最高裁判事に天下った人が、その人事に不服で、安倍首相の「解釈による実質的な憲法改正(解釈改憲)」に反旗を翻した。
最高裁判事 集団的自衛権巡る憲法解釈に言及
(NHK 8月20日 17時17分)
 内閣法制局長官から最高裁判所の新しい判事に任命された山本庸幸氏が会見し、集団的自衛権の行使を巡る政府の憲法解釈の見直しについて「半世紀以上維持されてきた憲法解釈であり、私自身は見直すことは難しいと思う」と述べました。
 内閣法制局長官を務めていた山本庸幸氏(63)は、定年退官した竹内行夫判事の後任として20日、新しい最高裁判事に任命されました。
最高裁で行われた会見で山本氏は、集団的自衛権の行使を巡る政府の憲法解釈の見直しに関する議論について、「今の憲法の下で半世紀以上議論され、維持されてきた憲法解釈であり、私自身としては見直すことは難しいと思っている」と述べました。
さらに山本氏は「見直すのであれば、憲法9条を改正することがより適切だが、最終的には国会や国民が判断することだ」と述べました。
 内閣法制局の長官は今月、山本氏の後任として、第1次安倍内閣の際、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認する議論に加わった、元フランス大使の小松一郎氏が就任しています。
 山本氏は、内閣法制局の長官だった当時、国会での答弁で、集団的自衛権について従来の政府の憲法解釈を維持すべきだという姿勢を示していましたが、裁判で憲法判断を行う最高裁判事としては異例の発言となりましたhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20130820/k10013903011000.htmlより転載

憲法解釈で首相に“10倍返し” 最高裁判事が見せた男の意地
(日刊ゲンダイ 2013年8月22日 掲載)
 思わぬ伏兵に安倍政権がじだんだを踏んでいる。憲法解釈を変更して「集団的自衛権」を行使しようと画策している安倍首相に対して、内閣法制局長官を退き、最高裁判事に就いた山本庸幸氏(63)が、「待った」をかけたからだ。20日の就任会見は明快だった。
〈集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい〉
 政権内からは「もう憲法解釈の変更は不可能だ」という声が上がっている。実際、最高裁の判事に「ノー」と否定されたら強行するのは難しい。よほど頭にきたのか、菅義偉官房長官は「発言に違和感を覚える」と、21日批判している。
 「首相周辺は、これは意趣返しだとカンカンになっています。というのも、安倍首相は解釈変更に消極的だった山本庸幸さんを法制局長官から外したばかりだからです。簡単に言ってしまえば更迭した。ただ、世間からは更迭ではなく、出世に見えるように、最高裁判事というポストに就けた。それでも、法制局長官という職にプライドを持っていた山本庸幸さんは、安倍首相のやり方を許せなかった。首相に一泡、吹かせたのでしょう」(霞が関事情通)
 たしかに、憲法解釈を最終判断する最高裁判事の発言は重みが違う。首相に「10倍返し」するなら、最高裁判事の就任会見は絶好の舞台だ。
 首相の出はなをくじいた山本庸幸氏は、どんな男なのか。
「山本さんは愛知県出身、旭丘高、京大法卒、73年に通産省に入省しています。正直、省内では次官候補ではなかった。でも、法制局には各省から優秀な職員が送られる。山本さんも融通は利かないが、頭脳明晰だったのは確かです。本人は、法制局長官を天職だと思っていたようです」(経産省OB)
 最高裁の裁判官は、憲法で「身分の保障」が規定され、70歳の定年までつとめられる。官邸周辺は、「最高裁判事にしてやったのに」と悔しがっているらしいが、法制局長官を代えることで憲法解釈を変更しようという姑息なやり方が、完全に裏目に出た形だ。http://gendai.net/articles/view/syakai/144145より転載

 今後のお決まりのコースは、謝罪または発言の撤回だろうが、最高裁判事のイスに惑わされることなく「10倍返し」を続けてもらいたい。【8月25日の『半沢直樹』(TBS系)第6話からは、舞台を東京に移し、新たな物語が始まる。】

 憲法に関しては、そろそろ新しい言葉を使って、きっちりと書き換えたい。さもなければ、いつまでたっても古い言葉での解釈論議ばかりが先行し、肯定する側と否定する側は共に環境を変えることができずに、今後も日本のあり方を呪縛し続ける。解釈論議などというものは、まじないのような心理的強制であり、思考する自由と行動する自由を奪う。自由に思考し行動するから、新しい言葉を使って書き換えることができる。解釈改憲よ、さようなら! 書換改憲よ、こんにちは!


閑話休題(それはさておき)

レベル3相当 新しい事故に等しい
(東京新聞 社説 2013年8月22日)
 たかが水漏れと侮っていたのだろうか。レベル3。大事故に重なる大事故と言っていい。福島第一原発内で大量の高濃度汚染水が漏れていた。止められる見込みもついていない。国は無責任すぎないか。
 これは新しい事故である。
 それも、ただの事故ではない。原子力規制委員会は、国際的な尺度(INES)に合わせたこの事故の重大性の暫定評価をレベル1からレベル3まで引き上げる。
 レベル3は「重大な異常事象」と定義され、レベル4以上が「事故」ということになっている。
 しかし、一般の常識に照らせばそれは重大な事故であり、人災ではないのだろうか。
 レベル7の「深刻な事故」に分類される福島原発は、収束に向かうどころか、大事故の上に大事故を日常的に重ねている状態だ。
 これでは漁師たちだけでなく、周辺住民もたまらない。
 汚染水漏れを起こしたとみられるタンクは、二年前から応急的に導入された「フランジ型」と呼ばれるタイプである。
 鋼鉄の板をつなぎ合わせてボルトで留めたもの。つなぎ目はゴムパッキンで埋めてある。水漏れの危険があることは素人にも分かる。近づくだけで人の命が危険になるような、高濃度汚染水の保管場所とは思えない。二十五メートルプール一杯分もの水漏れを見逃していたずさんな管理体制のこともある。そのうち、海へ流せばいいと、高をくくっていたのではないか。
 国際的な影響も出た。
 韓国のアシアナ航空は十月以降、ソウル−福島間のチャーター便の運航を止めるという。このままだと波紋はさまざまに広がりかねない。
 溶接型のタンクを一基造るのに数カ月かかるとか、周囲を凍土壁で囲むのに一〜二年かかるとか、費用を負担するのは誰かとか、そんな悠長なことを言っている場合ではないはずだ。
 内外の不安に対してもっと真剣な危機感を持って対策を急いでもらいたい。レベル3の事故を何とかせねば、レベル7を収拾できるはずもない。
 国民の東電への不信は、さらに高まった。今や政府への不信も募りかねない。
 産・官・学の総力を挙げて地下水の流入箇所と流出場所を突き止め、ふさぐ努力をしてほしい。
 今この瞬間にもタンクから漏れ出ていくのは、この国の安全と信用なのである。
http://www.amakiblog.com/archives/2013/08/22/#002680より転載

恐ろしいことは、安倍自民党政権がこの問題を最優先事項として積極的に解決しようとはしていないこと。私たち民衆の言動は、今のところ、政府を動かすことができないでいる。しかし、国会議員・地方議会議員・反原発を唱えて選ばれた政治家・中央政府および地方政府の官僚・大手メディアと呼ばれる新聞社やテレビ局は、やる氣さえあれば政府に対し彼らの力を非常手段として使うことができる。私たち民衆を先導してデモ活動を起こせる力を持っている。だが、彼らは何らかの理由で思考を規制され、行動を規制されている。古い言葉にグッバイして、新しい言葉で日本の環境を変えてもらいたい。最悪のケースでは、人類の脅威の名の下に、日本は国際社会によって管理される可能性が高い。そのとき、民族国家・日本は主権を放棄せざるおえなくなるだろう。

確かに、政府に民意を伝えるデモ活動は衰退傾向にある。しかしながら、その昔、青島幸男(1932〜2006年)が国会議事堂前で「民主主義の敵、金丸を許すな」と書いたプラカードを掲げて、独り座り込みを続けたデモを思い出してほしい。「日本の安全、政府自らが汚染水漏れを停止せよ!」と書いたプラカードを掲げ、独りデモを行使する政治家よ、出でよ!

大きな笑顔で参りましょう。佳き週末を。

感謝