大竹しのぶ。昨夜、テレビ番組で久々にその姿を見た。彼女の出演作品で印象深いのは、新藤兼人監督(当時99歳)の「一枚のハガキ」(2011年)。極上の反戦映画である。天皇陛下は、2011年7月13日のプレミア試写会でこの作品を鑑賞なさっている。後に、彼女は陛下とのことを次のように語った。

「ご苦労されましたか?」と天皇陛下に聞かれて、「苦労したけれど報われました」とお答えしました。監督が陛下に「新しい日本です」と仰っているのを聞いて、その言葉に涙しました。私はすごく緊張しましたが、次第に映画に入り込んでいって、最後には心から拍手を送って頂いて、本当にうれしかったです。
http://eiganavi.entermeitele.net/news/2011/07/post-d82c.htmlより引用
一枚のハガキ
テレビのスクリーンからは想像できない、反戦女優として彼女は生きている。その息吹は以下の記事から伝わってくる。
大竹しのぶ_2013-12-295_東京新聞
"安倍流"に怖さ感じる
(神戸新聞 2013年12月29日)
特定秘密保護法が成立し、安倍晋三首相は靖国神社に参拝した。独自の道を突き進む政権の現状に危機感を抱く女優の大竹しのぶさんに聞いた。
秘密法成立、靖国参拝・・・
女優の大竹しのぶさん
 「いつの間にか、大きな力に巻き込まれていく怖さを感じる。なんだろう、今聞こえてくる足音は」 大竹さんは拙速とも言える特定秘密保護法の成立過程に不信感を募らせる。
 山田洋二監督らの呼び掛けに賛同し、「特定秘密保護法案に反対する映画人の会」を結成した3日後、法律が成立した。「あの戦争も人々が『変だよね』と感じているうちに始まってしまったのではないのか」と、太平洋戦争前夜に思いを巡らせる。法律の成立で、戦争につながる情報も秘密になるのではという不安もある。
 山田監督や新藤兼人監督の映画、井上ひさしさんの舞台など、戦争を知る大先輩たちの作品に出演してきた。「皆、絶対に戦争をしてはいけないと伝えるため、映画や演劇を作ってきた。そういう思いのこもった作品の力を信じたい
 1月から出演する舞台「太鼓たたいて笛ふいて」の稽古にはげ臨みながら、その決意を新たにしている。従軍作家を経て戦後は反戦的な作品を書いた林芙美子をモデルに、井上さんが創作した。
 戦場に赴いた芙美子は、軍が作ったうその"物語"に沿う記事で戦争を賛美。戦後、自らの行為を詫びる気持ちを反戦文学として著す。 井上さんは芙美子に「物語はもういらない。物語をつくる、それに合わせる・・・もういやだ」と言わせた。
 2002年から4回目となる舞台だが、「今だからこそ、この作品を上演したい」という。 秘密保護法に加え、米軍普天間飛行場の移設問題や原発再稼働をめぐる動きもあり、「いつの間にか作られた物語に、私たちも組み込まれている。作品で書かれた言葉に真実味が増してきた」。
 劇中、ある女性が夫の戦死について「靖国の神になりました」と手紙に記す。期せずして、安倍首相の靖国参拝を想起せるせりふとなった。「実際に起こるべきではない、芝居にとどめておくべき言葉を、背筋が凍るようなリアリティーを持っていう事になりました」と大竹さん。「芝居は(世の中をどうするべきかと)人々が判断する手掛かりを得るためにある。この作品を上演できる意味を考え、セリフが持っている意味を伝えたい

女優・大竹しのぶは、2011年秋(11月3日)の褒章において紫綬褒章を受章。「日本国天皇」の名で授与された受章者は、東京都内のホテルなどで行なわれる伝達式にあわせて、皇居で天皇に拝謁する。褒章の授与に回数の制限はない。「勲章、記章、褒章等の授与及び伝達式例」(昭和38年7月12日閣議決定)4条は、褒章について、「内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達する」と定めている。当時の首相が安倍氏でなかったことは言うまでもない。

彼女は天晴れ、さわやかな反戦女優(the actress of real quality)である。


閑話休題(それはさておき)


このところ、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(War Guilt Information Program)等、1945年から続いてきた、刷り込まれマインド・セットされた偽りの罪意識からの解放により、真実を知ることの衝撃による怒りのエネルギーを持つ方々が現れはじめている。この状態を放置するなら、又はその対処を間違うなら、1945年への道が待ち構えている。加えて、無抵抗な人、憎らしい人に不条理に理不尽にストレスを与えることを強化するような情報が氾濫していて、多くの人間のマインドに破壊願望・破壊衝動・残虐行動を増幅させている。

私たち日本の民衆の意識には共通に、許すという美徳が普通に備わっている。大切なことは、知ることで恒久平和を手にすることであって、怒りによって戦争への道を選択することではない。シラス国・日本の私たちに求められているのは、この世に出回る諸々の情報の意味を読み解き知って、慎重に行動すること。読み間違えて、乗せられたからこそ、大日本帝国は1945年の敗戦に到る道を盲目猛進してしまった。今この時代にあって、反戦映画の意味は、私たちひとり一人が真実を知ること、情報を読み解くことで、新しい時代の扉が開かれるということを伝えることだろう。


舞いはじめた小雪を見つめながら。

大きな笑顔の良き土曜日を   感謝