技能実習生を始めとする外国人労働者の劣悪な環境について、労働基準監督署(Labour Standards Inspection Office)は事業場を把握していないかもしれない。労働基準法その他の労働者保護法規に基づいて事業場に対する監督はなされているのだろうか。厚生労働省労働基準局が正常に機能したなら、これほど多数の失踪事件は発生しなかったであろう。行政機関が正常に機能しない構造があるのかもしれません。
閑話休題(ソレハサテオキ)
日本語学校の設立ブームの影で、大きな利権が動いている。建設業者や人材派遣業者それに介護事業者といった業種は、日本語学校をいわば労働力の受け皿として利用。法務省と厚生労働省とが本来の機能を取り戻して、軌道修正する必要がある。
2017年12月5日(火)放送のクローズアップ現代『追いつめられる留学生〜ベトナム人犯罪“急増”の裏側で〜』は、社会の木鐸としてこの問題をクリスタライズして警鐘を鳴らした。約1年後の今日、私たちは問題解決の糸口を見いだせないでいる。加えて、政府は外国人受け入れを拡大するため、新たな在留資格創設を盛り込んだ入管難民法改正案を先月24日召集の臨時国会に提出。実質的な審議が、先週16日から衆議院の委員会で始まった。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4073/index.htmlより転載
雇用主は外国人だから低賃金で働かせている訳でもないようだ。構造的に、仕事を手に入れるには低い見積もり価格でなくてはやっていけない。だから、社会的要請としての低賃金で働いてくれる労働者が必要となっている。それが外国人労働者であった、ということだろう。事業所規模5人以上の民営事業所(5〜9人の事業所については企業規模5〜9人に限る)を調査対象としているの賃金構造基本統計調査を見ると、「最低賃金法第4条(「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」)」違反が後を絶たない。→http://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181113005/20181113005-5.pdf
「最低賃金法第4条」違反を知らず知らず容認している現実の改善のための教育、そしてデフレ構造から脱却できる社会政策の提示と運用が、今日の日本の低賃金の社会構造を変える必要条件だ。現実の構造を変えることが急務であり、問題解決の本質である。2015年の時間当たり賃金(購買力平価換算)は、日本を100とすると、 アメリカが126・イギリスが114・ドイツが176・フランスが141で、 日本は各国の水準を下回っている。 (https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2017/05/p169_5-1.pdf)
大きな笑顔の佳き日曜日を。
技能実習生の失踪理由は低賃金が7割 法務省が調査結果概要
(NHK 2018年11月16日 19時14分)
法務省は、去年1年間に失踪し、その後出入国管理法違反の疑いで摘発された技能実習生、およそ2900人を対象に、失踪した理由などを調査した結果の概要を国会に提示しました。
「失踪した理由」を複数回答で聞いたところ、契約よりも安い賃金だったことなど「低賃金」をあげた人が全体のおよそ67%と最も多くなっています。
次いで、「実習終了後も働きたい」がおよそ18%、「指導が厳しい」がおよそ13%、「労働時間が長い」がおよそ7%となっているほか、「暴力を受けた」がおよそ5%などとなっています。
また、「1か月の給与」は「10万円以下」と答えた人が最も多く、およそ1600人となっています。
さらに「入国してから失踪するまでの期間」は「1年を超えて2年以内」が900人余りで最も多く、中には「1か月以内」と答えた人も34人いました。
技能実習生の資料「捏造」 入管法改正案の審議入り見送り
(日刊ゲンダイ 2018/11/17 15:00)
安倍政権では、どんな悪法であっても、成立させると決めたら公文書改ざんは当たり前。裁量労働制の捏造データ問題とソックリな展開だ。
外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案をめぐり、政府は16日の衆院法務委の理事懇談会で、失踪した外国人技能実習生に対する聞き取り調査について、集計結果にミスがあったことを明らかにした。法務省は同法違反容疑で摘発された失踪実習生約2900人を対象に実施した昨年の調査結果概要を国会に提示。聞き取りに使った聴取票では、動機の項目が「低賃金」となっていたのに、結果概要には「より高い賃金を求めて」などと書き換えられていた。
野党は「議論の土台が根底から崩れた」と猛反発して法務委は紛糾。立憲民主党は葉梨委員長の解任決議案を衆院に提出し、委員会は散会。この日の実質審議入りは見送りとなった。
政府はまた、外国人労働者の受け入れ見込み人数の積算資料も国会に提出。しかし、介護業は5月に公表された介護保険事業計画の推計に基づく不足数だったり、建設業は高齢熟練労働者の引退に伴う不足数だったりしたことから、野党は「つじつま合わせの作文」と猛反発。審議入りがずれ込んだことで、12月10日までの会期内成立は難しい状況になった。
閑話休題(ソレハサテオキ)
日本語学校の設立ブームの影で、大きな利権が動いている。建設業者や人材派遣業者それに介護事業者といった業種は、日本語学校をいわば労働力の受け皿として利用。法務省と厚生労働省とが本来の機能を取り戻して、軌道修正する必要がある。
2017年12月5日(火)放送のクローズアップ現代『追いつめられる留学生〜ベトナム人犯罪“急増”の裏側で〜』は、社会の木鐸としてこの問題をクリスタライズして警鐘を鳴らした。約1年後の今日、私たちは問題解決の糸口を見いだせないでいる。加えて、政府は外国人受け入れを拡大するため、新たな在留資格創設を盛り込んだ入管難民法改正案を先月24日召集の臨時国会に提出。実質的な審議が、先週16日から衆議院の委員会で始まった。
“悪質”日本語学校の闇 追いつめられる留学生
日本語学校で職員として働くベトナム人から内情を聞くことができました。一部の学校では、教育よりも利益を優先する風潮が広がっているといいます。
日本語学校で働くベトナム人
「学校の立場から見ると、一番優先しないといけないのは学費。だから学費を払えば(授業中)寝ても大丈夫。」
留学生として来日するためには、学費の支払い能力などを証明する書類を提出し、入国管理局の審査を受ける必要があります。しかし、そうした書類も、金を払えば簡単に偽造できるといいます。
日本語学校で働くベトナム人
「ほとんど80パーセント、ねつ造です。ベトナムでは、お金を払ったら、どんな書類でも、ねつ造できる。偽造業者に作ってもらった(と聞いた)。」
「あなたの学校は(偽造に)気づかない?」
日本語学校で働くベトナム人
「気づいています。ベトナムのこの地域では、この収入はありえないと、すぐにわかる。でも学生がほしいから(黙認する)。留学生はビジネスを支える一番大事な源。」
多額の借金を背負わせるベトナムのあっせん業者。それを承知で受け入れる一部の日本語学校。そのはざまで、留学生は追いつめられています。
去年、日本語学校に入学した男性です。
125万円の借金を返すため、生活費を切り詰めています。狭いアパートで3人暮らし。週28時間の上限を超えてアルバイトをせざるを得ないといいます。
「週28時間の制限は知っていますか?」
ベトナム人留学生
「生活費のために28時間だけ働くつもりでした。しかし全然足りなかった。自分で稼ぐしかないのです。」
急増する日本語学校 教育より労働者集め?
市川不二子(NHK記者)
田中:NHKが調べたところ、日本語学校全体のおよそ3割、200校以上がこの5年間に新設されたことが分かりました。
取材に当たった市川記者。
日本語学校急増の裏には、どんな実態があるんでしょうか?
市川記者:新設された日本語学校を調べたところ、建設業者や人材派遣業者、それに介護事業者といった業種からの参入が相次いでいることが分かりました。ある日本語学校の校長は、「学校を経営する介護事業の会社の労働力として活用するために開校した」と話していました。取材からは、日本語学校をいわば労働力の受け皿として利用しようという動きが、一部で広がっている実態が見えてきました。
田中:こういった状況を国はどう見ているんでしょうか?
市川記者:授業時間や教員の数などの基準を満たしていれば、ほかの業種から参入しても問題はないとしています。しかし法務省は、留学生が法律の上限を超えて、長時間働くことがないよう、学校側に周知の徹底を求めるなど、対策を進めています。また、借金返済のために上限を超えるアルバイトをしなくても、授業料が支払えるのかどうか、留学生が提出する書類の審査を厳格化しているんです。ただ、留学生が急増する中で、海外で作成された全ての書類をチェックするのは難しく、実体がつかみにくいのが実情なんです。
── 書類の偽造について取材されたそうだが、実態は?
出井さん:この書類の中には、留学生が銀行の預金残高だとか、親の年収の証明書も出さなければいけないという決まりがあるんですけれども、私が取材を通じて入手したものを見ると、ほとんど数字が同じなんですね。
(いろんな留学生の数字が同じ?)
しかも、普通に考えて、ありえないほどの金額が書いてあるわけですね。
── それをなぜ見抜けない?
出井さん:それは、偽造とはいえないんですね。というのは、銀行の証明書であれ、また向こうの行政機関が出した証明書であれ、本物のはんこが押してあるんですよね。結局、賄賂を払えば、そういった書類が簡単に作れてしまうと、それに対して日本の側も、なかなかそれが偽物だとは言えない。本物なわけなので、偽物だと言えないということですね。
── 国は、労働時間の制限があることを周知するという対策を打ち出しているが、こういった対策は十分だと言える?
出井さん:いえ。それは、もう今、来ている留学生たち、これはベトナムに限らずなんですけれども、28時間しか働けないということを分かってきています。分かっているんだけれども、それだけじゃ借金を返せないということで、その上限を超えて働いてしまうというのが現状だと思います。
── 国は、その労働時間の制限に関して、新しい対策の検討も進めている?
出井さん:この28時間という制限を延ばして、35時間、また40時間に増やしていこうという議論も一部あるわけですけれども、これは、私は本末転倒も著しいことだと思います。結局、日本人が嫌がる仕事にベトナム人を使いたいということなんですが、そうじゃない、根本のところを改めるべきだと思います。
── 国の対策が後手に回る中で、日本で苦しむベトナムの若者たちに手を差し伸べようという取り組みも民間で始まっています。
(後略)
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4073/index.htmlより転載
雇用主は外国人だから低賃金で働かせている訳でもないようだ。構造的に、仕事を手に入れるには低い見積もり価格でなくてはやっていけない。だから、社会的要請としての低賃金で働いてくれる労働者が必要となっている。それが外国人労働者であった、ということだろう。事業所規模5人以上の民営事業所(5〜9人の事業所については企業規模5〜9人に限る)を調査対象としているの賃金構造基本統計調査を見ると、「最低賃金法第4条(「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」)」違反が後を絶たない。→http://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181113005/20181113005-5.pdf
「最低賃金法第4条」違反を知らず知らず容認している現実の改善のための教育、そしてデフレ構造から脱却できる社会政策の提示と運用が、今日の日本の低賃金の社会構造を変える必要条件だ。現実の構造を変えることが急務であり、問題解決の本質である。2015年の時間当たり賃金(購買力平価換算)は、日本を100とすると、 アメリカが126・イギリスが114・ドイツが176・フランスが141で、 日本は各国の水準を下回っている。 (https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2017/05/p169_5-1.pdf)
大きな笑顔の佳き日曜日を。
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