69年前の1945(昭和20)年7月26日、米英中の3か国(のちにソ連も参加)はポツダム宣言(Potsdam Declaration)を発し、日本国ではなく、日本軍の無条件降伏を要求した。日本政府は、日ソ中立条約があるソ連に和平講和の仲介を託していたが、8月6日広島市に原子爆弾が投下され、8月8日ソ連対日宣戦布告、8月9日広島市に続き長崎市にも原子爆弾が投下されるという重大な事態が続いた。8月10日、日本政府は中立国を通じて、国体の変更を伴わないかどうかを連合国側に確認した。しかし、確答が得られぬまま、8月14日の御前会議で、昭和天皇の聖断により、「全日本軍の無条件降伏」等を求めた全13か条から成るポツダム宣言受諾が決定され、終戦の詔勅が発せられ、連合国に対しポツダム宣言の受諾を通告した。他の枢軸国が降伏した後も抗戦を続けていた日本はこの宣言を受諾し、先の大戦(大東亜戦争)は終結した。

特筆すべきは、ポツダム宣言10条にある「日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではない」(We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation)と明記してあること。日本はこれを受諾したので、奴隷にもされないし、皆殺しにもされなかった。無条件降伏をしたのは日本の軍隊のみであって、日本国自体は無条件降伏したわけではなかった。だから、天皇の地位は自由に日本国民の意志によって決めることができ、合衆国もこれを了解した。日本国民の意志を無視しないという条件を日本側は付け、交渉に臨んだ。(詳しくは→国立国会図書館「ポツダム宣言受諾に関する交渉記録」) これ以降、日米間には交渉が見当たらず、「アメリカ様のおっしゃる通りでございます」のみがベストアンサーという意識になってしまった。
Potsdam Declaration (Proclamation Defining Terms For Japanese Surrender)
ポツダム宣言(米、英、華三国宣言)
July 26, 1945 1945年7月26日

(1) We - the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China, and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our countrymen, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.
1.吾等(合衆国大統領、中華民国政府主席、及び英国総理大臣)は、吾等の数億の国民を代表し協議の上、日本国に対し戦争を終結する機会を与えることで一致した。
(2) The prodigious land, sea and air forces of the United States, the British Empire and of China, many times reinforced by their armies and air fleets from the west, are poised to strike the final blows upon Japan. This military power is sustained and inspired by the determination of all the Allied Nations to prosecute the war against Japan until she ceases to resist.
2.3ヶ国の軍隊は増強を受け、日本に最後の打撃を加える用意を既に整えた。この軍事力は、日本国の抵抗が止まるまで、同国に対する戦争を遂行する一切の連合国の決意により支持され且つ鼓舞される。
(3) The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.
3.世界の自由な人民に支持されたこの軍事力行使は、ナチス・ドイツに対して適用された場合にドイツとドイツ軍に完全に破壊をもたらしたことが示すように、日本と日本軍が完全に壊滅することを意味する。
(4) The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.
4.日本が、無分別な打算により自国を滅亡の淵に追い詰めた軍国主義者の指導を引き続き受けるか、それとも理性の道を歩むかを選ぶべき時が到来したのだ。
(5) Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.
5.吾等の条件は以下の条文で示すとおりであり、これについては譲歩せず、吾等がここから外れることも又ない。執行の遅れは認めない。
(6) There must be eliminated for all time the authority and influence of those who have deceived and misled the people of Japan into embarking on world conquest, for we insist that a new order of peace, security and justice will be impossible until irresponsible militarism is driven from the world.
6.日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を除去する。無責任な軍国主義が世界から駆逐されるまでは、平和と安全と正義の新秩序も現れ得ないから。
(7) Until such a new order is established and until there is convincing proof that Japan's warmaking power is destroyed, points in Japanese territory to be designated by the Allies shall be occupied to secure the achievement of the basic objectives we are here setting forth.
7.第6条の新秩序が確立され戦争能力が失われたことが確認されるまでの日本国領域内諸地点の占領
(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
8.カイロ宣言の条項は履行されるべき。又日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等の決定する諸小島に限られなければならない。
(9) The Japanese military forces, after being completely disarmed, shall be permitted to return to their homes with the opportunity to lead peaceful and productive lives.
9.日本軍は武装解除された後、各自の家庭に帰り平和・生産的に生活出来る。
(10) We do not intend that the Japanese shall be enslaved as a race or destroyed as a nation, but stern justice shall be meted out to all war criminals, including those who have visited cruelties upon our prisoners. The Japanese Government shall remove all obstacles to the revival and strengthening of democratic tendencies among the Japanese people. Freedom of speech, of religion, and of thought, as well as respect for the fundamental human rights shall be established.
10.日本人を民族として奴隷化しまた日本国民を滅亡させようとするものではない。捕虜虐待を含む一切の戦争犯罪人は処罰されること。民主主義的傾向の復活を強化し、これを妨げるあらゆる障碍は排除されるべきこと。言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されること。
(11) Japan shall be permitted to maintain such industries as will sustain her economy and permit the exaction of just reparations in kind, but not those which would enable her to re-arm for war. To this end, access to, as distinguished from control of, raw materials shall be permitted. Eventual Japanese participation in world trade relations shall be permitted.
11.日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わらないものが保有出来る。また将来的には国際貿易に復帰が許可される。
(12) The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.
12.日本国国民が自由に表明した意志による平和的傾向の責任ある政府の樹立を求める。この項目並びにすでに記載した条件が達成された場合に占領軍は撤退する。
(13) We call upon the government of Japan to proclaim now the unconditional surrender of all Japanese armed forces, and to provide proper and adequate assurances of their good faith in such action. The altenative for Japan is prompt and utter destruction.
13.我々は日本政府が全日本軍の無条件降伏を宣言し、かつその行動について日本国政府が示す誠意について、同政府による十分な保障が提供されることを要求する。これ以外の選択肢は迅速且つ完全なる壊滅のみ。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19450726.D1E.htmlより転載


閑話休題(それはさておき)


69年前にアメリカ合衆国が犯した取りかえしがつかない犯罪は、日本の民衆に対して原子力爆弾を用いたこと。国際法でその使用は禁じられていたと見ることができる。1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議で採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(Convention respecting the Laws and Customs of War on Land)」は1907年の第2回万国平和会議で改定され、今日に至る。第23条5項では「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁じている。また第27条では「攻囲及び砲撃を行うにあたっては、宗教、技芸、学術、慈善の用途に使用されている建物、歴史上の記念建造物、病院、傷病者の収容所は、同時に軍事目的に使用されていない限り、これに対しなるべく損害を与えない為の必要な一切の手段を取らなければならないものとする。攻囲された側は識別し易い徽章をもって建物または収容所を表示する義務を負う。前述の徽章は予めこれを攻囲者に通告すること」になっている。

合衆国には原子力爆弾を使用するのは止めようという議論があった。ドイツには用いずに日本に使用するのは人種差別ではないかという議論もあったが、日本にのみ使用した。これが国際法違反であるということは明白。以降、いかなる国へも原子力爆弾は用いられていない、のだから分かる。

合衆国は、禁止されたものであると解釈される原子力爆弾を用いた。ならば、この時の責任者は戦争犯罪者として裁かれるべきであった。現在にたるまで、合衆国では日本の民衆(非戦闘員)への原子力爆弾使用が戦争犯罪であるという意識は醸成されていない。日本国内においても広島と長崎の未だかつてない被害が戦争犯罪(the war crime)によるものであるという意識は希薄だ。

戦争犯罪は今も続いている。ベイト・ハヌーンの学校に対して行われた攻撃がそれで、虐殺されているのは罪もない子らだ。一刻も早く、日本が介入して止めたい。これは戦争ではない、民族浄化(ethnic cleansing)である。
【ガザ発】イスラエル軍、国連避難所を攻撃 死傷者200人超
(田中龍作ジャーナル 2014年7月25日 00:46)
2014年7月24日@ベイトハヌーン 
避難していたはずの肉親が攻撃で殺され、泣き叫ぶ母と娘。=24日、ベイトハヌーン 写真:筆者=

 イスラエル軍の爆撃を逃れて住民が避難していた国連の小学校を、24日午後4時(日本時間同日午後10時頃)、同軍のヘリが攻撃、16人が死亡、約200人が負傷した。
 現場はガザ北部の町、ベイトハヌーンにあるUNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)の小学校。ベイトハヌーンはイスラエルとの国境に比較的近いことから、イスラエル軍の激しい爆撃にさらされており、千人を超える住民がUNRWAの小学校に避難していた。
 筆者は現場に急いだ。取材車は救急車の後にぴったりと付いた。単独で行くと、空から狙われるからだ。
 攻撃された小学校の校庭には大量の血が流れていた。イスラエルの無人攻撃機の音が耳に迫った。避難民は小学校からすでに脱出していた。
 イスラエル軍のヘリから発射されたのは、対人用ミサイルで、2004年にハマスの指導者ヤシン師を暗殺した時の物と同型と見られている。
 確実に攻撃対象をヒットすると共に、子爆弾も炸裂し周囲の人間も大勢殺傷する。
 イスラエルは避難民のなかにハマスのメンバーが紛れ込んでいるとの情報を得て、オペレーションを実行したものと見られている。http://tanakaryusaku.jp/2014/07/0009746より転載

7月22日にガザからのロケット弾がイスラエルの主要な空港であるベングリオン国際空港付近に着弾。当然、各国はイスラエルへのフライトを停止した。イスラエルは社会経済的な打撃をうけた。イスラエル兵の死者は20人を越えている。ネタニヤフ首相は、今以上の陸軍部隊を送り込んでガザの全域を占領することで、ロケット弾を止めようとしているのだろうか。その場合は双方の流血を覚悟する必要がある。それとも、ハマスの条件であるガザに対する経済的封鎖の解除を受け入れて停戦するのだろうか。しかし、後者はハマスに政治的勝利をもたらす。同時に、ネタニヤフ首相はイスラエル国内のタカ派による批判の嵐に巻き込まれるだろう。
両陛下、イスラエル首相夫妻と懇談 「大虐殺痛ましい」
(朝日 2014年5月13日18時36分)
 天皇、皇后両陛下は13日、皇居・宮殿で、来日中のイスラエルのネタニヤフ首相夫妻と懇談した。
 宮内庁によると、懇談でネタニヤフ首相は「イスラエルと日本には共通点がある」と述べ、いずれもおびただしい数の市民が犠牲となったホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と、広島、長崎への原爆投下を挙げた。天皇陛下は「ホロコーストは大変に痛ましいことだったと思います」と語ったという。http://www.asahi.com/articles/ASG5F4W42G5FUTIL01J.htmlより転載

今、イスラエルのネタニヤフ首相は、デイレンマに直面していて、コミュニケーション手段としての最優先課題をハマスとの関係に見いだせないでいる。今上陛下との対話を想い起こし、人命の尊重を最優先とした策をとってもらいたい。

さて、いつものように長くなってしまった。これを今日の最後にしましょう。
ヘイトスピーチ処罰を=慰安婦問題、国家責任認めよ−国連対日勧告
【2014/07/24-21:01 ジュネーブ時事】
 拷問禁止、表現の自由などに関する国連人権規約委員会は24日、日本政府に対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)など、人種や国籍差別を助長する街宣活動を禁じ、犯罪者を処罰するよう勧告した。また、旧日本軍の従軍慰安婦問題についても、「国家責任」を認めるよう明記した。
 規約委は勧告となる「最終見解」の中で、ヘイトスピーチや「Japanese only」の表示など、外国人への差別をあおる行為が広がっているとして問題視。差別される側が「刑法、民法で十分に保護されていない」と懸念を示した。
 その上で、「差別や暴力を誘う人種的優位や憎悪を助長するプロパガンダをすべて禁止すべきだ」と提言。日本政府に対し、犯罪者を処罰するルールを整備するよう促した。
 一方、従軍慰安婦問題に関しては、元慰安婦への人権侵害が続いており、教科書への十分な記述を含めた教育の重要性を指摘。「公式謝罪、国家責任を公式に認めること」を求めた。
 このほか、死刑確定後に再審が認められ釈放された袴田巌さんの事例を踏まえ、死刑制度の廃止検討を盛り込んだ。また特定秘密保護法の厳格な運用も勧告した。
 規約委の対日審査は15、16両日、ジュネーブの国連欧州本部で約6年ぶりに行われた。勧告の解釈は各批准国に委ねられ、法的拘束力はない。http://www.jiji.com/jc/zc?k=201407/2014072400979&g=polより転載

このような勧告を出される前に、日本側はどのような交渉を重ねたのだろうか。旧日本軍の従軍慰安婦問題とは何を示し、なぜ日本が国家責任を認め無ければならないのかを立証する責任を国連人権規約委員会に求めたのだろうか。「差別や暴力を誘う人種的優位や憎悪を助長するプロパガンダ」は一体全体、日本国内で誰が、どの勢力が仕立てているのかを見極めてもらいたいものだ。

今、日本側にはポツダム宣言受託時に発揮できたネゴシエーション(交渉)が求められている。従来のバーゲニング(取り引き)や減点されないためだけの努力(官僚的・お役人的処世術)から卒業して、日本の民衆の尊厳を守るべく果敢に世界に向かってコミュニケートしていきたい。新生日本を作り直す今という時代には、プライオリティ(優先順位)による選択を共通のコミュニケーション手段にできる人材が求められている。


大きな笑顔の佳き日曜日を   感謝