一昨年、祖母の遺骨を札幌市南区藤野の藤野聖山園にある共同墓地に移した。その墓地はコープさっぽろが運営する「協同の苑」。使用権を購入するといつでも納骨でき、納骨室(カロート)1個に骨壺で2個収納できる。34年後は合祀する場所(合祀塔)に埋葬。8月15日の合同供養祭は午前と午後に分けて行われるので、都合の良い方を選ぶ。供花、供物、焼香(線香)、ろうそくは用意されている。秋のお彼岸(秋分の日)もお盆と同様に開祭。この時は地下の納骨堂が解放されるので、家族で祖母の遺骨を確認する。お墓の献花台(参拝スペース)では冬季を除きいつでも参拝が可能。

平成9年に亡くなった祖母の遺骨は一昨年まで、何とか本願寺という仏教の寺院に永代経扱いでの永久納骨をお願いしてきた。毎月の命日には、僧侶に家に来ていただき、お経を唱えていただいた。しかし、その寺院の立て替え工事を契機に、「臨終即往生ならば祖母はもう極楽にいるのだから、今更、娑婆でお経を唱えて、寺院に寄付などしても供養にはなりませんよ」と母と話し合い、理解を得て、宗教色のない「協同の苑」へ遺骨を移した。

お墓を建てない埋葬の方法には以下のようなものがある。

1.永代供養墓
永代供養墓とは合祀墓と同じように一基のお墓に複数の遺骨を埋葬。家墓とは違い大きなお墓に他の人と共同で入ったり、同じ納骨室に安置されるため共同墓、集合墓、合同墓とも呼ばれる。独身や後継者がいない場合、将来無縁仏にならないように寺院や管理者が永代に供養してもらえるため特に都会では希望者が増えている。
2.納骨堂
これはお墓の代わりに建物内に遺骨を保管してもらう施設で寺院が管理しているケースが多くなっている。ロッカー式や棚型のもの、コンピュータで管理して骨壺や位牌が移動してくるものなど様々なタイプがある。大きな意味では納骨堂は永代供養墓の一つと考えてよい。多くの場合、33回忌(または50回)までは納骨堂に骨壺を安置し、その後は合祀墓で永代供養するしくみになっている。中には永代使用権を取得して、室内に外墓を建てるというような考え方のところもある。
3.樹木葬
これは自然葬の一つで、遺骨や遺灰を土に埋めてその上に墓石ではなく苗木を植えて墓標とするもの。自然を壊さない墓地として、最近注目。墓地も墓石も不要のため、従来の墓石墓地の10分の1程度の費用で埋葬することができる。
4.散骨
遺骨を砕いて粉状にした後に海や山中にそのまま撒く埋葬方法。散骨も自然葬の一つになります。散骨というと海洋葬がもっとも知られているが、遺骨を粉末加工する費用以外に業者にお願いして海の沖合に散骨することになるので、自然葬といってもある程度の費用を覚悟しておく必要がある。
(参考:http://納骨堂費用.net/knowledge_burial/burial.html

1987年、石原裕次郎氏が亡くなった時、彼の兄が「海を愛していた弟は、海に還してあげたい」と海洋散骨を計画。しかしながら、「刑法」190条(死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。)と「墓地、埋葬等に関する法律」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO048.htmlに抵触するということで、法務省は認めなかった。しかし、1991年に厚生省は「散骨は、墓埋法の予想した葬法ではないため、同法に抵触することはない」とし、法務省は「節度を持って行われれば、刑法の遺骨遺棄罪に当たらない」と発表。こうして自然葬としての散骨が、「死体遺棄」ではなく、「葬送の一つとして」認められた。これ以降「他人の土地に無断で撒かない」「散骨場所周辺の住民感情に配慮」といったことを遵守するということで、散骨を伴う自然葬は行なわれるようになった。


閑話休題(それはさておき)


合衆国のお墓は一見、公園のように見える。ロングアイランドの大学に車で通っていた頃、夏になると、立ち寄って涼んだことを想いだす。墓地にはプロット(plot)と呼ばれている一画があり、そこへ棺ごと埋葬されるシステムがある。生きているうちに、夫婦でそのplotを2人分購入すると、死後はその区画に夫婦並んで埋葬してもらえる。その他の埋葬形式としては、霊廟のモーソリウム(Mausoleum)と納骨堂のコロンバリウム(Columbarium)がある。

合衆国には葬儀全般を扱う専門家としてフューネラルディレクターがいる。彼らは葬儀の知識に留まらず、メンタルケア(心の問題)に至るまでの広範囲の分野を担当。加えて、墓地の管理者や散骨業者は収支決算書の報告等を州政府の管轄官庁に提出している。

合衆国の葬儀産業についての政治・経済・社会的考察は、黒沢眞里子博士の論文『アメリカの葬儀と墓地 − 「アメリカ的な死の在り方」を考える』が白眉。その結語には以下のようにある。
墓地に所有の概念が持ち込まれ、共同墓地が満杯になれば、墓をリサイクルして使う究極の人間リサイクル文化から、死者の数だけ墓が水平方向に無限に広がる自己の不滅化文化への移行であります。これが今日の、葬儀、墓地のあり方の根底にある問題であります。http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thb0622/nichifutsu.pdf

Stephanie Pappas氏がLive Science Contributor誌上に2011年9月に投稿した記事には、主流となる8つの埋葬法が記されている。「死者の数だけ墓が水平方向に無限に広がる」のを解決できそうだ。
jpg
1)Resomation(リソメーション):
機械を使って3時間足らずで人体を骨と茶色いシロップ状の液体に分解する技術。(写真)Resomation
2)Natural Burial(自然葬):
この自然葬は、防腐処理せずに、自然に生物分解される。名前を刻んだ墓石の下に埋葬するものでもない。
3)Eternal Reefs
コンクリートと残骨灰を混成した人工リーフ(漁礁)
4)Cryonics:人体冷凍保存術 
5)Space Buria:宇宙葬
6)Mummification:ミイラ化
7)Plastination(プラスティネーション):
遺体または遺体の一部(内臓など)に含まれる水分と脂肪分をプラスチックなどの合成樹脂に置き換えることでそれを保存する。
8)Freeze-drying:真空凍結乾燥技術
参考:After Death: 8 Burial Alternatives That Are Going Mainstream

さあ、どの埋葬法になさいますか?

大きな笑顔の佳き夕刻を    感謝


追記)
流れのままに 「父ありき」(2013年12月02日)

追記2)2023年11月22日
姪っ子のYさんから教えていただきました。2016年の合衆国の映画『はじまりへの旅』(Captain Fantastic)は、亡くなった家族本人の遺志に従い火葬にするか、または土葬にするのかが家族のひとつの争点となる作品。コネチカット州グリニッジ生まれのマット・ロス監督(Matt Ross:1970年1月生)が脚本を手掛けました。彼の人生での経験(There’s some autobiographical elements.)をこの作品に反映させたそうです。



793a3e71