厚生労働省が昨日公表した「一般職業紹介状況(平成29年4月分)について」を見ると、4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48。平成二年七月に記録したバブル期の最高値1.46倍を超え、昭和四十九年二月以来、43年2カ月ぶりの高水準と報道された。求人倍率は、ハローワークに申し込んだ求職者1人当たりの求人数を示す。
 総務省が昨日公表した「労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)4月分(速報)」によると、平成十六年度平均の就業者数は66万人増の6,479万人、失業者数は15万人減の203万人。雇用形態別では、正社員数は47万人増の3,388万人、非正規社員数は30万人増の2,024万人であった。しかしながら、すべての産業で求人が増えてはいるが、正社員の求人倍率は0.89倍と求職者1人当たりの求人は0.89人と低調だ。このポイントを強調した「記録更新の低水準」との報道は見当たらなかった。

 このような有効求人倍率などの数値を導き出す制度は、「より労働しない自由(FOLL: freedom of less labour / work)」が普及すると別の指標にその地位を奪われる。FOLLの必要条件は、住宅と水と食料のコスト逓減。人工知能が人間の知能を超える環境が、FOLLの必要十分条件とは限らない。(※FOLLはFOMC: freedom of more Calling / Beruf / vocatio と同義であり、人類の目的である)

 これからの行政は協調性や独創性が必要とされる非定型な業務となり、将来においても人が担いつづけることになる。しかしながら、以下のような現実を見ると、技術的には人工知能等で代替可能で、人よりも評価に値する結果を出してくれそうな気がする。「自治体に家賃に関する説明義務はないが、(中略)意図的に伝えなかったわけではない」というような意味不明な日本語は不要で、「自治体に家賃に関する説明義務を新たに導入するなどして、入居者とのコミュニケーションを意図的に向上させていきたい」くらいは言って欲しかった。血の通った人なのですから。
<災害公営住宅>家賃引き上げ「寝耳に水」(河北新報 5/28(日) 10:00配信)
 東日本大震災の被災者が入居する仙台市内の災害公営住宅の家賃引き上げを巡り、入居者が反対の署名活動を展開するなど反発を強めている。入居6年目以降、家賃が段階的に上がることを市側が伝えていなかったためで、家賃が3倍になる入居者もいるという。
 市は2012年、災害公営住宅の入居者募集に際し、「10年間は家賃が(通常より)安くなる」と書面で通知した。以後、家賃の引き上げについて具体的な説明はなく、今年3月、市が全戸配布した文書で初めて家賃が上がることを知らされたという。
 市営住宅管理課の西本憲次課長は「自治体に家賃に関する説明義務はないが、住民に対する配慮が足りなかった。説明会は入居手続きを紹介するもので、意図的に伝えなかったわけではない」と釈明した。
 国の東日本大震災特別家賃低減事業によって、災害公営住宅の入居者は入居から10年間、収入に応じ家賃の減免措置を受けられる。最初の5年間は家賃が据え置かれるが、6年目以降は段階的に引き上げられ、11年目以降、本来の家賃を支払うことになるという。
 制度を知らされていなかった入居者にとって、家賃引き上げは「寝耳に水」。今月下旬、市内の災害公営住宅の自治会長ら27人が呼び掛け人となり、引き上げ中止など4項目を市に要望する署名活動を始めた。
 太白区のあすと長町災害公営住宅自治会「ひまわり会」の菅原勝典代表(58)は「家賃は重要な要素で、入居前に説明するのが筋だ」と批判。あすと長町第2災害公営住宅の薄田栄一自治会長(64)は「年金暮らしの入居者が多く、家賃引き上げは生活を直撃する」と入居者の不安を代弁した。

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閑話休題(それはさておき)


 「日本出版配給株式会社」が設立されたのは昭和十六年五月五日のことで、全国の出版物取次業者240余社を強制的に統合して一元的配給会社としたものであった。この日本の出版取次を独占する国策会社は、「日配(にっぱい)」と呼ばれた。当時の出版物は、情報局による検閲を受けた後、奥付に配給元の日配と出版社の住所を明記しなければ日配は配本せず、言論統制の一翼を担った。昭和十八年九月一日に統制会社令(昭和十八年勅令第784号)第3條第2項の規定に基づき「日本出版配給統制株式会社」に改組。
 先の大戦後の昭和二十年、GHQは検閲を始める。同年九月十日の「言論及ビ新聞ノ自由ニ関スル覚書」(SCAPIN-16)や九月二十一日の「日本ノ新聞準則ニ関スル覚書」(SCAPIN-33)等を以て、民間検閲支隊により事前・事後の検閲を行い、反占領軍的(占領軍に不都合)と判断した内容を書き換えさせた。昭和二十一年十月一日、日配は日本出版配給株式会社に改称する。昭和二十四年三月二十九日、GHQから閉鎖機関の指定を受け活動を停止。翌年九月、 日配を母体とする出版取次である大阪屋・日本出版販売・東京出版販売・日本教科図書販売が相次いで創業する。GHQが日本を占領した昭和二十年九月二日から昭和二十七年四月末日まで、戦中同様に言論統制が続けられた。
 出版社の新刊の多くが、これら少数の取次会社に搬入されてそこから全国の書店に配本される。この中央集権型の出版流通システムをGHQは巧く利用した。

 日本では欧米流の書店が新刊本を事前に仕入れる制度や直接メーカーから仕入れて値引きして売る慣習があまりない。しかしながら、出版取次を介した日本独自の「返本制度」があり、書店に置かれた本は買取ではなく、取次からの委託であり、仮に売れなくても書店はリスクを負わなくて済む。
 インターネット通販大手のアマゾンジャパンは日本における出版と流通を再定義し始めたようだ。
アマゾン、本の直接取引拡大へ…取次介さず
(読売 05月26日 08:09)
amazon本の仕組
 インターネット通販大手のアマゾンジャパンが、出版物の一部取引について出版取次大手、日本出版販売(日販)を通さずに直接、出版社から取り寄せる方式に改める方針であることが25日、分かった。
 直接取引が一層拡大し、出版流通に影響を与えそうだ。
 アマゾンは現在、主に日販に在庫がある本は日販から仕入れ、ない場合は同社経由で出版社から取り寄せる「バックオーダー発注」を行っている。アマゾンは6月末でこの仕組みを終了させ、バックオーダーに関しては各出版社との直接取引に切り替える。各出版社にも説明をしている。
 配達まで8日から2週間ほどかかる専門書のような売れ筋でない本を迅速に届けるのが狙い。アマゾンは「縮小する出版市場で、最高のサービスを顧客に届けるための判断」とする。

アマゾン、取次大手日販との取引を一部停止、出版社と直接取引へ
(財経新聞 2017年5月2日 11:34)
 Amazonの日本法人であるアマゾンジャパンは、出版取次大手日販との取引に関し、日販に在庫がない既刊書籍の調達のみ、6月末で取りやめることを明らかにした。代わって、出版社から直接取引する方式に改めるという。将来的には、これまで出版界で大きな存在感を発揮してきた出版取次の立場が大きく変遷する可能性もあり、注目に値する動きと言えよう。
 そもそも取次とは何か。ごく簡単にいえば出版取次というのは書籍の問屋であるが、決してそれだけの存在ではない。日本の出版取次は1909年に誕生、まもなく100年の歴史を迎えようとしているが、その果たしてきた役割は、極めて大きいものであった。
 日本には数千の出版社があり、減少傾向とはいえ今なお万の桁の書店がある。これら全てが相互に取引を行うことは現実的ではないため、取引総量を最小化するためには取次が必要である。
 取次の存在によって、小さな書店でも豊富な品揃えをすることができる。その最大の理由は、返本制度にある。そもそも書店にある書籍というのは、見た目には在庫であるが、実際には取次から委託されているものであり、無償で返却することができる。つまり、売れないかもしれないものを仕入れるリスクというものを書店が負わなくて済むのである。他にも、金融機能なども重要ではあるが、しかし何と言っても返本制度こそが取次というシステムの中核だ。

 これまでの百年近いその歴史において、陰にも陽にも取次こそが日本の出版の中枢であった。日本の出版取引は何においても取次を介することが原則とされていたのだが、しかし、Amazonの存在は、ついにこの取次という存在にまで影響を及ぼすに至ったようだ、というのが今回の一件である。
 ちなみに、今回中止になる取引は、詳しくいえば「日販バックオーダー発注」という。端的にいえば、Amazonが求める調達速度を日販が達成できなかっために、今回の事態に至ったものであるらしい。
 インターネット通販の台頭、そして電子書籍の出現によって、出版というものの全てが変わりつつある中、この激動はとどまるところを知らないようだ。(藤沢文太)

アマゾン・ジャパン「直取引」拡大の意味
(2017年3月23日)
 アマゾン・ジャパンは、出版社との直接取引を段階的に拡大してきたが、出版社へ直接集荷・宅配するサービスを今秋までに始めることを日経新聞(3/22)が報じた。日本の書籍流通の根幹であり「鉄壁」とも考えられてきた取次-書店チャネルが、あっさりと回避できるとすれば、E-Bookへの心理的抵抗などは容易に解消に向かうだろう。
出版流通一元化は最終段階に入った
 日経の記事には「埼玉県所沢市に1月、設立した『アマゾン納品センター』を直接取引専用の物流拠点として使う。…すでにKADOKAWAなどが参加しており、複数の大手出版社と交渉をしているもよう」と書かれている。出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスは、ロットの少ない中小の出版社にも利用しやすくなる。出版社にとっての最大のメリットは、取次手数料を削減することだろう。取次手数料は約1割と言われているが、これをアマゾンと版元が分け合うことになる。折半とは限らず、アマゾンが販元のレイティングに基いて行う可能性が強い。アマゾンに「友好的」な出版社は一気に増えると思われる。
 アマゾンによる流通統合が、日本の書籍・雑誌流通を一変する可能性は強まった。大手取次のトーハンと日版は売上を落とし、同じく利幅の薄い書店チャネルの経営環境はさらに悪化する。版元・印刷・取次・書店の4つの業界の大小企業が相互に依存する日本的エコシステムの心臓は、取次の情報・金融・物流機能にあり、書籍と雑誌という性格の違う出版物を同じチャネルで流すところに、この精緻なシステムのユニークさがあったのだが、この多元的サプライチェーンは、インターネットには最も置換えにくいが、非効率性ゆえに効果は最も大きい。そして4業界での影響はあまりにも大きい。
「何でもあり」の時代が始まった
 所沢にはK社の「書籍製造・物流工場」が2020年にオープンする予定であり、総工費250億円とも言われるこのプロジェクトとの関連が注目される。場合によってはアマゾンが直接・間接に関わる可能性もあると見られる。「製販一体」というスローガンで進められている「書籍の受注から迅速な製造・発送までを一体で行う最適な生産プロセス、物流システム」に最もスムーズに対応するのはアマゾンだからだ。「さくらタウン」は「アマゾン・タウン」にならないだろうか。
 「アマゾン直取引」の拡大によって書店はどうなるのか、E-Bookはどうなるのか、「製販一体」との関係は、というところが注目されるが、これらは出版界の今年最大のテーマとなるだろう。アマゾンが「取次」になる可能性もある、つまり書店まで「配本」することで、書店に手数料を落としてデポとすることだ。これは取次と書店との関係を変化させる。「直取引」は巨人を繋ぎ止めていた鎖を外すことになる。近所の本屋にアマゾンの幟が翻る日が来るかもしれないし、取次が間に入るかもしれない。もはや何でもありの時代になった。
 出版社にとって重要なことは、サプライチェーンにおける「デジタル・ファースト」つまり、デジタルを前提にしたストリームライン(最適化)ということで、紙とE-Book、Webの一体運用の体制構築を進めることだ。コンテンツはデジタル(PDFとEPUB/KF)で管理し、タイトルごとにE-Bookを先行させるか、印刷版を同時発売するかを選択する。売上20%増、返本率10%以下は出版社が目標とし、また達成すべき水準だ。◆ (鎌田、03/23/2017)


大きな笑顔の佳き日々を