世帯に組み込まれることから解放したい。

高齢者マーケットに熱くなる日本企業
フローリアン・コールバッハ【ドイツ−日本研究所(在東京)経営・経済研究部長】
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2013年6月号)
訳:川端聡子

 高齢化、そして時として起きる人口減少は、経済・社会に影響を与え、個人および組織に重大な結果を引き起こす。日本はこうした人口変動の打撃をもっとも受けるが、同時に新たなマーケットの開拓と発展において最先端の国となっている。
 日本の人口が減少し始めたのは2005年のことである。2010年10月には65歳以上の高齢者が人口の25%、50歳以上が43%となり、このパーセンテージは世界でもっとも高い数値である。こうした人口の変動により、国内市場の縮小ばかりでなく、労働力不足やノウハウの喪失への危機感が生まれた。だがその一方で、急速な高齢化により「シルバー・マーケット」あるいは「高齢者市場」と呼ばれる市場の可能性が開かれたのである。
 予測によると、2025年には日本人の3分の1が65歳以上となる。年齢構造が従来のピラミッド型でなくなり、次第にさかさまのカイト型をとるようにさえなっていく。シニア人口は増大し続けるが出生率は低いことから、2050年には総人口は(2000年時点の1億2687万人から)9500万人まで低下するだろう。
 2005年からの人口減少にともない、労働人口も減少した。何らかの対策をとらなければ、労働人口は劇的に減少するだろう。社会的なコンセンサスを得ている解決策は、シニア雇用の拡大である。また女性の雇用拡大もありうるだろう。日本における女性就労率は他の先進国よりも少ないからだ(日本における25〜54歳の女性の就労率が71.6%なのに対し、アメリカでは75.2%、ドイツでは81.3%、フランスでは83.8%)。しかし、日本人の考え方が変化し、男女がより平等な社会が実現されるには時間がかかる可能性があるのに対して、高齢化は緊急の問題だ。政府の調査報告書によれば、2006年に6657万人だった労働人口は、2050年には4228万人に減少するという(注1)。
 2007年から「ベビーブーム世代」の定年退職が始まった。これにより「2007年問題」と呼ばれるかなりの大問題が生じたのである。「ベビーブーム世代」は狭義では1947〜1949年生まれの人々のことだが、その2年後(1950年・1951年生まれ)にまで範囲を拡大すると1070万人がこの世代に当たる。そのうち現役なのが820万人で、これは労働人口の12%強に相当する。彼らがみな一斉に退職したとすればどうなるのか……。
 多くの専門家たちは、彼らが一斉に定年を迎えることで深刻な機能不全が起こるのではないかと懸念している。それは、各企業の問題であると同時に国家レベルの問題でもある。まず第一に、ベビーブーム世代のサラリーマンたちはノウハウを蓄積しており、彼らの退職はその蓄積を失うことに繋がりかねない。第二に、熟練工不足が際立つことになる。それゆえ考えられるのが、65歳くらいまで彼らに辞めないでもらうという案である。企業はこうした事態に適応せざるをえない。彼らの身体的・心理的な条件に基づく能力・希望はまちまちであり、雇用形態が変らざるをえないだろう。
 従来の人事評価を疑問視する声が上がっている。というのも、日本的なスタイルの仕事のやり方は、勤務時間中の仕事能力と夜の「ノミュニケーション」能力から成っているからである。つまり、こうした飲み付き合いも含めた現場経験が重要視され、仕事上得られた技術的ノウハウの大部分は評価されてこなかった。終身雇用システムと年功序列の伝統が機能している(労働者の3分の2はこれに相当する)大企業においては、特にこのことはよく当てはまる。一朝一夕には能力主義の規格化は行なわれないのである。
 今のことろ、懸念されたほどの定年による一斉退職は起きていない。逆に、厚生労働省の調査(注2)では2008年の60〜65歳の働き手は9.3%増え、2009年にはさらに4%増えている。2009年には彼らの就労率は76.5%に至る。65〜69歳の半数近く(49.4%)は仕事を持ち、70歳以上の5人にひとり(19.9%)は働いている。原因は高年齢者雇用安定法の改正で、60歳から65歳へ定年を引き上げるのを2006年4月〜2013年4月の間、段階的に行なうものである(注3)。この法改正直前の2005年から2009年の間、60〜64歳の正規雇用者は80.8%増、64歳以上では104.9%増となった。現内閣は、いずれこの年齢を70歳まで引き上げようと考えている。
 現在すでに、事実上の退職年齢は法律で定められた年齢よりも高くなっている(男性で約70歳)。実際、日本で定年後も働く人の数は最多となっており(注4)、労働市場における高齢者の割合が極めて高いことは特徴的である。その結果、企業は年功序列に基づく給与システムの改革に躍起になっている。企業側の言によれば、年功序列主義が60歳以降の雇用に歯止めをかけていたのだ。
 一方で、企業リーダーたちは新たなマーケットの取り込み(または創出)を試みている。すでにいくつかの業界においては顧客の大部分が40歳以上であり、彼らが若い世代に代わる「ターゲット層」となった。見向きもされずにいた年齢層が日本の現実に象徴的な希望の光をもたらしたのだ。2008年に大人向け商品の売上高と子供向け商品の売上高が並ぶという前代未聞の事態が起きた。その後の2年の間に、子供向け商品の年間売上高が10%低下したのに対し、大人向け商品の年間売上高は40%増えた。
 シルバー・マーケットは、基本的には危機として捉えられていた人口変動が雇用拡大のチャンスになりうることを証明している。見方を変えれば、あらゆるピンチのなかにチャンスが隠れているのだ。こうした考えは、「危機」の「機」の字は「機会」の「機」の字でもあることにもうかがえる。
 目下、ビジネス業界は第一級の市場となるはずのシルバー世代に最大の期待を寄せている。少なくとも人々の中でもっとも余裕のある層として期待している。現在でも行動的でエネルギッシュな彼らベビーブーム世代は経済力のあるサブ・グループと目され、新しいものに敏感で購買欲旺盛だ。彼らが(最終的に)引退し、余暇ができたとき、大きな市場となることを切望されている。
 直近の推計(2009年付け)によれば、日本の財政の大部分を支え、特に公債を負担しているのはこうした世代である。公債所有率は21%が50代、31%が60代、28%が70代以上となっている。一方で、一般的な日本の高齢者は持ち家があり借金はない。経済的に安定している彼らは「老人貴族」と呼ばれている。
 企業はすでに購買力のある顧客である高齢者向けに、現行商品の改良や新商品の企画、新技術の開発を行ない、成功している。携帯電話「らくらくホン」はその一例である。見やすいアイコンと文字、より大きなキー、よりシンプルなアプリケーション、直感的な操作方法、雑音を取り除く「はっきりボイス」などがその特徴である。「らくらくホン」はまさに最先端技術の集大成であり、また世代を超えた訴求効果によって他の世代をも惹きつけている。こうした訴求方法のもうひとつの成功例が、一大現象となった任天堂のゲーム機「Wii」である。「Wii」によって複数の世代がゲーム機を囲んで集まり、おじいちゃん・おばあちゃんを含む家族全員もまた夢中になっている。
 他の企業もこうした「らくらくホン」のコンセプトを取り入れた。たとえば、2007年にパナソニックが発売した「らくらくウォーカー」は、膝に痛みを抱えた人用の歩行補助器で、足の筋力を補助してくれる。また、日本の最大手ランジェリー・メーカーであるワコールは、シルバー世代や介護を受けている人向けのブランド「らくラクパートナー」を立ち上げた。たとえば、袖ぐりが大きく自分で着脱しやすい。ボタンもエッグ型ボタンやスナップボタン、マジックテープ式になっている。また、けが防止のため作られ2007年に発売された「あんしんウォーカー」のようなものもある。このパッド付きのガードルは、転倒の際に大腿骨頸部を保護してくれるだけでなく、座る際や歩行時の筋肉をサポートしてくれるのだ……。
 もうひとつ成長しているのが、高齢者向け住宅市場である。高齢者は従来自分の子や孫と暮らしており、3世代同居家族がよく見られた。しかし、65歳以上の高齢者でこうした生活を送る者は、1980年では約70%だったが、以後は半分以下(45%)となっている(注5)。彼らは、子供たちの世代の生活ぶりの変化(とくに都市化や仕事の移動性が増えたこと)、また平均寿命が延びたことにより、定年退職後も自分の家に留まる決断をするようになったのである。その際に必要となる自宅の改築が、住宅リフォーム市場を活発にしているのだ。自宅に留まらない者は、介護型老人ホームや高齢者向けマンションに移り住む。欧米メディアでは、介護ロボットがよく話題に上る。日本はこの分野のパイオニアで、研究が続けられているが、今日、ロボット業界はこうした要求に応えられていない。
 しかしながら経済の落ち込みで、日本人は個人消費を押さえるようになった。わずかな蓄えのあるベビーブーム世代はむしろ貯蓄に走るか、あるいは子供や孫の援助にお金を遣う傾向にある。日本人全体としては、すでに生活が圧迫されており、貯蓄率を下げているのだ。1990年には手取り所得の21%だったのが、今ではおおよそ6%ほどである。 一方、日本が特に関心を寄せるのは裕福で元気な高齢者であり、貧しく健康問題を抱える高齢者への関心は少ない。それでも将来、後者が多数を占めることになるかもしれない。そして「シルバー・マーケット」は予測とはまったく別な様相を呈することになるかもしれない。経済格差が、いわゆる後期高齢者で貧しい人々の生活をも脅かす時限爆弾となっているのだ。日本の75歳以上の25.4%が貧困下にある。これに対して、経済協力開発機構(OECD)の平均で75歳以上の貧困者は16.4%。フランスでは10.6%である(注6)。以上の事実は、日本政府だけでなく企業に対する警告ともなっているだろう。企業は、高齢者の日常生活をサポートするような商品・サービスを提供することができるのではないだろうか。
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(1)「人口推計」厚生労働省、2009年 www.stat.go.jp
(2)「労働力調査 2009-2011」厚生労働省 www.stat.go.jp
(3)2006年4月、高年齢者雇用法案の改正により定年退職年齢は62歳となった。その後2007〜2009年の間に63歳、2010〜2012年には64歳、2013年には65歳から定年となった。
(4)事業主が定年退職者を再雇用する可能性がある。その際、条件は悪化し、保証・特典は失われる。
(5) Cf. Maren Godzik, ≪ New housing options for the elderly in Japan : The example of Tokyo’s edogawa ward ≫, Imploding Populations in Japan and Germany, Brill, Leyde, 2011.
(6)この率は、世帯の可処分所得が中央値の半分に満たないことを示す。Cf. ≪Panorama des pensions 2011. Les systemes de retraite dans les pays de l’OCDE et du G20≫, OCDE, Paris, 2012.
http://www.diplo.jp/articles13/1306lepatronatjaponaise.htmlより転載


9日午後5時40分ごろ、長野県南木曽町読書の梨子沢で土石流が発生し、母親と男の子3人の家族4人が巻き込まれ、このうち中学1年生の12歳の男の子が死亡した。梨子沢周辺の4つの沢では、土砂があふれるなどし、複数の住宅で全壊や半壊などの被害が出た。映像では、土石流に交じって大量の木が流されていた。これは、挿し木の流木。大量の雨によって、直根のない挿し木スギが倒木したからだ。大きな石は大きな流木によってもたらされたのだから、流木がなければ土石流災害は最小限にくい止められていただろう。植林されたスギが30年生以上になっている場所で災害は起きやすいらしい。今、日本の山には植林から45年以上を経た伐期を迎えている木が、商業的理由(木材価格低迷)により、伐採されずに残っている。若いスギの植林地では今回のような土石流災害を引き起こすことはないそうだ。

土石流は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律2条により、「山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象」と定義されている。適切な時期に伐採しなかったことが原因ならば、自然現象とはいえない。今後の土石流防止の対策は、今回のような急斜面と沢沿いのスギの伐採になりそうだ。

冷静に自らの姿を見つめたい。それが個々の命や社会を大切にすることに貢献する。


大きな笑顔の佳き日曜日を   感謝
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NY州の州都オールバニ(Albany)のレストランにて

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