アイルランド系アメリカ人の児童文学作家ヒュー・ロフティング(Hugh John Lofting:1886年1月〜1947年9月)は土木技師をしていたのですが、1916年に英国軍人として第一次世界大戦に出征して負傷。その際、多数の動けなくなった軍用馬が治療されることなく銃殺処分されていることに心を痛め、息子に送る手紙に動物の言葉が話せる医師であるジョン・ドリトル先生の物語を書き副えました。合衆国行きの大西洋を横断する船に乗り合わせたセシル・ロバーツ(Cecil Edric Mornington Roberts:1892年5月〜1976年12月)はこの物語を見て彼に出版を勧めます。1920年にF・A・ストークス社より『The Story of Doctor Dolittle(ドリトル先生アフリカゆき)』として刊行され、これが「ドリトル先生」シリーズの始まりとなりました。
ドリトル先生の性格は、一度決心すると、どのような困難が降りかかろうとも、けして諦(あきら)めません。勇氣を持って行動し、ついに目標を達成してしまう冒険家の博物学者です。相手の言葉に理がある時は、たとえ無学な子どもであろうと、貧困者であろうとも、つつしんで話を聴きます。一方、相手が間違っているならば、国王であろうと諌(いさ)めるのです。
先生の本名は、Doctor John Dolittle(ジョン・ドゥーリトル博士)です。日本語版権を持った岩波書店の担当者は、姓の「Do little」を「働きが少ない」と意訳し、“やぶ先生”としましたがパッとしません。そこで翻訳者の井伏鱒二(1898年2月〜1993年7月)と相談し、“ドゥーリトル”よりは子供が発音しやすい「ドリトル」が良いだろうということになったそうです。
Dolittle先生は、生活のために仕事をしないことを誇りに思っているところがあります。旅行と思索と博物学などに時間を活用しています。彼は、まさしくジェントリー(gentry)で、Do Little(無為自然)な流れのままのライフ・スタイルをエンジョイしています。
Do everything with nothing.
己を堅固に持して、マイペースで参りましょう。
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