c62eacf4.jpg 今日、シアターキノでスペイン映画『海を飛ぶ夢』を観た。ラスト20分間は涙が出て止まらなかった。主人公ラモンの姿よりも、弁護士フリア女史のラストの姿が辛かった。ラモンがフリアにリインカネート(再受肉化)してしまったのだから。
 この作品の楽しみのひとつは、驚きの素晴らしいメイクにある。誰もが主人公そっくりの若者を若い頃のシーンに起用したのだと信じてしまうだろう。しかしながら、元気な若々しい青年が本物で、横たわっている主人公の方がメイクだった。
 主演のハビエル・バルデムは1969年3月1日生まれで、現在36歳。撮影当時は34歳で55歳の四肢麻痺の障害者ラモンという難役にチャレンジした。彼の真に迫った演技から目が離せない。
 監督のアレハンドロ・アメナバールは、スペインで最も注目される若手監督で、1972年3月31日チリ・サンチャゴの生まれ。23歳の時に撮影した長編第一作『テシス・次に私が殺される』がスペインで大ヒットし、ペドロ・アルモドバル監督の『ハイヒール』が保ち続けた歴代興行収入を塗り替え、さらには最優秀作品賞を含む7部門でゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)を受賞するという胸のすくような結果を手にした。第二作『オープン・ユア・アイズ』も大ヒットを記録し、世界中の映画人からの賞賛も多く、リメイク権をめぐってハリウッド・スタジオが争奪戦を繰り広げた。最終的にトム・クルーズが権利を手にし、2001年アメリカでのリメイク版『バニラ・スカイ』が製作された。続く『アザーズ』では死者のとりついた屋敷にまつわるゴシック・ホラーを丁寧に描いて世界中の映画ファンにその名を知らしめた。
 今回の『海を飛ぶ夢』は、ヴェネツィア映画祭でハビエル・バルデムが主演男優賞を受賞したのを始め、ゴヤ賞でも最多14部門、アメリカのゴールデン・グローブ賞、そして第77回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。

 実に素的な作品だ!

原題:MAR ADENTRO(スペイン語)THE SEA INSIDE(英語)
上映時間:125分

感謝