「復活祭の兎」(イースター・バニー:Easter Bunny;Easter Rabbit;Easter Hare)は、「復活祭の卵」(イースター・エッグ:Easter egg)を運んでくる兎さんで、西方教会(カトリック教会・聖公会・プロテスタント)での16世紀以降の慣習。兎は「breed like bunnies;breed like rabbits(たくさん子供を産む)」という慣用句に見られるように、豊穣のシンボルとして復活祭の民間伝承に取り入れられた。他方、東方教会(正教会・東方諸教会)の復活祭には、紅卵(イースターエッグ)はあるが、イースター・バニーはないようだ。
その昔、兎は雌雄同体だと広く信じられていたらしく処女性を失わずに繁殖することができるとの解釈から聖母マリアと相性が良いものとされた。北方ルネサンス絵画には、聖母マリアと幼子イエスと共に兎さんが描かれた。飼育されている家兎なのか、野生の兎である野兎なのかは定かではないが、生命の偉大さを伝える工夫だと思う。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ、通称ティツィアーノ(ピエーヴェ・ディ・カドーレ、1488/1490年−ヴェネツィア、1576年)《聖母子と聖カテリナと羊飼い》、通称《うさぎの聖母》1525−1530年頃
油彩、カンヴァス 縦71cm、横87cm Inv. 743 ルーヴル美術館、パリ
c 2007 Musee du Louvre / Angele Dequier
作者不明《うさぎの聖母子》16世紀初頭
グリザイユ(単色画法)、塩化銀の黄、ステンドグラス 縦27cm、横183cm Cl.14146
国立中世美術館、クリュニー浴場跡、パリ
c Photo RMN - c Jean-Gilles Berizzi
英語の「Easter」の語源は、野兎を従えているゲルマン神話の春の女神「Eoster」(エオストレ;エオステレ)と言われる。エオストレに春の訪れを感謝するために、兎さんたちが春色に塗り分けた綺麗な卵をプレゼントしたところ、彼女は大変喜びで、卵を春風と共にみんなに配ったという伝承もある。
「問答者グレゴリウス(Dialogos Gregorios)」と呼ばれたローマ教皇グレゴリウス1世(Gregorius I:540年〜604年3月12日)は、教会改革に熱心な人物として知られるが、ヨーロッパの古い宗教の伝統を典礼の整備などに取り入れることにも熱心であった。彼はエオストレの伝承により、厳冬が開けると草木が芽を出し、動物たちが野を駆け回る春の訪に、イエス復活のインスピレーションを得た。だから、エオストレを祭る春の祭典をイエスの復活祭に取り入れたのだろう。
ドイツには、こんなお話しがある。ゴルゴタの丘(エルサレムの丘)での公開処刑後に、イエスが洞窟のお墓に入るときのこと。一匹の兎さんが紛れ込んだ。そして、その兎さんは洞窟の中でイエス復活を目撃した。証人となったのだから、この復活の事実を人々に知らせようと試みるが、人間の言葉で伝えることができない。そこで、命のシンボルである卵に、イエス復活を強調する色を塗り、人々に知らせ届けたという。
そう、マグダラのマリアについてもお話ししておきましょう。これは福音書には記されていない伝承です。彼女はイエス昇天の後、聖母マリアと使徒たちと共に毎日祈り、第一の証人としてエルサレム中にイエスの復活を伝えた。そして、イエスの愛(=道)を伝えるための旅を始めた。彼女はローマへ赴き、皇帝ティベリウスに会って紅い鶏卵を献上し、イエスの復活を報告。彼がエルサレムの丘で十字架にかけられた磔刑(たっけい)は公開処刑にして不法であったと皇帝に訴えた。彼女の鶏卵の献上は、祝賀・敬意の気持ちを示す際のユダヤ人の慣習に従ったものだが、その鶏卵が紅卵であったので復活祭にカラフルな卵を贈る習慣が始まったと言われる。
復活祭の紅卵(函館正教会)
Happy Easter!
Have a good easter weekend!
(追記)
バニーガールは、合衆国の雑誌『PLAYBOY』との連関でマネジメントされた「PLAYBOY CLUB」のウエイトレス衣装として考案されたもので復活祭との関係は薄い。ただし、ここに回春の一端を会得するなら、文字通りエオストレのご神徳を体感することになるだろう。さて、バニーガールは商標登録されていて名称は「Playboy Bunny」(合衆国商標番号/U.S. trademark registration number:0762884)。1960年2月29日夕方、シカゴのプレイボーイ・クラブでお披露目された。
S&G and Barratts/EMPICS Archive
https://www.huffingtonpost.jp/2017/09/28/hugh-hefner_a_23225523/より引用
Playboy Bunnies at the Playboy Mansion, July 23, 2011
その昔、兎は雌雄同体だと広く信じられていたらしく処女性を失わずに繁殖することができるとの解釈から聖母マリアと相性が良いものとされた。北方ルネサンス絵画には、聖母マリアと幼子イエスと共に兎さんが描かれた。飼育されている家兎なのか、野生の兎である野兎なのかは定かではないが、生命の偉大さを伝える工夫だと思う。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ、通称ティツィアーノ(ピエーヴェ・ディ・カドーレ、1488/1490年−ヴェネツィア、1576年)《聖母子と聖カテリナと羊飼い》、通称《うさぎの聖母》1525−1530年頃
油彩、カンヴァス 縦71cm、横87cm Inv. 743 ルーヴル美術館、パリ
c 2007 Musee du Louvre / Angele Dequier
作者不明《うさぎの聖母子》16世紀初頭
グリザイユ(単色画法)、塩化銀の黄、ステンドグラス 縦27cm、横183cm Cl.14146
国立中世美術館、クリュニー浴場跡、パリ
c Photo RMN - c Jean-Gilles Berizzi
英語の「Easter」の語源は、野兎を従えているゲルマン神話の春の女神「Eoster」(エオストレ;エオステレ)と言われる。エオストレに春の訪れを感謝するために、兎さんたちが春色に塗り分けた綺麗な卵をプレゼントしたところ、彼女は大変喜びで、卵を春風と共にみんなに配ったという伝承もある。
「問答者グレゴリウス(Dialogos Gregorios)」と呼ばれたローマ教皇グレゴリウス1世(Gregorius I:540年〜604年3月12日)は、教会改革に熱心な人物として知られるが、ヨーロッパの古い宗教の伝統を典礼の整備などに取り入れることにも熱心であった。彼はエオストレの伝承により、厳冬が開けると草木が芽を出し、動物たちが野を駆け回る春の訪に、イエス復活のインスピレーションを得た。だから、エオストレを祭る春の祭典をイエスの復活祭に取り入れたのだろう。
ドイツには、こんなお話しがある。ゴルゴタの丘(エルサレムの丘)での公開処刑後に、イエスが洞窟のお墓に入るときのこと。一匹の兎さんが紛れ込んだ。そして、その兎さんは洞窟の中でイエス復活を目撃した。証人となったのだから、この復活の事実を人々に知らせようと試みるが、人間の言葉で伝えることができない。そこで、命のシンボルである卵に、イエス復活を強調する色を塗り、人々に知らせ届けたという。
そう、マグダラのマリアについてもお話ししておきましょう。これは福音書には記されていない伝承です。彼女はイエス昇天の後、聖母マリアと使徒たちと共に毎日祈り、第一の証人としてエルサレム中にイエスの復活を伝えた。そして、イエスの愛(=道)を伝えるための旅を始めた。彼女はローマへ赴き、皇帝ティベリウスに会って紅い鶏卵を献上し、イエスの復活を報告。彼がエルサレムの丘で十字架にかけられた磔刑(たっけい)は公開処刑にして不法であったと皇帝に訴えた。彼女の鶏卵の献上は、祝賀・敬意の気持ちを示す際のユダヤ人の慣習に従ったものだが、その鶏卵が紅卵であったので復活祭にカラフルな卵を贈る習慣が始まったと言われる。
復活祭の紅卵(函館正教会)
Happy Easter!
Have a good easter weekend!
(追記)
バニーガールは、合衆国の雑誌『PLAYBOY』との連関でマネジメントされた「PLAYBOY CLUB」のウエイトレス衣装として考案されたもので復活祭との関係は薄い。ただし、ここに回春の一端を会得するなら、文字通りエオストレのご神徳を体感することになるだろう。さて、バニーガールは商標登録されていて名称は「Playboy Bunny」(合衆国商標番号/U.S. trademark registration number:0762884)。1960年2月29日夕方、シカゴのプレイボーイ・クラブでお披露目された。
S&G and Barratts/EMPICS Archive
https://www.huffingtonpost.jp/2017/09/28/hugh-hefner_a_23225523/より引用
Playboy Bunnies at the Playboy Mansion, July 23, 2011
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