流れのままに

流れのままに おのが道をゆけ ひたすらに ひたむきに

二〇一七年葉月

12年前の『第4回六者会合に関する共同声明』の決着はついてはいないが、破棄されたわけでもない。生きているのだ。今月、合衆国大統領首席戦略官を辞任したスティーブ・バノン氏(63歳)がリベラル系雑誌「アメリカン・プロスペクト」に掲載されたインタビューで、「北朝鮮問題の軍事解決はあり得ない」と述べた背景はこの共同声明の存在があるだろう。中国からの六者会合再開への呼びかけに対し拒否し続けたオバマ政権とは違い、トランプ政権は北朝鮮と対話による平和的なアプローチで国交を正常化する可能性はありそうだ。北朝鮮によって29日午前5時57分ごろに発射され北海道上空を通過したミサイルの問題について彼は、"all options" are on the table.(全ての選択肢がテーブルの上にある)と発言。この発言は北朝鮮の国際的孤立を「警告した」と伝えられたが、"all options"の中には軍事オプションの他に国交正常化オプションが含まれていることを忘れてはいけない。

1971年7月16日のニクソン合衆国大統領の訪中が日本に通知されたのはわずか数十分前。その決定は日本を頭越しに飛び越え、米中だけで決定されていた。日本政府(佐藤内閣)は、数ヶ月前の佐藤栄作&リチャード・ニクソン会談で両国の緊密な連携を約束したことで、合衆国と強固な同盟関係にあると思い込んでしまっていた。しかしニクソン&キッシンジャー外交は、事前に日本の了解を得ることは困難と考え、極秘裏に事を進め、ニクソン訪中のマスコミ発表の数十分前に電話で日本の外務省に通知したのみ。日本政府は外交を「信頼関係」とか「友人」といった感情的な甘いレベルで捉えていたが、合衆国政府は外交をマキャヴェリズム(Machiavellianism)で冷徹に判断していた。マキャヴェリズムは、どんな手段や非道徳 的な行為も、国家の利益を増進させるのであれば肯定されるという行動規範。
第4回六者会合に関する共同声明(仮訳)
(2005年9月19日 於:北京)
 第4回六者会合は、北京において、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、日本国、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国の間で、2005年7月26日から8月7日まで及び9月13日から19日まで開催された。
 (中略)
 朝鮮半島及び北東アジア地域全体の平和と安定のため、六者は、相互尊重及び平等の精神の下、過去三回の会合における共通の理解に基づいて、朝鮮半島の非核化に関する真剣かつ実務的な協議を行い、この文脈において、以下のとおり意見の一致をみた。

1.六者は、六者会合の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した。
 アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した。

 大韓民国は、その領域内において核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの約束を再確認した。
 1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。
 朝鮮民主主義人民共和国は、原子力の平和的利用の権利を有する旨発言した。他の参加者は、この発言を尊重する旨述べるとともに、適当な時期に、朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した。

2.六者は、その関係において、国連憲章の目的及び原則並びに国際関係について認められた規範を遵守することを約束した。
 朝鮮民主主義人民共和国及びアメリカ合衆国は、相互の主権を尊重すること、平和的に共存すること、及び二国間関係に関するそれぞれの政策に従って国交を正常化するための措置をとることを約束した。 朝鮮民主主義人民共和国及び日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることを約束した。(以下省略)


閑話休題(それはさておき)


28日夜、安倍首相と菅官房長官は、公邸に宿泊していた。29日、北海道庁には午前6時過ぎから危機対策課の職員らが次々と登庁。当直の2人に加え、十数人体勢で情報収集にあたり、「5時58分 ミサイル3発発射」「6時12分 襟裳岬東方の東約1180劼梁席人両紊僕邁次’鵬措置の実施なし」などとホワイトボードに情報が書き込まれていった。発射予定の情報を得ていた上での行動に見える。官邸と道庁そして報道機関は、準備万端整えて待っていたという風だ。ちなみに、全国瞬時警報システム(ミサイルによるJアラート)と内閣官房から緊急情報が流れるEm-Net(エムネット)が北海道で運用されたのは、初めてのことであった。安倍首相は当日午前6時20分頃、ミサイル発射の23分後に首相官邸に入り、「我が国に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国の上空を通過した模様であり、直ちに情報の収集分析を行う。そして国民の生命をしっかりと守っていくために万全を期す」と語った。しかし避難指示のメールを送るシステムが機能しても、私たち民衆の避難場所と避難誘導などを含めた国防体制が不備であるという現実に対する反省の弁は聞こえてこなかった。分かったことは、北朝のミサイル発射くらいでは彼の支持率が上がりはしないということ。
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(※9月3日追記) 北朝鮮のミサイル発射計画は、海域と空粋の国際機関、国際海事機構(the International Maritime Organization:IMO)と国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization:CAO)と各国政府に通知済みだったということのようだ。日本の外務省も首相官邸も知っていたということになる。しかし、彼らはミサイル発射計画の通知を敢えて日本国民に知らなかった。腐っています。(参考:Junko Alemayehu-Izumi女史のFB
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迷惑な出来事も起こっていた。対処に時間的余裕がない大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃等についての情報を、「国から住民まで直接瞬時に」伝達することができるというJアラートは交通事故を誘引していた。
「ミサイル警報音に気を取られた」 トラックとトレーラー衝突/八戸
(デイリー東北新聞社 8/30(水) 0:12配信)
 29日午前6時5分ごろ、青森県八戸市長苗代前田の国道454号で、沿道の敷地から道路に左折中の大型トレーラーに、直進してきた大型トラックがぶつかった。トラックの男性運転手が勤務する運送会社によると、「ミサイル発射を知らせる携帯電話の音に気を取られた」と話しているという。
 八戸署や八戸消防本部によると、トレーラー側の50代男性1人が軽傷を負った。
 現場は片側2車線で、2台が道路をふさいだため、前田交差点から八戸駅方向に向かう車線が約1時間にわたって通行止めとなり、周辺が混雑した。

Jアラートに関しては、2012年に「現状では、ミサイルが飛んでくると分かっていても、どこに避難していいのか知らされていない。日本政府には、わたしたち民衆の命を守るシステムを構築する役目がある。政府メンバーとその家族の避難先だけ準備・確保して終わらせないでいただきたい。」と当ブログに記した。あれから5年、現状維持が続いている。平和ボケした私たち民衆、国会議員諸氏、マスコミ、そしてアカデミシャンの怠惰が現状を容認している。安易安直な現状維持は突破したい。

参考: 流れのままに 「ミサイルと暖色」(2012年04月14日)
MISSILE-TRAJECTORY-LJA

9月がスタートします。
大きな笑顔の佳き水曜日を。

(追記)
安倍首相公邸泊、ミサイル把握か=野党が指摘−衆院委
(時事 2017/08/30-18:16)
 「安倍晋三首相が公邸に宿泊したのは、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した前日だけだ」。民進党の後藤祐一衆院議員は30日の衆院安全保障委員会で、政府の初動態勢に関しこう指摘した。西村康稔官房副長官は「常日頃から緊張感を持って情報分析をしている結果だ」とかわしたが、後藤氏は北朝鮮に見抜かれるとして「普段から公邸に泊まった方がいい」と助言した。
 今月、首相が公邸に泊まったのは25、28両日のみ。いずれも翌早朝に北朝鮮がミサイルを発射しており、事前に兆候を察知していたとみられる。25日は夜の会合などを入れず、28日夜も公邸内で自民党役員らと会食したのみ。出席者の1人は「首相はあまり酒を飲まなかった」と話していた。

合衆国西部アリゾナ州マリコパ郡のジョー・アルパイオ元保安官(85歳:シェリフ・ジョー;共和党)は自称「America's toughest sheriff'(全米一タフな保安官)」で、ラティーノ系不法移民を強硬な手法で取り締まるほか、不法移民の疑いのみを根拠にスペイン語スピーカーを多数拘束し、全国的に知られた。マリコパ郡には人口400万人以上の州都フィーニックスがあり、そのうち約30%がラティーノという状況でのお話し。彼は「州法違反の疑いのない移民を拘束してはならない」という2011年12月の裁判所命令に意図的に違反したとして、先月末に法廷侮辱罪で有罪判決を受けていた。刑の量定の言い渡しは10月の予定で、禁錮6カ月の実刑判決を受ける可能性があった。なお、不法移民を取り締まる権限は連邦捜査員に限られている。25日、トランプ大統領は彼に恩赦を与え、野党・民主党などから「人種主義を助長する決定だ」などと批判が相次いだ。ホワイトハウスは声明で、「アルパイオ元保安官は現在85歳であり、50年余りにわたって米国に素晴らしい貢献をしてきた。大統領恩赦に値する人物だ」と説明。トランプ大統領は同元保安官は「犯罪と不法移民のまん延から国民を守る仕事に生涯を賭けた」と称賛した。

合衆国では、KKKとナチ及びネット上での活動が中心のオルタナ・ライト(alt-right)ら白人至上主義及び反ユダヤ主義などを掲げるグループとこれに抗議するグループが衝突したシャーロッツビル事件をめぐり、トランプ大統領の対応が問題視されているさなかだけに、シェリフ・ジョーに対する恩赦は新たな波紋を広げている。

合衆国では、言論が暴力・暴動を惹起し平穏を害することがあるために、ヘイトスピーチは規制の対象となっている。しかし、シャーロッツビル事件を見ても分かる通り、警察は集会からの退去に抗議する参加者に催涙弾を使用し一部は逮捕したというが、現場での衝突を積極的に制止すべく割り込むという体制ではなかった。一方、日本で仮にシャーロッツビルのような状況になった時は、予期できる衝突を回避すべく警察が介入し、身体的暴力沙汰とはならないように最善を尽くすだろう。思想信条の対立する民衆同士が、リー将軍の銅像撤去のPros and Cons(プロ&コンズ:是非)をディベートによって明らかにして、民衆に聴く耳を持たせ、advocates(支持者)を獲得してゆく知的討議が十八番の合衆国は消え去ってしまったかのようだ。民衆主義のお手本であった国が、暴力的で野蛮な国に成り下がっていくのもを見るのは、忍びない。バージニア州のテリー・マコーリフ知事(民主党)がこの事件の翌日、白人至上主義及び反ユダヤ主義の人々を悪だと断じ、「今日シャーロッツビルに入ってきた白人至上主義者やナチスに伝えたい。我々のメッセージは単純で簡単だ。『帰れ』。この偉大な州はお前たちを歓迎しない。恥を知れ。お前たちは愛国者のふりをするが、お前たちは愛国者とは程遠い」と断罪し、合衆国のマスコミは彼の極めて単純な解決モデルに異論を投げかける力を持たなかった。州知事はこの発言を以て、警備不全の過失の免罪符を手にしていた。しかしながら、彼に対して「恥を知れ」とその警備不全の責任を問うマスコミの声は皆無であった。そして、同様の衝突が二度と起きないような方策が提示されることもなかった。トランプ大統領を悪者に仕立て上げても、何も解決しないというリアリズムの欠落を見ることができる。Socio-economical(社会経済学的)な視点から、今日のアメリカ合衆国を見つめると、「人種主義(Racism)はいけません」という啓蒙教育は問題解決の要ではないだろう。特定の経済的階層(財産や所得などで峻別できるグループ)に位置づけられた民衆同士の衝突である可能性が高いと思う。色々と考えてみたいところだ。今日の合衆国の劣化を悲しく思うのは私だけではないだろう。

今朝は「ヘイトスピーチ」というものについて勉強したい。
『ヘイトスピーチと表現の自由』 憲法21条
(NHK)
 ヘイトスピーチとは、特定の民族などに対する差別的な言動のことをさします。数年前から繰り返されるようになり、去年(H28)5月には、ヘイトスピーチの解消を目指す新たな法律が成立しました。罰則はありませんが、各地の自治体には、ヘイトスピーチを防ぐ取り組みが求められています。
 では、ヘイトスピーチの規制と、憲法21条が保障する「表現の自由」とは、どう関係するのでしょうか。法務省は、人権を侵害するヘイトスピーチは、「表現の自由」として守られる対象にはならないとしています。ただ、どんな言動をヘイトスピーチにあたると判断し、どのように規制するのかは、自治体に任せられているのが現状です。このため、ヘイトスピーチと「表現の自由」との間でどう線引きをすればよいのか、多くの自治体が頭を悩ませているのです。

ヘイトスピーチの現状と規制
 ヘイトスピーチは、主に在日韓国・朝鮮人に対して、ここ数年、激しさを増していました。在日韓国人でつくる民団=在日本大韓民国民団の本部の前でも、これまでヘイトスピーチが繰り返されてきたといいます。民団のクォン・チョンジ(権清志)さんは「『お前ら出て行け』などと、文字通り口にするのもはばかれるような言葉を吐いて、意気揚々と帰っていったことが何度もあります」と話します。
 法律の施行後、デモによるヘイトスピーチは減ったものの、インターネット上ではひぼう中傷の言葉がいまだにあふれています。クォンさんは「『表現の自由』を理由に、ヘイトスピーチの規制をちゅうちょするのはおかしい。実態に即して、より実効性のある踏み込んだ規制を作ってほしいし、そうした動きを広げてほしい」と訴えています。

規制をめぐり分かれる自治体の対応
 実は、自治体の間では、ヘイトスピーチをどう規制するかをめぐり、対応が分かれています。具体的には、公共施設の使用を認めるかどうかの判断が、自治体によって異なっているのです。
 川崎市は、事前にヘイトスピーチが行われる可能性が高いと判断した場合には、市の施設を貸さない方針を取っています。公園の使用申請を受け付ける部署では、法律の制定を受けて、申請の内容を細かくチェックするようになりました。申請者の名前や団体名・施設の使用目的・活動内容に加えて、過去にヘイトスピーチをしていないかも、申請者本人から確認しています。
 ことし5月(企画放送の時点)には、申請者がヘイトスピーチを繰り返していたとして、公園の使用を認めないという全国でも異例の対応を取りました。
 川崎市の担当者は「ヘイトスピーチによる被害を未然に防ぐための1つの方策だと考えています。『表現の自由』を尊重することは重要ですが、差別は、人間の尊厳の根幹にかかわる問題であり、こうした対応が必要だと考えています」と話しています。
 一方で、東京・新宿区は、公共施設の使用申請が出された段階で、ヘイトスピーチを理由に却下することには、慎重な立場を取っています。ヘイトスピーチではないものまで、規制してしまうおそれがあるからです。その代わり、集会などが始まって、周囲に危険が及んだ場合には、その場ですぐに許可を取り消すとしています。ただ、法律が施行されてから、こうした対応を取ったことは1度もなく(注:平成28年12月時点)、具体的にどんなケースで許可を取り消す必要があるのか、頭を悩ませています。
 新宿区の担当者は「ヘイトスピーチが行われるかもしれないということだけを理由に、 施設を貸さないという判断はできません。『表現の自由』を尊重しながら、ヘイトスピーチで人権侵害があったら、直ちに対応する必要があります。どちらを重視するかというのは、非常に難しいです」と話しました。

専門家の間でも意見が分かれる
 ヘイトスピーチを事前に規制する川崎市と、事前規制には慎重な新宿区。自治体の対応が分かれる中で、専門家の間でも、意見がわかれています。
 自治体は、ヘイトスピーチの可能性が高いと判断した段階から、積極的に規制すべきだと指摘するのが、東京造形大学の前田朗教授です。前田教授は「ヘイトスピーチは『表現の自由』の対象ではなく、自治体は、人権侵害のおそれが極めて高いと判断できる時点で、 一定の規制をしなければならない。『表現の自由』を尊重することと、ヘイトスピーチの規制とは両立する」と話します。
 一方で、自治体によるヘイトスピーチ規制がいきすぎると、表現の自由を侵害するおそれがあると指摘するのが、静岡大学の小谷順子教授です。小谷教授は「すべての自治体で、ヘイトスピーチの規制をうまく運用することができるだろうか。公共施設の使用を認めるかどうかが、担当者の主観によって判断されるおそれがあり、そうなると、『表現の自由』への懸念も出てくる」と話します。

改めて考えたい ヘイトスピーチ規制と″表現の自由″
 人権を侵害するヘイトスピーチは、決して許されるものではありません。ただ、ヘイトスピーチの規制にあたっては、「表現の自由」を侵害しないよう、十分な配慮が必要です。「表現の自由」は、憲法で私たちに保障された大切な権利であり、それが侵害されることは、私たちの社会にとっても重要な問題です。ヘイトスピーチをどう規制するかという難題を、私たち自身にも関わりかねないことだと捉えて、これからも考えていく必要がありそうです。

参考:『米国におけるヘイト・スピーチ規制の背景』(榎 透・専修法学論集第96号・2006年3月)

参照:流れのままに 「バージニア州での衝突」(2017年08月17日)


大きな笑顔の佳き一週間を。
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Bernard Sanders







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