キプロス(島)は、1974年の分断以前は、トルコ系とギリシャ系の住民が共に暮らす複合民族国家であった。今、キプロス島には、二つの国が共存している。

北部(島の37%)の北キプロス・トルコ共和国(首都・レフコシャ)と南部のキプロス共和国(首都・ニコシア)である。前者・北キプロスは、トルコ共和国のみが承認するトルコ系住民による単一民族国家であり、人口は27万人。主言語はトルコ語で、住民の99%がイスラム教徒である。通貨はトルコリラ(TRY)。

後者・南キプロスは、ギリシャ系住民による単一民族国家で人口は87万人。主言語はギリシャ語で、住民の78%がギリシャ正教徒である。通貨はユーロ(EUR)。英国連邦及び欧州連合(EU)に加盟していて、国際連合加盟国193ヶ国中、192ヶ国が国家承認をしている。トルコ1ヶ国のみが承認していない。

今、世界的に話題となっているEUがまとめた支援策の「預金に1回限り最大約10%の税金を課す」は、南キプロスを支援するための前提条件。同国の2012年度GDPは178億ユーロだが、87万人の人口に対し銀行預金総額が約700億ユーロもある。このうち200億ユーロがロシアからの預金とされる。この政策が実施されると、キプロスに銀行口座を持つ人はキプロス人であろうとなかろうと預金に1回限り最大約10%の税金が課される。徴収税額は58億ユーロ(×123円=約7,134億円)に上る。だから、今回の預金課税は国内的には増税政策である。他方、南キプロスは国際的にタックスヘイブン(租税回避地)として知られ、ロシアや英国など海外の富裕層の預金が多いのだから、マネーロンダリングを目的とする人々の預金は同国から別の場所にシフトされる。大切なことは、南キプロスの民衆にとってこのEUの政策はどうなのか、ということである。家計への影響は、非常に厳しいものであろう。しかし、それは1回限りである。中長期的な経済の低迷をこの1回の政策実現で回避できるなら、良しとしていいのではないだろうか。南キプロス議会が銀行預金課税法案を否決したのは、増税を回避したいからだろうか、目先の利益に惑わされた結果であろうか・・・。

そうそう、ここは押さえておきましょう。そもそも、なぜEUが支援する必要があるのか。南キプロスの銀行は、多額の預金でギリシャの国債を購入していた。ギリシャの債務問題を処理した結果、その大半の国債(債権)が無価値にさせられてしまった。ギリシャ救済の余波を南キプロスの銀行が被ったということ。わが日本が合衆国の国債を大量購入している事実に照らし合わせて、他山の石としたい

さて、同じアジアであるキプロスのできごとは、わが日本にも関係しそうだ。先の大戦後、ロシアが不法に占拠を続けている北方領土を課税逃れのセンターにするアイデアがあるというのだ。
北方領土をオフショア地域に=キプロス預金課税でロシア首相
(時事 2013/03/21-21:41)
 【モスクワ時事】ロシアのメドベージェフ首相は21日開かれた閣議で、ロシアの企業や富裕層の銀行預金が課税を迫られているキプロスの混乱を受け、同国に代わって優遇措置が受けられるオフショア金融センターを、北方領土を含む極東地域に創設するよう政府として検討することを提案した。地元メディアが伝えた。
 メドベージェフ首相は、ユーロ圏が金融支援の条件としてキプロスに預金課税を求めているのを念頭に、「(キプロスで)騒動が起こっているならば、ロシア極東に何らかの特区を検討してもいい。サハリン(樺太)やクリール諸島(北方領土と千島列島)などふさわしい地域はたくさんある」と語った。http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013032101014より転載

南キプロスの金融危機を対岸の火事と侮ってはいれない。わが国固有の北方領土に地中海の火の粉が飛んでくるということも視野に入れておきたい。

タックスヘイブン(租税回避地)だからといって安心して海外に資産をシフトしている人々にとっては、新しいレッスンとなった出来事でもある。

愛と美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)誕生の地として知られるキプロス。ギリシア神話では、彼女はこの島の海岸近くで、海水の泡の中から生まれ出たといわれる。美しいキプロスは、色々なことを生み出してくださる。

満面の笑顔で佳き週末を

感謝