富士に白鳥
1949年、京都在住の一民間人・林正治氏(当時42歳)は「年賀状が戦前のように復活すれば、お互いの消息もわかり、うちひしがれた気分から立ち直るきっかけともなる」と考え、お年玉くじを付ければ皆が買ってくれ、寄付金も付ければ社会福祉にも役立つと考える。<年賀状に賞品の当たるくじをつける。> <料金には寄付金を付加し社会福祉に役立てる。>のアイデアをもとに自ら見本のはがきや宣伝用のポスターをつくり、彼は大阪の郵便局で郵政大臣への紹介状を書いてもらい、上京して郵政大臣などと面会。戦後の混乱期でもあり時期尚早と却下されるも、彼は諦めず粘り強く交渉を続ける。結果、「お年玉つき郵便葉書等の発売に関する法律」が1949(昭和24)年11月14日に公布されるのであった。なんと、素的なことではありませんか。ひとりの全力が、多数の人々を動かして、社会を最適化(調和)したのですから。
参考:年賀状博物館

東証1部上場の日本郵政株式会社(6178 業種:サービス)は、子会社として日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険・日本郵政スタッフ・日本郵政インフォメーションテクノロジー等を持つ。日本政府が8割強の株を保有する総務省所管の特殊会社。この会社が日本人全体が出す年賀状の2年半分に相当する約4,000億円の損失を減損処理する。その後の減価償却の実施に際し、残存耐用年数は見直さず、残存価額をゼロに修正するのだろうか。興味あるところだ。

1888年創業の豪州トール・ホールディングスを一昨年の15年5月に買収した当時、社長であった西室泰三元東芝社長は15年11月上場を控え、その買収でグループ企業の価値増大を図った。その結果が、これなのだ。日本国内での「年賀状などの郵便物の取扱量が減少していること」と「日本だけでは成長が壁に当たり、やはり海外には出ざるをえない」ことはトレイドオフの関係にあるのだろうか。林正治氏のように全力で、知恵を働かせたい。高齢化と過疎化が進む地域の郵便局とそこで働く方々は全力で地域振興に尽力している。一部トップ経営陣が根無し草になってしまい、外国に期待を寄せている。作為的な不振を思わせるトール・ホールディングスの再建には横やりが入るだろうから、国際的に評価されている経営者のみが当社を利益体質に改善できる。はたして日本郵政の経営陣には、外国勢と全力で渡り合い現状を調和(最適化)する人物はいるのだろうか。
参考:『日本郵政のM&A損失額は年賀状2年半分』(ニュースイッチ 2017年04月26日)
1.減損損失の計上について当社では、国際物流事業(豪州トール社)に係る損益見通しを見直した結果、将来キャッシュ・フローが大幅に減少する見込みとなったことから、平成29 年3月期の連結決算において、同事業に係るのれん及び商標権の全額3,923 億円並びに有形固定資産の一部80 億円を減損損失として計上することとなりました。
(中略)
5.連結子会社(日本郵便)単体業績における関係会社株式評価損の発生
上記1.と同様の理由により、当社の連結子会社である日本郵便単体業績において、トール社株式に係る関係会社株式評価損約5,450 億円を特別損失として計上することとなります。
なお、当該関係会社株式評価損は、日本郵便単体業績のみに計上され、当社グループ連結及び当社単体業績への影響はありません。

日本郵便、豪トール買収でのれん5000億円超計上 15年6月末
(日経 2015/8/7付)
 日本郵便が5月末に買収したオーストラリア物流大手トール・ホールディングスにおいて、買収に伴うのれん5321億円が発生したことが7日、わかった。同日発表した2015年6月末の連結貸借対照表で明らかになった。日本郵便は国際物流を強化するため約6000億円でトール社を買収し収益力の強化を目指す一方で、のれんの償却が重荷となる。
 のれんの償却は20年で行っていく方針だという。単純計算で、日本郵便は年間でのれん償却費の約250億円が負担になる。日本郵便の15年3月期の経常利益は220億円、親会社の日本郵政の経常利益は1兆1158億円だった。日本郵便は5月末にトール社を買収、6月末をみなし取得日とすることから、15年7〜9月期から損益計算書に取り込む。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

日本郵政 4003億円の損失計上へ 豪買収企業の業績悪化で
(NHK 4月25日 18時04分)
 日本郵政はおととし買収したオーストラリアの物流企業の業績が悪化していることから、昨年度の決算でおよそ4000億円の損失を計上すると発表し、平成19年の民営化後初めて最終赤字に転落する見通しとなりました。
 発表によりますと日本郵政は、傘下の日本郵便を通じておととし買収したオーストラリアの物流最大手トール・ホールディングスの業績が悪化していることから、昨年度のグループ全体の決算で4003億円の損失を計上するということです。
この損失は当時のトールの買収額、およそ6200億円に対して業績の悪化で目減りした資産価値を反映させるためのものです。
 これによって日本郵政はこれまで3200億円としてきた昨年度の最終的な利益の予想を下方修正し、400億円の最終赤字になる見通しを明らかにしました。日本郵政が最終赤字になるのは、10年前、平成19年の民営化後初めてです。
 トールの業績悪化を受けて、日本郵政は、今年度中にトールの従業員のおよそ4%に当たる1700人の人員削減を進めることで業績の立て直しを急ぐ方針です。
 そのうえで、経営責任を明確化するため、日本郵政の長門正貢社長の役員報酬を6か月間、20%カットするのをはじめ、日本郵政と傘下の日本郵便の全役員の報酬の一部をカットするとしています。
 海外事業の買収をめぐっては、経営再建中の東芝が買収した原子力事業会社ウェスチングハウスの経営破綻で1兆円を超える巨額損失を計上する可能性を公表するなど、買収にあたって企業の価値をどう判断するかが問われています。

甘いリスク見通し 否定難しい
 日本郵政の長門正貢社長は記者会見で「リスクの見通しが甘かったという批判もあるが、否定するのは難しい。負の遺産を根本から一掃して、成長路線に戻れるように精進したい」と述べ、トールの買収を決めた当時の経営判断について、見通しが甘かったという認識を示しました。
そのうえで、「戦略方針はいささかも変わっていない。トールをグローバル展開の中核と位置づけ、経営改善策を実行していく。日本だけでは成長が壁に当たり、やはり海外には出ざるをえない」と述べ、事業の海外展開を進めていく方針に変わりがないことを強調しました。

トールの業績 買収以降低迷続く
 トールの業績はおととし、日本郵政が日本郵便を通じて買収して以降、低迷が続いています。買収する1年前、2014年度の決算では、本業のもうけを示す営業利益は299億円でした。
しかしその後、鉄鉱石などの資源価格が大きく下落した影響で、オーストラリア国内の景気が低迷し、トールの業績も悪化します。
2015年度の決算では営業利益が42%減って172億円、また、昨年度は12月までの9か月間で66億円となり、落ち込みが顕著となっていました。


日本郵便の収益強化が課題
 日本郵政は直近の決算で最終的な利益が20%以上減少していますが、中でも、コストがかかる郵便や物流事業を行っている日本郵便の収益基盤をいかに強化するかが課題となっています。
 去年4月から12月までの9か月間の決算で、日本郵政グループの最終利益は前の年の同じ時期と比べて22%減って2966億円となり、グループ各社とも決算は減益となっています。
このうち日本郵便は年賀状などの郵便物の取扱量が減少していることから、最終的な利益は前の年の同じ時期と比べて36%の大幅な減少となりました。
 日本郵便の事業は国内では、郵便物や荷物の宅配などの「郵便・物流事業」と、郵便局の窓口で投資信託や保険などを販売する「金融窓口事業」の大きく2つに分けられますが、郵便・物流事業はコストがかかり利幅が小さいため、日本郵便のもうけの大半は金融窓口事業が出しています。
営業利益の内訳では、金融窓口事業は454億円だったのに対して、郵便・物流事業は21億円にとどまっています。
 また郵政民営化以降、グループ3社のこれまでの最終利益を比較した場合、民営化から2年目の平成21年度以降は、常に最も少ない状態が続いています。このため、トールの買収によって日本郵便の収益基盤を強化することを目指していました。


静かな深夜の札幌にて   感謝