明日で、東日本大震災から丸7年を迎える。復興庁のホームページにアップされている文書を通じて、復興施策の変化を知ることで、日本の中枢に起きているおかしな現象を読み解く、山下祐介首都大学東京准教授の『福島原発事故から7年、復興政策に「異様な変化」が起きている』(現代ビジネス・2018.3.10)は大変勉強になりました。一読をお勧めします。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54779


閑話休題(それはさておき)


現在上映中の『スリー・ビルボード』 (Three Billboards Outside Ebbing, Missouri:2017年)では、娘の命を凶悪犯に奪われた母親ミルドレッド・ヘイズ役を俳優・フランシス・マクドーマンド女史(Frances McDormand:1957年生)が好演している。3月4日、彼女は最も功績のあった主演女優として第90回アカデミー賞主演女優賞(Academy Award for Best Actress)を贈られた。この時の2分間程のスピーチの最後に『ツー・ワーズ(2語)、申し上げたい。それは”inclusion rider” です』となじみのない用語を残して、その場を立ち去っている。この用語は、映画産業での出演者とスタッフの多様性を保障する契約条項を指し、「出演者とスタッフの半数は、女性とマイノリティーで構成して欲しい」、「作品のオリジナリティを尊重した人種構成にして欲しい」等が含まれるようだ。合衆国の映画産業では、白人以外の役柄に白人俳優が配役されるホワイトウォッシング(Whitewashing)が慣習化していた。例えば、オードリー・ヘップバーン(1929〜1993)の代表作である『ティファニーで朝食を』(Breakfast at Tiffany’s:1961年・パラマウント)は女性のサングラス・ファッションを世界に流行らせたが、丸眼鏡をかけた出っ歯で背の低いミッキー・ルーニー(1920〜2014)演じる日系アメリカ人・ユニオシはステレオタイプ(先入観+偏見)の日本人像を世界に拡散した。公民権運動(Civil Rights Movement)真っ只中のこの鈍感さは、合衆国映画史上の汚点に観える。そういえば『十戒』(The Ten Commandments:1956年・パラマウント)では、チャールトン・ヘストン(1923〜2008)がモーセ役で、ユル・ブリンナー(1920〜1985)がラメセス2世役であった。『ウエスト・サイド物語』(West Side Story:1961年・ユナイテッド・アーティスツ )では、プエルトリコ系のマリア役をナタリー・ウッド(1938〜1981)が好演している。思わず、微笑んでしまいますね。
フランシス・マクドーマンドが受賞スピーチで語った「inclusion rider」ってどういう意味?
2018/3/6(火) ELLE ONLINE 訳:Reiko Kuwabara )
(前略)
 「inclusion rider」の発案者は、南カリフォルニア大学の研究機構Annenberg Inclusion Initiativeの社会科学者、ステイシー・スミスさん。彼女は、女優兼プロデューサーのファンシェン・コックス・ディジョバンニさん(Fanshen Cox DiGiovanni)と法律事務所コーエン・ミルスタインの弁護士カルパナ・コトガルさん(Kalpana Kotogal)の3人でアイデアを発展させたそう。
 US版『エル』の取材に対し、コトガルさんは次のようにコメント。「初めて『inclusion rider』のアイデアについて話し合ったのは、今から16ヶ月ほど前。ら職場環境が悪化していく様子を何度も見てきた弁護士&訴訟当事者として、どうすればハリウッドのキャスティングや雇用を改善することができるのかについてじっくり考えました」
 その後3人は、役者が出演交渉を行う際に提示できる付帯条項を作成。そうすれば大物セレブたちがオファーをもらったとき「この映画に出演する場合は、これらの要求を受け入れていただきます」とリクエストすることができるから。「映画業界に変化をもたらすためには、すでにパワーを持っている方々の力を借りる必要があると思います」
 「ハリウッドの面白いところは、プロジェクトごとに仕事場が変わるところです。警察官や学校の先生など、さまざまな役柄をこなす役者も、みんなオーディションに参加し、役を勝ち取る必要があります。このinclusion riderをプロジェクトごとに提示できれば、それぞれの職場環境をひとつひとつ改善することができるかもしれません。権力者たちがこれを提示することで、男性優位な体制を変えることができると信じています」
 今年のアカデミー賞でフランシスが「inclusion rider」という言葉を広めたことについては、「彼女がスピーチでこの言葉を発してくれるとは夢にも思いませんでした。私たちは映画界のエージェントたちや弁護士たちにも、『inclusion rider』についてもっと知ってもらおうと今までいろいろな活動を行ってきました。私たちの考えが世の中に浸透するのは、時間の問題だと思っています」と喜びをあらわにした。ワインスタインのセクハラ騒動以来、ショービズ業界ではさまざまなムーブメントが広がっているが、女性や有色人種の人たちに対する差別は今にはじまったことではない。しかしいま、フランシスのスピーチによって『inclusion rider』の認知度は格段にアップし、格差是正に向けて新しい一歩を踏み出したのは間違いないだろう。(後略)


閑話休題(それはさておき)


福島県平市(現在のいわき市)生まれの佐川宣寿氏(さがわ のぶひさ:1957年生)は、一所懸命勉強し、東京大学を卒業して大蔵省に入り、順調に出世をなさり昨年7月に第48代国税庁長官に就任なさった。しかしながら、昨日3月9日に依願退官。学校法人「森友学園」の国有地売却問題で学園との交渉にあたった財務省近畿財務局の担当部署の54歳のノンキャリア男性職員(約半年前から休職)が、検察の事情聴取を受けた直後の7日に神戸市内の自宅で自殺した。ノンキャリアを政治に関わらせてしまったにもかかわらず、キャリアはノンキャリアである彼の命を守ることができなかった。彼の退官は、この報道の後のことであった。同日、佐川氏は麻生太郎財務大臣により国有財産の信頼を損ねたとして懲戒処分(減給20%、3ヶ月)を受けた。財務相は記者会見で彼の辞任理由を『佐川宣寿・国税庁長官から、局長時代の国会対応に丁寧さを欠き国会審議に混乱を招いたこと、行政文書の管理状況に指摘を受けていること、さらに今回取りざたされている決裁文書の国会提出の担当局長だったこと、などを踏まえて、国税庁長官の職を辞し退職したいとの申し出があり、本日付で退職させている』と語った。この3つの辞任理由は、なぜこのタイミングでの辞任なのかの回答にはなり得ない。佐川氏は財務省を守るために引責辞任したと考えられるが、これを機に昨夏以来続ける皇居の内堀に面した「KKRホテル東京」での暮らしを終えることも出来そうだ。家族を人質に取られ、彼はホテルに拘束されていた、と捉える人々もいるそうだ。明らかなことは、佐川氏は事実と真実(彼が主観的にその事実をどう考えているかということ)を墓場まで持って行くこと。そして、政治家は誰一人として佐川氏を守ろうとしなかったことも伺い知ることができる。
近畿財務局の職員が自殺か 森友学園側と交渉職員の部下
(NHK 3月9日 20時56分)
 学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、学園との交渉にあたった財務省近畿財務局の担当部署の男性職員が、7日、神戸市内の自宅で死亡しているのが見つかりました。遺書のようなメモがあったことから、警察は自殺したと見て調べています。
 捜査関係者によりますと、この職員は近畿財務局の上席国有財産管理官の男性で7日、神戸市内の自宅で首をつっているのが見つかり、その後、死亡したということです。
 自宅からは遺書のようなメモも見つかったということで、警察は自殺したと見て調べています。
 男性職員は近畿財務局で国有財産を管理する部署に所属し、国有地が森友学園に売却された時期には学園側と直接、交渉していた職員の部下だったということです。
 近畿財務局は「職員の個人情報に関することはコメントできない」としています。(後略)

森友文書の書き換え認める
財務省、12日に国会報告
(共同 2018/3/10 19:24)
 財務省は10日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針を固めた。当初の記述を削除した例が複数判明したとの調査結果をまとめ、12日に国会に報告する。関与した近畿財務局の担当職員や本省幹部らの懲戒処分を検討する。野党は「政権の隠蔽体質」への批判を強める構えで、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の政治責任を問う声が与党で高まる可能性もある。
 決裁文書の国会提出時に担当局長だった佐川宣寿国税庁長官が9日付で辞任するなど混乱が拡大。財務省自らが書き換えの事実を認めることで政権への打撃は大きく、森友問題は重大局面を迎えた。

さて、半島と大陸の平和に関して記しておこう。昨日、ドナルド・トランプ合衆国大統領は、ノース・コリアの金正恩労働党委員長からの首脳会談要請を受諾し、5月までに金氏との首脳会談に応じる姿勢を示したと言う。サウス・コリアがノース・コリアに派遣した特使団の成果は会談したことを「報道発表文」として公表しているに過ぎず、「合意文」は存在しないことに留意したい。慧眼の士・ティラーソン国務長官はアフリカ訪問中だが、ノース・コリアと『交渉入りは遠く先のことです。以前にも述べたが、米朝の一歩目は何を交渉するか予備協議を行うことだと思います』と語り、非核化交渉はまだ先との見識を示した。交渉には、ウラン濃縮プログラム(UEP)の中断など非核化の事前措置が必要なことは言うまでもない。ノース・コリアのリーダーの発言で注意すべきポイントは、「実験の中断」を認めても、「開発の中断」を認めようとはしないこと。対話が始まっても、対話をしながらノース・コリアの核弾頭及びミサイルの生産状況と実戦配置状態を合理的に検証すべく、視察を要求したいところだ。

合衆国には半島全土を軍事支配するオペレーションOPLAN 5027がある。残念なことだが、OPLAN 5027-96では開戦時に在日合衆国軍基地を使用する日本政府との合意事項が含まれている。ここに日米安保条約の次の前文に記された『国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望』を放棄して、外国の戦略に隷従している属領・日本国の姿(主権)を観ることができる。
 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。

ところで、金正日(1941〜2011)と金日成(1912〜1994)の死因は病死とされているが、暗殺説がある。平和的な宥和路線を敷こうとしたときに、不利益を被る国内外勢力の魔の手に掛かったということかも。
スイス、米朝会談調整の用意表明
[チューリヒ 9日 ロイター] - 永世中立国のスイスは9日、米朝会談の実現に向け調整役を果たす用意があると表明した。
 韓国特使として訪米中の鄭義溶・大統領府国家安全保障室長は前日、トランプ米大統領が金正恩・朝鮮労働党委員長の申し出に応じ、5月までに初会談を行う意向を示したことを明らかにしている。
 これを受けスイス外務省は声明で、「スイスはすべての関係各国とコンタクトを持っている」とし、スイスが良好な場を提供できることは周知の事実で、会談実施の是非、実施する場合の場所や時期は関係各国が決めることだとした。
 スイスは昨年9月、緊張が高まる米朝間の調停を申し出た経緯がある。

漁夫の利を手にするのは、共産国のお面を被った金王朝の最大の理解者にして協力者であるロシアのプーチン大統領かも。日本では7日夜、国会正門前で安倍内閣総辞職を求める緊急抗議が行われ、1,500人ほどが参加したという。内閣不信任決議案は衆院議員51人以上の賛同者があれば提出でき、最優先で採決される。憲法の規定で、可決した場合には首相は衆院を解散するか、内閣総辞職することになる。

ノース・コリアへの経済制裁として、日本からのパチンコ・マネーの送金を禁止できる政権政党にご登場願いたい。パチンコを違法ギャンブルとして禁止するか、さもなければ合法化して、その所得に60%の税金をかける。パチンコ産業の市場規模・粗利規模はそれぞれ20兆円・3兆円と推定されるのだから、60%の課税により約2兆円の税収増をもたらす。それは消費税収19兆円の1割強に相当する。日本丸は、パチンコ資金を呑み込む政策を導入できるだろうか。それが可能になるのは、半島に統一国家ができたときであろうか。


大きな笑顔の佳き週末を。

(追記)
森友問題より気になる…日本を衰退させる財務省の“詐欺論法”
(産経 2018.3.17 10:00)
 「森友文書」の書き換えなぞ、と言ってはなんだが、日本の針路を狂わせ、国力を衰退させてきた財務官僚の欺瞞(ぎまん)のほうが気になる。
 財務省のホームページを見ればよい。「日本の財政関係資料(2016年4月)」の中に「我が国財政を家計にたとえたら」というコラムが漫画入りで載っている。政府一般会計を月収30万円の家計にたとえると、毎月18万円の新しい借金をしている状況で、そのローン残高は5397万円に上るという。いかにも国民をぞっとさせる解説だ。
 それにとどまらない。3カ月に1回の割合で、財務省は「国の借金」なるものをプレスに発表する。そのつど、担当官は記者クラブの面々に、ご丁寧にも総務省推計の人口をもとに、国民1人当たりの借金はいくら、と説明する。朝日新聞など一般紙はもとより、経済専門の日経新聞もそのままうのみにして報じる。17年12月末時点では「国民1人当たり約858万円の借金を抱えている計算になる」という具合だ。
 財務官僚といえば、高額の国費を支給され、米国などの有名大学に留学して、最新の経済、財政理論をものにしているはずなのだが、上記のようなでたらめを国民に流すのだから、開いた口がふさがらない。
 拙論は民主党政権時代に、恐るべきデマだと、産経新聞朝刊1面コラムで批判し、拙著『財務省オオカミ少年論』(11年、産経新聞出版刊)でも取り上げた。以来、一部の評論家が同調したが、東大などの著名教授は無視、財務省はホームページも記者向けレクチャーも改めない。メディアも相変わらずだ。
 何が間違いであり、欺瞞(ぎまん)なのか。まず、経済というのは、借りと貸しで成り立つ。政府債務である国債を保有しているのは主に金融機関だが、原資は預金である。国民は金融機関経由で国債という資産を持ち、運用している。それを国民の借金だと言い張るのは、まさに詐欺論法である。
 第2に、家計が資産を増やす、つまり豊かになるためには、借り手がいなければならない。資本主義の場合、主な借り手は国内では政府と企業のはずだが、日本の企業は借金を大きく減らし、貯蓄に励んでいる。銀行は家計の預金を企業に貸せない。となると、家計が資産運用で頼る相手は政府しかない。その政府が借金を増やさないのだから、家計は豊かになれない。
 第3に、政府と家計の決定的な違いは、政府は財政支出を通じて国内総生産(GDP)、言い換えると国民の総所得を増やす結果、収入(税収)を増やせる。徴税権のない家計は不可能なわざだ。政府が借金を減らし、財政支出をカットし、増税で家計から富を巻き上げるなら、経済は停滞し、国民が疲弊する。結果が「20年デフレ」である。
 安倍晋三首相はアベノミクスを打ち出し、財務省と距離を置き、財務官僚が敷いた日本凋落の道を断ち切ろうとした。皮肉にも、首相の意向を忖度したと疑われる財務官僚の文書書き換えで立ち往生だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

(追記)2020年3月19日
赤木夫人の夫への純粋(愛)と勇氣に敬意を表します。
自殺職員の妻、佐川氏提訴 森友文書「改ざんを強制」
(日経 2020/3/18 14:42 (2020/3/18 20:13更新))
  学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)が自殺したのは改ざんを強制されたのが原因などとして、妻が18日、国と佐川宣寿元国税庁長官に計約1億1200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。妻側は「改ざんは佐川氏の指示だった」などと記された赤木さんの手記を公表した。
  赤木さんの自殺を巡っては、財務局が民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定している。原告側の代理人弁護士は同日、大阪市内で記者会見し「夫が死を決意した本当のところを知りたい。裁判で全てを明らかにするためにも、佐川さんには改ざんの経緯や真実を話してほしい」などとする妻のコメントを代読した。
  訴状によると、2017年2月、財務局が学園に大阪府豊中市の国有地を鑑定価格から8億円余り値引きして売却していた問題が表面化。赤木さんは当時、上席国有財産管理官として紛糾する国会対応などに追われたという。
  当時、理財局長だった佐川氏は17年2月以降、省内の部下に「森友学園を厚遇したと取られる疑いがある箇所は全て修正するように」などと、決裁文書の改ざんを指示。赤木さんは抵抗したが、財務局の上司の指示を受けて3、4回にわたり改ざん作業を強制された。
  この結果、長時間労働や連続勤務で心理的負荷が過度に蓄積。同年7月にうつ病と診断されて休職し、18年3月7日に自宅で手記や遺書を残して自殺した。手記には「森友事案はすべて本省の指示。本省の対応が社会問題を引き起こし、うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」などとつづられている。
  決裁文書の改ざん問題を巡り、財務省は18年3月、決裁文書14件の改ざんを認めた。同6月に佐川氏が主導したとする報告書を公表し、佐川氏ら20人を処分した。
  告発を受けた大阪地検特捜部は有印公文書変造や背任などの容疑で捜査したが、佐川氏や改ざんに関与した財務省職員ら計38人全員を不起訴とした。


自殺職員「改ざんは佐川局長指示」 遺族が手記公表
森友学園への国有地売却巡る決裁文書
(日経 2020/3/18 21:38)
  学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、自殺した財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)の遺族の弁護団は18日、改ざんは当時財務省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官の指示だったなどとする男性の手記を公表した。要旨は以下の通り。
私は2017年2月から半年間、異例な事案を担当し、強度なストレスが蓄積して17年7月から病気休暇に至りました。異例な事案とは「森友学園への国有地売却問題」です。事案の長期化・複雑化は、財務省が虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因で、心身ともに痛み苦しんでいます。
【本省主導】
  本件は特異な相手方で前代未聞の事案であり、社会問題化する以前から担当者は本省に応接記録などを提出しています。近畿財務局が本省の了解なしに交渉を進めることはあり得ません。資料(応接記録)を文書管理規則に従って廃棄したとの説明(答弁)は、財務省が判断したことです。財務省が学園に特別の厚遇を図ったと思われることを避けるため、当時の佐川(宣寿)理財局長が判断したと思われます。野党の追及を避けるため、資料はできるだけ開示せず、タイミングも後送りとするよう指示があったと聞いています。
  近畿財務局が会計検査院の特別検査を17年に2回受けた際には、佐川局長の指示で本省理財局から派遣された幹部職員が、近畿財務局の説明を補足する対応を取りました。本省の対応の基本姿勢として、本省が持参した一部資料の範囲内で説明し、応接記録や法律相談の記録などの内部検討資料は一切示さず「文書として保存していない」と説明するとの指示が本省から事前にありました。
  18年2月の国会で財務省が新たに開示した行政文書について、麻生(太郎)財務相や太田(充)理財局長による「行政文書の開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認したところ、法律相談に関する文書の存在が確認された」との説明は虚偽答弁です。
【前代未聞の虚偽】
  18年1月からの通常国会では太田局長が前任の佐川局長の答弁を踏襲することに終始し、詭弁を通り越した虚偽答弁が続けられています。違和感を持っていても、誰一人本省に反論しません。
【決裁文書の修正】
  決裁文書の調書の差し替えは事実です。佐川局長の指示です。学園への厚遇と受け取られる箇所は修正するよう指示があったと聞きました。本省理財局幹部らが過剰に修正箇所を決め、近畿財務局で差し替えました。
  修正作業の指示が複数回あり、私は相当抵抗しました。本省からの出向組の次長は「元の調書が書き過ぎているんだよ」と悪いこととも思わず、あっけらかんと差し替えました。これが財務官僚機構の実態です。修正回数は3、4回程度と認識しています。
  抵抗したとはいえ、関わった者として責任をどう取るか、ずっと考えてきました。最も大切な家内を泣かせ、人生を破壊したのは本省理財局です。みんなに迷惑をお掛けしました。さようなら〔共同〕

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