合衆国の政治家・軍人であるコリン・ルーサー・パウエル氏(1937年生)とトニー・コルツ氏が著した『リーダーを目指す人の心得』(井口耕二訳・飛鳥新社・2012年)には、メディアにいかに対処すべきかが書かれている。
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1.彼らは質問を選べる。君は答えを選べる。
2.答えたくない質問には答えなくていい。
3.もちろん、ウソやごまかしはいけない。だが同時に、あまりに素直なのもあけすけなのもよくない。
4.未来に関する仮定の質問には答えないこと。
5.上司へ内々に提出した自分の意見を語らないこと。
6.読者や視聴者に受け取ってほしいメッセージになるように答えること。本当の聞き手は質問者ではない。
7.彼らは彼らの仕事をしている。君は君の仕事をしている。ただし、リスクを負っているのは君だけだ。
8.未来について予測や憶測を語らないこと。
9.そこを引用してほしくてわざと使うのでない限り、スラングを使ったり気の利いたジョークを語ったりしないこと。
10.内輪の恥をさらさないこと。
11.賛成できない前提を含む質問には答えないこと。
12.答えたくない質問に無理に答えたり、そういう質問に答えなければならない状況に追い込まれないこと。
13.罠にはまったと思ったら、あいまいなことばをもぐもぐつぶやくこと。
14.せき払いや足の踏み替えをしないこと。
15.答えたあと、追い打ちの質問が来るのはトラブルを意味する−右に旋回する、推力をあげる、高度を取る、緊急脱出をするなどしろ。
16.取材は30分で十分である。これ以上長くなると、自分の言葉に引っかかりはじめる。
17.食事をしながら、報道を前提とした取材を受けないこと。リラックスしすぎて、友だちとおしゃべりをしている気分になってしまう。
18.座りなおしたり、耳たぶをつまんだり、顔に触れたりしないこと。しまったと感じたことがバレてしまう。
19.なにをしゃべろうかと考えて間を空けないこと。すぐにしゃべりはじめ、しゃべりながら考える。しゃべることを思いつかなければ、質問をくり返せばいい。
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 「6.読者や視聴者に受け取ってほしいメッセージになるように答えること。本当の聞き手は質問者ではない」は、いくら強調しても強調しすぎるということはない。


閑話休題(それはさておき)


 今村雅弘復興大臣の東京電力福島第1原発事故に伴う自主避難者への対応を巡る発言がテレビジャーナリズムを中心に問題視されている。そこで、復興庁のサイトに掲載の「今村復興大臣閣議後記者会見録(平成29年4月4日)」を確認した。質問者であるフリーランスの記者は、「自主避難の人」の範疇に福島県からの人々に加えて、栃木・群馬・千葉からの自主避難者をカウントしている。今村大臣の『基本的にはやはり御本人が判断をされることなんですよ。』と言う発言の本意は、福島県以外の栃木・群馬・千葉からの自主避難者に対してなされたもの。
 本記者会見の「発言要旨」で彼は『放射線に対するリスクコミュニケーションでありますが、これについては今、官民合同で広範に力強くアピールといいますか、広報をしっかりやって風評対策にまた努めていきたいというふうに思っております。』と述べている通り、今も風評被害に苦しんでいる福島県の実情を知っている。
 フリージャーナリストは『判断ができないんだから、帰れないから避難生活を続けなければいけない。それは国が責任をとるべきじゃないでしょうか。』と問いただしているが、栃木・群馬・千葉からの自主避難者に対して、なぜ私たちの税金を使う必要があるのか?使うべきなのか? そこは争点となるところだ。しかしながら、本記者会見はそのようなことを論争する場ではない。だから、以下の問答が、紳士的になされた。
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(問)自主避難の人にはお金は出ていません。
(答)ちょっと待ってください。あなたはどういう意味でこういう、こうやってやるのか知らないけど、そういうふうにここは論争の場ではありませんから、後で来てください。そんなことを言うんなら。
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 この後の4つの質疑応答で、大臣は感情的になってしまい、センセーショナルにテレビで報道される結果を導いてしまった。極めて良心的にまともな返答をしている大臣に対して、フリージャーナリストは執拗に「栃木・群馬・千葉からの自主避難者」への国の責任を問うのであった。現場にいた復興庁の事務方は早急に彼の「質疑」を打ち切ると良かった。大臣は紳士的に『そういうふうにここは論争の場ではありませんから、後で来てください。』と言ってたのだから。氣を利かせて欲しかった。あり得ない最後の4つの質疑応答を許した事務方の不甲斐なさに驚きを禁じ得ない。復興庁の事務方の皆さん、シッカリと現場を仕切って大臣をサポートなさって下さい。お願いします。
 それでは、本記者会見の全文をお楽しみください。
今村復興大臣閣議後記者会見録(平成29年4月4日(火)1000〜1015 於)復興庁記者会見室)
1.発言要旨
 おはようございます。それでは、早速ですが、私から1点申し上げさせていただきます。
 いよいよ新年度になりました。一言抱負を申し上げたいというふうに思います。
 地震、津波被災地域については、生活インフラの復旧はほぼ終了し、住まいの再建も来年春までには9割以上が完成する見通しであり、復興は着実に進展していると思っております。また、いろいろ復興道路等々の方も着実に進んでいるというふうに思っております。2020年度までに地震、津波の被災地域の復興をやり遂げるという強い意志を持って、引き続き復興を加速していきたいというふうに思います。
 それから、福島についてでありますが、川俣町、浪江町、飯舘村、それから富岡町では3月31日、そして4月1日で避難指示が解除され、これから本格的に復興再生に向けた動きが始まっていくことになります。是非戻りたい方がまた戻れるように、帰還に向けた医療、介護、教育等の生活環境の整備について、一層の推進を図っていきたいというふうに思っております。
 また、帰還困難区域についても、今後5年を目途に居住可能を目指す特定復興再生拠点を整備していくことになります。このため、本日から始まる福島復興再生特別措置法改正のための国会、今日、本会議で趣旨説明、それから質疑、その後、委員会で提案理由説明をやりますが、そういった審議の方をしっかり対応して早期成立に尽力して、できるだけ早くいろんな効果が出るように頑張っていきたいというふうに思っております。
 それから、復興・創生期間でいきますと、2年目に入るわけでありますが、インフラなどのハード面での復興を着実に進めていくとともに、コミュニティー形成や生き甲斐づくりなどの心の復興や産業、生業(なりわい)の再生など、ソフト面での復興にも喫緊に取り組んでいきたいということであります。
 平成29年度予算を十分に活用して、被災者の方々が置かれている様々な状況に応じた、切れ目のない被災者支援、そして2点目で、産業、生業の再生を図るための人材確保対策の支援や様々な企業立地支援策のアピール、これは全国的に力を入れてやっていきたいというふうに思っております。
 それから、福島への教育、旅行の強化、インバウンドの推進などによる観光の推進。
 それから、放射線に対するリスクコミュニケーションでありますが、これについては今、官民合同で広範に力強くアピールといいますか、広報をしっかりやって風評対策にまた努めていきたいというふうに思っております。  
 今日、新聞で見たんですが、入社式といいますか、そういう中で富岡町に10人、それから浪江町に8人、川俣町に6人の職員が入られたということもありまして、大変私もうれしく思っております。こういう若い人たちが、ふるさとの再生のために頑張っていただけるというのは大変力強く思っておりますし、また改めてしっかり御支援をしていきたいというふうに思っております。
 私の方からは以上です。
2.質疑応答
(問)今、お話があったように、31日に避難区域が解除され、そして、自主避難者の方の住宅の無償提供も打ち切られましたけれども、その週に、先週になるわけですが、避難者を中心にした全国の16の団体の方が安倍首相、それから松本内閣府防災担当大臣、それから今村復興大臣宛てに避難用住宅の提供打切り撤回と避難住宅の長期無償提供を求める署名というのを提出されました。2次署名分で約2万3,000筆、それから1次と合わせると8万7,000筆近くになる署名を提出されたんですけれども、大臣はこの署名について、申入れ内容について把握されていらっしゃるでしょうか。
(答)まだ確認はしていません。

(問)ああ、そうですか。その中で、やはり3月17日の前橋地裁の国とそれから東電の責任を認める判決が出たわけですけれども、国と東電は3月30日に控訴されました。ただし、同じような裁判が全国で集団訴訟が起こっておりますし、原発は国が推進して国策ということでやってきたことで、当然、国の責任はあると思うんですが、これら自主避難者と呼ばれている人たちに対して、国の責任というのをどういうふうに感じていらっしゃるのかということを、国にも責任がある、全部福島県に今後、今まで災害救助法に基づいてやってこられたわけですけれども、それを全て福島県と避難先自治体に住宅問題を任せるというのは、国の責任放棄ではないかという気がするんですけれども、それについてはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか、大臣は。
(答)このことについては、いろんな主張が出てくると思います。今、国の支援と言われますが、我々も福島県が一番被災者の人に近いわけでありますから、そこに窓口をお願いしているわけです。国としても福島県のそういった対応についてはしっかりまた、我々もサポートしながらやっていくということになっておりますから、そういうことで御理解願いたいと思います。

(問)福島県の近隣、関東から関西方面ですとか、日本全国に避難されている方もいらっしゃると思うんですが、全て福島県を通すということ自体がもともと今の自主避難の実態に合わないんじゃないかなという気がするんですけど、やはり国が子ども・被災者支援法に基づいて、しっかり対策をもう一度立て直す必要があると思うんですが、それについてはどうお考えでしょうか。
(答)それは今、言いましたように、福島県がいろんな事情、現地の事情等、そういったことも詳しいわけですから、そこにお願いして、それを国がサポートするというこの図式はこのままいきたいというふうに思っております。

(問)昨日、復興庁から被災者支援総合交付金第1回の配分が発表されたかと思うんですが、今回の配分について、どのような趣旨で行ったかというところの見解をお聞きしたいんですが。
(答)これは従来からもそうですけれども、できるだけさっき言った趣旨にのっとって、復興の加速化、特にソフト面、そういったところに力を入れてやっていくということで、具体的な項目等には皆さん、お手元に行っているかな。それで見てください。

(問)ソフト面の強化ということですか。
(答)特にそれを重点に置きたいと思います。

(問)今月で熊本地震から1年たちますけれども、東北の復興を手掛けている復興庁として、熊本地震の被災地に何か取り組まれるというか、お考えはありますでしょうか。
(答)熊本については、いろいろインフラの関係は国土交通省とか農林水産省が中心にやって、それで対応できていたと思います。それに加えて、いろいろ災害公営住宅の建設の仕方とか、いろんな寄り添いといいますか、そういったソフト面での対応については、復興庁が得た知見をそれぞれ熊本県なり何なりにも提供しながら、今までもやってきたつもりであります。ですから、もうちょっとで1年云々ということなんでしょうが、今のところ、何とかうまく行っているんじゃないかなというふうには思っていますけどね。いろいろとそのときによってまた新しい問題が出てきますから、そういうときには我々が提供できる、あるいは、指導できる面はもちろんやるつもりです。

(問)以前に、熊本地震のアーカイブみたいなものをつくりたいというふうにおっしゃっていたと思うんですけど、その辺りは分かりますか。
(答)ええ、これは熊本に限らず、東北の方でもそういう動きがあるわけですから、随時、更に加えてまた熊本の分も含めて、要するに、いざというときにどうしたらよかったのか、何がまずかったのか、そういったものを総括したものを、いろんな形でまた日本全国にアピールできるようなこともやらなきゃいけないかなというふうに思っておりまして、これはまた松本大臣ともよく相談して進めていきたいというふうに思います。

(問)それは内閣府が去年の12月に熊本地震の生活支援の在り方、また、ワーキンググループが報告書をまとめていますけれども、それとはまた別にということですか。
(答)それも参考にしながら、そして、またそれにもう一つ東北の分も加味しながらやっていった方がいいんじゃないかなと。いずれにしろ、これから先に日本列島が非常に、何て言いますか、動き出したと言ったら変ですけれども、そういった状況の中で危機管理というものを、そういった意識を強めて、また、体制もしっかりやらなければいけないなということを、私も最近つくづくそういうふうに感じていますから、またいろいろそういうことはより今後の参考になるようにというつもりでやっていきたいというふうに思っております。
 いざやっぱり大きな災害が起きると、非常に人命も損なわれるし、いろんな社会資本も大変傷みます。そうならないようにできるだけ防災、減災に力を入れるということが、結果的には、お金も掛からないという感じを私も強くしていますので、そういった言ってみれば強靱化といいますか、そういったことにも我々も復興庁の権限を生かしてまとめ上げていきたいというふうに思っているところです。

(問)福島県、福島県とおっしゃいますけれども、ただ、福島県に打切りの、これは仮設住宅も含めてですけれども、打切りを求めても、この間各地の借り上げ住宅とか回って、やっぱりその退去して福島に戻ってくるようにということが福島県の、やはり住宅設備を中心に動いていたと思うんですが、やはりさっきも言いましたように、福島県外、関東各地からも避難している方もいらっしゃるので、やはり国が率先して責任をとるという対応がなければ、福島県に押し付けるのは絶対に無理だと思うんですけれども、本当にこれから母子家庭なんかで路頭に迷うような家族が出てくると思うんですが、それに対してはどのように責任をとるおつもりでしょうか。
(答)いや、これは国がどうだこうだというよりも、基本的にはやはり御本人が判断をされることなんですよ。それについて、こういった期間についてのいろいろな条件付で環境づくりをしっかりやっていきましょうということで、そういった住宅の問題も含めて、やっぱり身近にいる福島県民の一番親元である福島県が中心になって寄り添ってやる方がいいだろうと。国の役人がね、そのよく福島県の事情も、その人たちの事情も分からない人たちが、国の役人がやったってしようがないでしょう。あるいは、ほかの自治体の人らが。だから、それは飽くまでやっぱり一番の肝心の福島県にやっていっていただくということが一番いいというふうに思っています。
 それをしっかり国としてもサポートするということで、この図式は当分これでいきたいというふうに思っています。


(問)それは大臣御自身が福島県の内実とか、なぜ帰れないのかという実情を、大臣自身が御存じないからじゃないでしょうか。それを人のせいにするのは、僕はそれは……。
(答)人のせいになんかしてないじゃないですか。誰がそんなことをしたんですか。御本人が要するにどうするんだということを言っています。

(問)でも、帰れないですよ、実際に。
(答)えっ。
(問)実際に帰れないから、避難生活をしているわけです。
(答)帰っている人もいるじゃないですか。
(問)帰っている人ももちろんいます。ただ、帰れない人もいらっしゃいます。
(答)それはね、帰っている人だっていろんな難しい問題を抱えながらも、やっぱり帰ってもらってるんですよ。
(問)福島県だけではありません。栃木からも群馬からも避難されています。
(答)だから、それ……
(問)千葉からも避難されています。
(答)いや、だから……
(問)それについては、どう考えていらっしゃるのか。
(答)それはそれぞれの人が、さっき言ったように判断でやれればいいわけであります。
(問)判断ができないんだから、帰れないから避難生活を続けなければいけない。それは国が責任をとるべきじゃないでしょうか。
(答)いや、だから、国はそういった方たちに、いろんな形で対応しているじゃないですか。現に帰っている人もいるじゃないですか、こうやっていろんな問題をね……。
(問)帰れない人はどうなんでしょう。
(答)えっ。
(問)帰れない人はどうするんでしょうか。
(答)どうするって、それは本人の責任でしょう。本人の判断でしょう。
(問)自己責任ですか。
(答)えっ。
(問)自己責任だと考え……。
(答)それは基本はそうだと思いますよ。

(問)そうですか。分かりました。国はそういう姿勢なわけですね。責任をとらないと。
(答)だって、そういう一応の線引きをして、そしてこういうルールでのっとって今まで進んできたわけだから、そこの経過は分かってもらわなきゃいけない。
 だから、それはさっきあなたが言われたように、裁判だ何だでもそこのところはやればいいじゃない。またやったじゃないですか。それなりに国の責任もありますねといった。しかし、現実に問題としては、補償の金額だって御存じのとおりの状況でしょう。
 だから、そこはある程度これらの大災害が起きた後の対応として、国としてはできるだけのことはやったつもりでありますし、まだまだ足りないということがあれば、今言ったように福島県なり一番身近に寄り添う人を中心にして、そして、国が支援をするという仕組みでこれはやっていきます。


(問)自主避難の人にはお金は出ていません。
(答)ちょっと待ってください。あなたはどういう意味でこういう、こうやってやるのか知らないけど、そういうふうにここは論争の場ではありませんから、後で来てください。そんなことを言うんなら。

(問)責任を持った回答をしてください。
(答)責任持ってやってるじゃないですか。何ていう君は無礼なことを言うんだ。ここは公式の場なんだよ。
(問)そうです。
(答)だから、何だ、無責任だって言うんだよ。
(問)ですから、ちゃんと責任……
(答)撤回しなさい。
(問)撤回しません。
(答)しなさい。出ていきなさい。もう二度と来ないでください、あなたは。

第3次安倍第2次改造内閣 閣僚等名簿
復興大臣
福島原発事故再生総括担当
今村 雅弘 (いまむら まさひろ)
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生年月日
昭和22年1月5日
出身地
佐賀県
衆議院議員
当選7回

今村大臣が、パウエル氏のように強(したた)かに「冷静であれ。親切であれ。」と自戒の言葉をご自分の中に持っていたら、違った結果を導いたであろう。件のフリージャーナリストは西中誠一郎氏で、彼はご自身のジャーナリストとしての良心と信念に忠実に発言なさっている。

(明日に続く)

参照:http://www.videonews.com/commentary/170408-01/

※追記(平成29年4月28日午前6時45分)
この方は、復興相という立場にありながらも避難者と被災地との一体感及び連帯意識が異常なほどに希薄な人物にして、上記の「6.読者や視聴者に受け取ってほしいメッセージになるように答えること。」への学習能力が欠けている。しかしながら、彼は任命責任を問われるべき安倍首相のスケープゴート(身代わり)としては十分に機能しているかのようだ。更迭に相当するのは彼ばかりではない。例えば、鶴保庸介・沖縄北方相は昨年11月8日、沖縄県東村の合衆国軍ヘリパッド建設現場付近で、大阪府警の機動隊員が抗議活動をしている人に「土人」と発言した問題について「『土人である』と言うことが差別であるとは個人的に断定できない」と述べている。そして今月4月11日の記者会見で彼は、合衆国軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、移設中止を求める県の動きを念頭に「ポジショントーク(自己の利害関係や損得勘定のみを重視した発言)するような向きも、ないではないかもしれない」と述べ、反対の声を上げて「気持ちよかったね、と終わったんじゃ意味もない」と人々を蔑(さげす)んでいる。安倍首相の任命責任が問われる時期がきている。加えて、今回の復興相辞任には予期せぬ効能があった。今も福島では仮設住宅に暮らす人々がいるという被災地の現状をテレビカメラが全国に映し出してくれたこと。後任の吉野正芳復興相とともに、今まで以上にテレビカメラが被災地に入り、現状を全国のお茶の間に知らせてほしい。被災地の現状は日本の政治の縮図であり、私たち民衆の目覚めを促進する効能がありそうだ。
今村復興相 辞任の意向固める
(NHK 4月25日 21時25分)
 今村復興大臣は自民党の派閥のパーティーで、東日本大震災の復興に関連して、「まだ東北のほうだったから、よかった」などと、被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして、復興大臣を辞任する意向を固めました。安倍総理大臣は、国会審議などへの影響を最小限に抑えるため、速やかに後任人事の調整を進めるものと見られます。
 今村復興大臣は25日夜、みずからが所属する自民党二階派のパーティーで講演し、東日本大震災に関連して、「社会資本などの毀損も、いろんな勘定のしかたがあるが、25兆円という数字もある。これは、まだ、東北のほうだったからよかったが、もっと首都圏に近かったりすると、ばく大な額になる」と述べました。
 今村大臣はその後、発言を撤回し、謝罪しましたが、このあと同じパーティーに出席した安倍総理大臣は、「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言で、総理大臣として、おわびをさせていただきたい」と述べ、陳謝しました。
 これに対して、野党側からは「被災者の心を傷つける暴言だ」などとして、今村大臣の辞任を求める声が出ていました。
 こうした中、今村大臣は被災者を傷つける発言をした責任を取りたいとして、復興大臣を辞任する意向を固めました。
 今村大臣は、衆議院比例代表九州ブロック選出の当選7回で、70歳。外務政務官や農林水産副大臣のほか、衆議院東日本大震災復興特別委員長を務め、先の内閣改造で、復興大臣として入閣しました。
 今村大臣は今月4日の記者会見で、いわゆる自主避難者が帰還するかどうかは自己責任だなどという認識を示したほか、記者に「うるさい」などと述べ、その後、撤回していました。
 安倍総理大臣は政権運営や国会審議などへの影響を最小限に抑えるため、速やかに後任人事の調整を進めるものと見られます。

宮城県知事「辞任は残念」
 宮城県の村井知事は「今村大臣は、これまで復興に尽力して下さっていたのでみずからの発言で辞任するのは残念です。次の人は被災地に寄り添ってほしい」と話しました。

南三陸町長「後任は被災3県選出の議員に」
 宮城県南三陸町の佐藤仁町長はNHKの取材に対し「悪意があったわけではないと思うが、復興大臣として適切な発言かどうかは見極めてほしかった。これまでの失言も含めると、被災地の人の中には不快な思いをした人もいたと思うので、辞任はやむをえないのではないか」と述べました。
 また、後任の復興大臣については「震災から6年がたち風化も懸念されている中で、もう一度原点に戻るためにも、被災地のことをよくわかっている被災3県選出の議員に大臣になってもらいたい」と述べました。

南相馬市長「冒とくと言わざるをえない」
 原発事故に伴う避難指示の大部分が去年7月に解除された福島県南相馬市の桜井勝延市長は「なぜ、復興大臣から、このような発言が出るのか。震災で多くの人が亡くなり、崩壊しそうな地域もある。こうした人たちへの冒とくだと言わざるをえない」というコメントを出しました。
 一方、今村大臣が大臣を辞任する意向を固めたことについては「コメントする立場にない」としています。

今村復興相辞任へ“2度目の失言”巡る動き
(日テレNEWS24 2017年4月26日 02:45)
 25日夜、安倍内閣に激震が走った。今村復興相が、東日本大震災について「まだ東北で良かった」などと述べ、度重なる失言により辞任の意向を固めた。今村復興相の発言を巡る、これまでの動きをまとめた。
 25日午後10時前、辞任する意向を固めた今村復興相が復興庁の自室にいるとの情報を受け、報道陣が集まった。しかし、今村復興相は報道陣の目を避け、すでに復興庁を後にしたという。
 25日夜、今村復興相から報告を受けた二階幹事長。
 自民党・二階俊博幹事(午後10時前)「『責任を取ってこの際、辞任したいという意向を固めている』、その心境についてお話がありましたから」「誠に残念なことであります。辞表提出、やむを得ないと、そういう気持ちです」
 自民党内からも憤りの声があがる。
 自民党・竹下亘国対委員長(午後9時45分頃)「私はかつて復興相を経験した。被災者の皆さん方の気持ちを思うと、なんでこんなこと言ったんだろうという怒りに近い感情を覚えました」
 今月4日、福島県などからの自主避難者について「自己責任」との認識を示したことを巡り、記者に激高、その後、陳謝したばかりの今村雅弘復興相。25日、再び“失言”を発した。
 それは、所属する派閥のパーティーでのことだった。午後5時半頃、笑顔で「復興大臣、今村雅弘でございます。いろいろお騒がせしております」という挨拶から始まった講演。東日本大震災について説明をしていた。
 話が「経済的な損失」に及ぶと、問題の発言が飛び出した。大震災が「まだ東北だったから良かった」と発言したのだ。
 今村復興相「また社会資本等の毀損(きそん)も、いろんな勘定の仕方がございますが、25兆円という数字もあります。これはまだ東北でですね、あっちの方だったから良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)なですね、甚大な被害があったというふうに思っております
 この後午後6時半頃に登壇した安倍首相は、開口一番、おわびをし、発言の火消しにおわれた。
 安倍首相「まず冒頭ですね、安倍内閣の今村復興大臣の講演の中におきまして、東北の方々を傷つける、極めて不適切な発言がございましたので、総理大臣としてまずもって、冒頭におわびをさせていただきたいと思う次第でございます
 2011年3月11日、死者・行方不明者は1万8400人あまりという未曾有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災。その復興に当たるべき閣僚が、「まだ東北だったから良かった」との発言。被災地では─。
 「ひどいこと言っちゃったね、その大臣さんね。クビ!」「どこだって災害起きればね、中央だったって地方だったって一緒だからね。被災者が出るわけだから」(岩手・大船渡市)
 「東北のことをどう思っているんですかね」「結局ひとごとなんでしょうね、おそらく」(宮城・石巻市)
 「私も福島にいて震災を経験していますので、上に立つ人ですからしっかり物事を考えて、慎重に発言してほしいと思いますけどね」(福島・郡山市)
 一方、都内で聞くと、やはり「ありえない」との声が相次いだ。
 「ありえないです、本当に」(埼玉県出身)
 「新潟でも大きな震災を2度ほど経験しているので、同じ発言をされたら憤る部分があったと思う」(新潟県出身)
 “東北で良かった”発言から約30分後の午後6時頃、今村復興相は記者団に囲まれた。
─発言の真意は?
 今村復興相「すみません、これはですね、東北でもあんなにひどい25兆円も毀損するような災害があったと。ましてやこれが首都圏に近い方だったら、もっととんでもない災害になっているだろうという意味で言いました」
─“あっちの方で良かった”と?
 今村復興相「ああ…」
─(震災は)東北で良かったと取られかねないが?
 今村復興相「決してそんなことはありません」
─被災地のことを思っていないという声には?
 今村復興相「決してそんなことはありません」
 「そんなことはない」を繰り返したが、ついには「撤回すべきということであれば撤回しておきます」と述べた。
 しかし、秘書官からメモを差し出されると、「いずれにしろ、そういったことで、皆さん方にご心配いただきましたことにつきましては、改めましてしっかりとおわびを申し上げます」と述べ、謝罪した。
 さらに1度目の謝罪から1時間後の午後7時すぎ、今度はうつむきがちに再びカメラの前に立つと、深々と頭を下げた。
 今村復興相「さきほどの講演の中で、私の大変不適切な発言、表現につきまして深く反省し、皆さま方におわび申し上げます。申し訳ありません」
─東北の方へメッセージを。
 今村復興相「私の不適切な発言で皆さま方を傷つけたことを深く深くおわび申し上げます。申し訳ありません」
 しかしこの時点では、辞任は否定した。
─大臣を辞任する考えは?
 今村復興相「いや、そこまでまだ及んでおりません」
 しかし野党は─。
 民進党・福山幹事長代理「即刻辞任していただくしかないと思うし、復興大臣としても、国会議員としても、私はこの方は適切ではないと思います」
 与党の公明党からも、2度目の失言で、辞任すべきとの声が強まっていた。
 公明党・大口国対委員長「政治家としてしっかり自らのこのあり方について、出処進退についてよく考えるべきであると思います」

(以上)