表現の自由の保障は、自己の素性を明らかにしないで匿名で表現活動を行うことにも及ぶのであり、これを「匿名性の保障」という。ドイツでは現金(キャッシュ)売買(取引)することで匿名性の保障を担保できるという論議がある。これは資金洗浄・テロ資金対策(Combating Money Laundering and the Financing of Terrorism)のひとつとして、取引主体が明瞭なキャッシュレス・デジタル(フィンテック)通貨を普及させようというムーブメントへの抵抗として映るかもしれない。日本では今のところ、キャシュレス社会と匿名性の保障をリンクして捉えた討議は見当たらない。

昨日はドイツのことを記したので、今朝はスウェーデン、デンマーク、スイス、そして日本のことを。

(引用開始)
キャッシュレス行き過ぎ、スウェーデン中銀「現金取扱の義務化」要請
(ZUU Online 2016年3月23日 15時13分 (2016年3月24日 14時43分 更新))
 キャッシュレス先進国といわれるスウェーデンの中央銀行リクスバンクが、国内におけるキャッシュレス化の速度が、需要と供給のバランスを著しく崩している点を指摘。「キャッシュ・サービスの提供を、決済用口座の必須事項として銀行に義務つける」法的必要条件を財務省に要請した。
 近年スウェーデンでは通貨流通量が激減。6年前と比較すると1060億クローナ(約1兆4399億円)から800億(約1兆867億円)に落ち込んでおり、現金取引は国内全体のわずか2%だという。
■「銀行で現金が使えない」100%キャッシュレスな町も
 法案によると、スウェーデンの銀行が現金取り扱いサービスの縮小を早急に進めすぎたことにより、国内の通貨流通量が一気に押し下げられたという。
 特に地方ではキャッシュ・サービスが行き届かなくなってきているなど、次々と問題点が明るみに出はじめた。リクスバンクは「供給が需要に追いついていない」とし、こうしたギャップがさらに広がることを懸念して、財務省の協力を求めるに至った。
 1661年に欧州初の紙幣を導入、1668年には世界最古の中央銀行を設立したスウェーデンは、世界屈指のクレジット大国に成長。「ワールド・クラス・ペイメント」の調査では、クレジットカードの所有率、利用率ともに世界上位5カ国にランクインしている。
 「少額の買い物でもカードで決済」という国全体の風潮がFinTechの発展に大きく貢献しているほか、コスト削減や犯罪防止につながるなど、良いことづくめのように見えたキャッシュレスだが、ここにきて思わぬところで波紋を投げかけている。
 しかしこうした中央銀行の動きを、「極端に走りすぎだ」と批判する声も方々からあがっている。スウェーデンは近年、ノルウェー、デンマークなどの近隣国とともに、率先してキャッシュレス化を促進してきた。現在では大手スカディナヴィスカ・エンスキルダ・バンケン(SEB銀行)が現金取り扱いサービスの7割を停止し、銀行で現金が使用できない町もあるそうだ。
 ATM業界団体(ATMIS)のマイク・リーCEOは、「消費者には決済法を選ぶ権利がある」とコメント。「リクスバンクがキャッシュレス社会の幻想に気が付いたことは評価できる」が、キャッシュレスがもはや社会の常識となったスウェーデンで、一体どのような手段を用いて歯止めをかけられるのだろうか。(FinTech online編集部)http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20160323/zuuonline_101083.html
(引用終わり)

(引用開始)
Denmark Pushes Forward with Cashless Payments
(December 23, 2015 by Michael Cheng)
 Sweden is not the only country interested in eradicating cash. Its neighbor, Denmark, is also making great strides to lessen the circulation of banknotes in the country.
 Two decades ago, roughly 80 percent of Danish citizens relied on hard cash while shopping. Fast forward to today, that figure has dropped dramatically to 25 percent.
 “We’re interested in getting rid of cash,” said Matas IT Director Thomas Grane. “The handling, security and everything else is expensive; so, definitely we want to push digital payments, and that’s of course why we introduced mobile payments to help this process.”
 Eventually, establishments may soon have the right to reject cash- a practice that is common in Sweden. Government officials have set a 2030 deadline to completely do away with paper money.
 When it comes to daily purchasing practices, Danes prefer to use credit cards. Andreas Sigsgaard, a hotdog vendor, confirmed that only tourists pay with cash at his stand.
 The vendor claims that it’s easier to keep tabs of payments using credit cards. Handling banknotes at the end of the day for the man is tedious and prone to errors.
 Helping streamline the adoption of cashless practices is MobilePay. The payments app is being used by over 30 percent of the country’s population. Using the platform, locals can participate in P2P transactions, as well as pay for goods and services wirelessly.
 Even with promising benefits of going cashless, the government intends to slow down the transition to minimize unforeseen risks.
 “We’re obliged to supply the amount of cash the population and businesses demand,” explained Danish central bank chief Hugo Frey Jensen.
 “But on the other hand, we think it’s also important to have an efficient and secure payment infrastructure, the whole digitalization process is very important in a country like Denmark.”
http://paymentweek.com/2015-12-23-denmark-pushes-forward-with-cashless-payments-9215/
(引用終わり)

この流れはEU全体の流れとなりそうだ。
さて、わが日本はというと・・・

(引用開始)
三菱東京UFJ、独自の仮想通貨発行へ 一般向けに来秋
(朝日 2016年6月10日03時07分)
 三菱東京UFJ銀行は、独自に開発中の仮想通貨「MUFGコイン」を来秋、広く一般の利用者向けに発行する。ITを活用した金融サービス「フィンテック」の一環で、大手行が仮想通貨を一般向けに発行するのは世界で初めて。利用者同士が手軽にやり取りをしたり、割安な手数料で外貨に交換したりできる。信用力が高いメガバンクの本格参入で、仮想通貨の裾野が広がりそうだ。
 MUFGコインは、利用者が、同行の口座にある預金を「1コイン=1円」の比率でコインに交換し、スマートフォンのアプリに取り込むなどして使う。
 利用者同士はわずかな手数料でコインをやり取りでき、会食後の「割り勘」などでの利用が想定されている。空港で外貨に換えて引き出すこともでき、手数料も大幅に安くなるという。
 「Suica」(スイカ)など、前払い式の電子マネーと似ているが、利用者同士がネットを通じて「送金」できる点などが異なる。
 同行は、コインを取り込んだスマホをかざせば現金を引き出せる新型ATMの開発も進めており、2018年春から順次、配備する予定。実現すれば、同行に口座を持たずとも、スマホに取り込んだコインをATMで現金化できるようになる。
 さらに、さまざまな店舗と提携して支払いにコインを使えるようにする。ポイント制を導入する構想もあり、将来的には、コインを中心とする「商圏」の構築につなげたい考えだ。
 仮想通貨の「ビットコイン」などにも使われている取引記録の新技術「ブロックチェーン」を活用。取引を管理する大型コンピューターが不要になり、システム運営のコストが大幅に抑えられる。
 同行幹部によると、スマホに取り込む専用アプリの試作品はすでに完成。今後、行員の行内厚生施設利用をコインで補助するなどの実証実験を進める。
 仮想通貨は、ビットコインなど600種類以上あるといわれる。ただ、円など法定通貨との交換比率が変動して投機の対象になりがちなことなどが、幅広い普及への壁になっている。メガバンクが発行し、円との交換比率が一定のMUFGコインの登場は、仮想通貨を一気に身近なものにする可能性を秘めている。
 同行は当初、コインを当面は「行内通貨」にとどめる方針だったが、これまでの実験で行内で「コインは利用者の利便性を高める」との声が高まり、一般向けの発行に踏み切る。
 ここ数年、新興のIT企業などがフィンテックを活用し、決済など銀行の独壇場だった事業に続々と参入しており、世界の金融機関が対応を迫られている。三菱UFJのコイン発行は、みずからもフィンテックの活用を急ぎ、IT企業などに対抗する狙いがある。(織田一)http://www.asahi.com/articles/ASJ69566CJ69UHBI00V.html
(引用終わり)

取引記録のブロックチェーンは、分散型台帳技術または分散型ネットワークで、Crypto space(暗号の世界)。

ブロックチェーンでは情報がネットワークで接続された個人のコンピューターを介して通信・共有される。中央集権的ではないブロックチェーンは外部からの攻撃に強く安定しているので、このシステムを停止させることはできないだろう。情報が通過する度にコンピューターによってチェックされ、全ての情報はブロックとして知られる時系列情報を持ったデータの鎖として蓄積される。クレジットカードやPayPalのように、送金には銀行などの金融機関を経由させる必要がない。ブロックチェーンによって移動するコイン(参加者の情報)はすべてのシステム参加者によって監視・管理され取引の履歴は管理されるので、二重にその情報(コイン)を使えない。近い将来、管理能力が高いブロックチェーンによってオンラインデータは管理されるかもしれない。

中央集権的な日本政府は改正資金決済法によって仮想通貨を規制するが、禁止することはないらしい。これは暗に、来秋に三菱東京UFJ銀行の仮想通貨「MUFGコイン」を認めるという宣言にも等しい。加えて、これが中央銀行システム(日銀券)の維持・継続に対峙する政策であることも心しておきたい。

(引用開始)
仮想通貨規制が成立 テロ資金対策強化
(毎日新聞2016年5月25日 10時12分(最終更新 5月25日 11時09分)
 ビットコインなどの仮想通貨を規制する改正資金決済法が25日の参院本会議で可決、成立した。公布後1年以内に施行する。
 仮想通貨の規制はテロ資金や資金洗浄への悪用防止のほか利用者の保護が狙い。欧米各国がテロ対策で仮想通貨への規制を整える中、足並みをそろえる姿勢を示すため政府は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催前の成立を目指していた。
 改正資金決済法は仮想通貨を決済手段に使える「財産的価値」と定義した。仮想通貨と現金を交換する取引所に登録制を導入する。金融庁が監督官庁となり取引所に業務改善命令や停止命令を出せるようになる。
 仮想通貨に対する規制はビットコイン取引所マウントゴックス(東京)の巨額コイン消失事件も踏まえ、金融庁などが検討してきた。(共同)http://mainichi.jp/articles/20160525/k00/00e/020/165000c
(引用終わり)
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