10月31日、東京電力は平成25年9月の中間連結決算で1,416億円の黒字になったと発表した。電気料金を強制的に値上げして赤字を補填していた会社がもう黒字になっている。政府がせっせと税金を投入して助けた結果なのだ。この会社は国家予算から除染費用の補助を受け続けている。さらに今後の放射能による被曝犠牲者補償や廃炉作業の費用も、政府からの助けにすがるつもりらしい。こんな不真面目さがこの日本で許されている。他方、真面目に経営している一般の企業では、会社存続の名の下に、減給やリストラ等の企業努力が続けられている。東電のようなけた違いの不真面目さが黒字という真面目な結果をだそうとも、真面目に企業努力を続ける一般企業は倒産という不真面目な結果から逃げることはできない。


同日、ひとりの男が記者会見で「陛下に福島第一原発事故をめぐる健康被害および事故の収束で働く原発作業員の労働環境の劣悪さについて知ってもらいたかった」と述べた。彼は参議院議員であり、当日、元赤坂の赤坂御苑で開かれた天皇皇后両陛下主催の1,800人が出席した秋の園遊会で、天皇陛下に手紙を手渡したのであった。天皇陛下の前に立ち、いきなり「子どもたちの未来が危ないんです」と原発問題について訴えると、「これを読んでいただけないでしょうか」と三つ折りの手紙を差し出した。陛下はそのままお受け取りになり、そばにいた侍従長がそれを陛下から預かった。園遊会という場違いでの真面目さは、チト、不真面目に見える。この人は兵庫県宝塚出身の元俳優で38歳になったばかりのお若い人だ。今年7月の第23回参議院議員通常選挙で東京都選挙区から無所属で立候補した。改選5名のこの選挙区からは写真家の桐島ローランド(320,287票・5.7%)や発明家の中松義郎(48,362票・0.9%)を含む20名が立候補していた。彼は得票数666,684票(得票率11.8%)で、第4位で当選している。政治家として不真面目な彼は、請願法第三条「請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」という手続きを真面目に知らなかったようだ。そんな彼の不真面目さを凌駕するのが、「皇室の政治利用だ」、「国会議員としての資質が問われる」、「問題にすべきだ」、「不敬だ」、「辞職せよ」などの真面目な意見である。多分、これら真面目な意見の持ち主の中には、天皇陛下に手紙を渡したことがある人はいないだろうなぁ〜と思った。多少のジェラシーはあるかも。安倍政権は今年4月28日に開催された政府主催の「主権回復の日」式典での天皇皇后両陛下の出席と五輪招致への皇族の派遣を必要と真面目に判断したのだから「皇室の政治利用」の大先輩だろう。また、彼に「現代の田中正造の直訴」を思い浮かべた方々もいるようだが、明治憲法下での天皇の地位と今のそれはかなり違っている。しかしながら、福島の現状を何とかしたいという憂国の情にあふれた真面目な氣持ちは伝わってくるのだし、それを受け継ぎたい。


閑話休題(それはさておき)


10月25日、第2次安倍内閣は「特定秘密保護法案(特定秘密の保護に関する法律案)」を安全保障会議の了承を経て閣議決定し、第185回国会(10月15日〜12月6日までの53日間)に提出した。この閣議決定に先立ち、日本版NSC(National Security Council)と呼ばれている国家安全保障会議創設のための法案を国会に提出し、当日、衆議院本会議で審議に入った。菅官房長官は「NSCの会議の議事録は作成しないことになっている」と述べたが、議事録が作成されるから政府の安全保障に関する決定過程が公開され、国会もチェックできるのだが・・・。タイムリミットでもあるかのように、これら2つの法案を通そうとしているように見えるのは私だけでしょうか。
特定秘密保護法案:知る権利侵害、懸念続出 歴史学研究妨げられる 6団体が声明
(毎日新聞 2013年11月01日 東京朝刊)
 歴史学の6団体の代表が31日、特定秘密保護法案に反対する緊急声明を出した。特定秘密文書が将来公開されるか不明確で「歴史学研究が妨げられる恐れがある」と主張。10月28日には、憲法と刑事法学者も反対声明を発表している。
 このうち同時代史学会代表の吉田裕(ゆたか)一橋大大学院教授は「防衛、外交文書の歴史的検証ができなくなる」と懸念。近年、学者が政治家や官僚のOBから回顧談を聞き取る「オーラル・ヒストリー」が盛んだが、「防衛官僚出身者らが応じてくれなくなるかもしれない」と話した。
 声明を出したのは、同会のほか、歴史学研究会などの代表者。前国立歴史民俗博物館館長の宮地正人氏らも加わった。【青島顕】http://mainichi.jp/shimen/news/20131101ddm002010051000c.htmlより転載

秘密保護法案「憲法原理踏みにじる」 学者らが反対声明
(朝日新聞 2013年10月28日17時35分)
 安倍政権が国会に提出した特定秘密保護法案について憲法やメディア法の研究者が28日、「基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理を踏みにじる危険性が高い」として、制定に反対する声明を発表した。
 奥平康弘・東大名誉教授(憲法)や田島泰彦・上智大教授(メディア法)ら24人が呼びかけ、118人が賛同した。声明は、同法案について「重要で広範な国の情報が行政機関の一存で特定秘密とされる」恐れがあると指摘。報道の自由や市民の知る権利、国会議員の調査活動などが侵害・制約されかねず、平和主義の観点から精査されるべき防衛情報を広く国民の目から遠ざける、としている。
 刑事法の研究者もこの日、同法案は「刑事法の人権保障をも侵害する恐れが大きい」として反対声明を発表。呼びかけ人・賛同者は計129人にのぼった。http://www.asahi.com/articles/TKY201310280264.html?ref=yahooより転載

日弁連、秘密保護法反対の意見書 「情報管理徹底で防げる」
(東京新聞 2013年10月24日 12時18分)
 日弁連は24日、記者会見し、重要な秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案に反対して「漏えい防止は厳罰化でなく、情報管理システムの適正化で実現すべきだ」と訴える意見書を公表した。国民への情報開示を充実させるため、公文書管理法や情報公開法の改正も求めている。
 意見書は、過去の漏えい事件では組織内部の情報管理がずさんだったと指摘。情報の重要度に応じてランク分けした管理システムが実行されれば、漏えいを防ぐことができ、秘密保護法の制定は必要ないとしている。(共同)http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013102401001192.htmlより転載

特定秘密保護法案:「反自由主義的」 米紙が社説で批判
(毎日新聞 2013年10月31日 22時37分)
 【ワシントン西田進一郎】米紙ニューヨーク・タイムズ傘下の国際英字紙「インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ」は29日付(電子版)の社説で、安倍政権が今国会での成立を目指す特定秘密保護法案について「国民の知る権利をむしばむ秘密保護法」などと批判した。
 社説の題名は「反自由主義的な秘密保護法」。同法案が定める「特定秘密」の指定について運用指針がないことを問題視し、「定義づけがあいまいなことで、政府が都合の悪い情報をいくらでも特定秘密に指定できる」と恣意(しい)的な運用への懸念を示した。
 さらに、秘密を漏えいした政府職員に最長で懲役10年が科されることや、特定秘密の指定期間が無期限に延長できることなど法案の問題点を指摘し、「ジャーナリストを最高5年の懲役刑で脅すことにより、政府の不透明さが一層増すだろう」などと批判した。http://mainichi.jp/select/news/20131101k0000m030111000c.htmlより転載

Japan's Illiberal Secrecy Law
(By THE EDITORIAL BOARD Published: October 29, 2013)
 The Japanese government is poised to enact a secrecy law that will undermine the people’s right to know. The law will give all government ministries the right to classify information related to defense, diplomacy, counterintelligence and counterterrorism as a state secret. But there is no guideline as to what constitutes a secret. This lack of definition means the government could well designate any inconvenient information secret.
 Under the proposed law, government officials found to have revealed secrets could be jailed up to 10 years. Such a provision would give officials even greater incentive to label documents secret rather than risk their release.
 Until now, only the Defense Ministry had the authority to classify information as a “defense secret.” Its record is abysmal. Of the 55,000 documents the ministry classified secret between 2006 and 2011, 34,000 were destroyed at the end of a particular secrecy period, depending on the document. And only one was declassified for public release.
 The new law would allow the secrecy period to be extended indefinitely. And it further limits government accountability by making no clear provision for sharing secrets with elected representatives in the national Diet.
 The law will make an already opaque government more so by threatening to jail journalists, up to five years, for doing their job in an “invalid” and “wrongful” manner. Japan’s newspapers fear that there will be markedly less communication between journalists and government officials. Opinion polls show that the public is very skeptical of the law and its reach. The government of Prime Minister Shinzo Abe, however, is eager to pass it as soon as possible.
 Mr. Abe needs it to establish an American-style national security council. Washington has made clear that more intelligence cannot be shared with Japan until it has tighter information control. Of the six departments in Mr. Abe’s proposed security council, one department places China together with North Korea, while other departments focus on allies and other nations. This move reflects the confrontational stance the Abe government has been taking toward China and another sign of a hawkish foreign policy that may well harm civil liberties and create even more mistrust of the Japanese government in East Asia. http://www.nytimes.com/2013/10/30/opinion/international/japans-illiberal-secrecy-law.html?smid=tw-share&_r=1&より転載

NYタイムズ紙はこの社説の最後の部分で、『6部門のうち1つが「中国と北朝鮮」である。他の部門は、同盟国やその他という分類だというのに。こうした動きは、安倍政権の中国への対決姿勢やタカ派外交姿勢を反映したものであり、これが市民の自由を制限し、東アジアでの日本政府へ対する不信感をさらに高めることになる』と述べる。日本版NSC(an American-style national security council)の事務局である国家安全保障局に「総括」「同盟・友好国」「中国・北朝鮮」「その他(中東など)」「戦略」「情報」の6部門が設置されることを取り上げ、日本版NSCと秘密保護法がセットになることで、東アジアの安定を脅かす可能性があると伝えているが、合衆国の国益にもならないということであろう。

国内的には、政治家 vs 官僚 の構図の中で、政治家が良しとした政策が官僚に不利益となった場合、官僚機構がこぞって特定秘密保護法案を利用して、その政策に関連した重要な情報を特定秘密に指定することができそうだ。政治家は、その政策に連関した開示情報を活かした私たち民衆への世論形成の機会を失うことになる。情報を道具に、世論を武器にして、官僚に対峙する政治家が消えた時、権力(独占情報)をもった官僚機構が野放し状態となり、静かに、官僚ファシズムの社会が訪れる。真面目にNSCだ、特定秘密保護法案だと言ってみたら、不真面目な結果になってしまった、は御免こうむりたい。


さあ、連休も終わりです。
明日から再び真面目に仕事しましょう。

大きな笑顔の佳き11月を

感謝