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今夜は初めに、マンハッタンを始めとする合衆国各地での暴動について記します。それから、7月3日公開のウディ・アレン最新作『Rainy Day in New York』についてです。お楽しみいただけると幸いです。



ニューヨーク市は「ビッグアップル」の愛称を持っていますが、ミネソタ州ミネアポリス市は「ミニ・アップル」と呼ばれることがあります。両市ともに cultural plural(人種的多様性)があり、美術館・博物館・劇場・アーテイストのための広場や日没後の娯楽(ナイトライフ)の場が多数見受けられます。そのアクティブな風土に、ニューヨークに似た雰囲気を感じる方々は多いようです。

故プリンス氏(Prince Rogers Nelson:1958年6月7日〜2016年4月21日)の生まれ故郷でもあるミネアポリス市は、人口43万人でその約20%がアフリカ系の民衆です。市議会の13議席のうち12議席は民主党が占め、うち2人はトランスジェンダーの黒人そしてもう1人は環境保護主義者。ここにはリベラル(※注)な政治風土があるようです。ミネソタ保健局(Minnesota Department of Health)によると、アフリカ系の世帯の28%が貧困線(poverty line)を下回っています。それに対し、白人の世帯は同7.2%がそれを下回っています。同市では貧困層の多くが新型コロナウイルスの流行で生活苦を受けています。

ミネソタ州の知事である民主党(リベラル※注)のワルツ氏(Timothy James Walz:1964年4月生)は、都市封鎖・監禁(lockdown)に積極的で、3月末から5月18日まで都市閉鎖・外出禁止・経済活動停止の施策を執り行いました。5月25日、外出禁止が解かれた1週間後、アフリカ系住民のジョージ・フロイド氏(George Floyd:46歳)が白人の警察に拘束され死亡した事件が起きました。これを機に、都市封鎖・監禁でたまっていた貧困層の社会経済的な不満が爆発して暴動が起きたと考えています。都市封鎖・監禁による経済活動の停止は失業者を急増せしめ、貧困層が多大なる経済的な被害を受けました。この構図は、ニューヨーク市や他の都市で暮らすアフリカ系の民衆にとっても同じことです。
※注
合衆国の場合、共和党の思想・立場とされる「リベラル」(左派)は、国家の介入なくしては弱者が生まれてしまうので、自由や権力を守るために国家の役割が大事だと考えます。もうひとつ、民主党の思想・立場とされる「保守」(右派)は、国家が介入すると非効率な政府組織が生まれ、経済活動が非効率にり、行きすぎた保護で「dependence」(甘え:independence 「独立・自立」の否定)が生まれるから、国家の役割は最小限で好いと考えます。(以上)


世界中で多数の国々が、新型コロナウイルスの危険性が誇張された情報を信じ、合衆国が主導した都市封鎖・監禁(lockdown)策を妄信してしまいました。国際的な会議が開かれて議論されたわけでもないのに、結果として各国が足並みをそろえて同じ政策を執りいれました。わが日本は合衆国との同盟関係故でしょうか日本版の都市封鎖・監禁として「非常事態宣言」を公表。英国も同盟国故に集団免疫策に替えて都市封鎖・監禁を民衆に強要したのでした。唯一この政策を自国に導入するのを拒否し続けているのが人口約1,000万人のスウェーデン。感染による死者数は4,000人。ここでは、厳しい外出制限や飲食店への休業命令もありません。小中学校の休校措置もないのです。コロナ対策で大切なことは新型コロナウイルスによる死亡者数と経済活動難による死亡者数の総和を少なくすることですから、正面教師としてスウェーデンの施策が高く評価される日が訪れると考えています。
米各地で「都市封鎖」抗議デモ 死者4万人突破も経済再開求め
(BBC NEWS 2020年04月20日)
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「今こそシャットダウンを終わらせろ!」と訴えるインディアナ州の住民

新型コロナウイルスの感染拡大防止のためのロックダウン(都市封鎖)が続くアメリカで19日、死者が4万人を突破した。こうした中、経済活動の再開を求めるデモが国内各地で相次いでいる。
  週末にかけて、テキサス、イリノイ、フロリダ、テネシー、インディアナ、アリゾナ、コロラド、モンタナ、ワシントンなどの各州で、様々な規模の集会が開かれた。
  経済活動の再開が早すぎれば、COVID-19(新型ウイルスによる感染症)が再び拡大する危険性があると、多くの専門家が懸念している。しかし、住民の間に、規制緩和を求める声は高まっている。
  ドナルド・トランプ米大統領は、抗議が起きている州を「解放しろ」とツイートするなど、州政府に対する抗議行動を支持する姿勢をみせている。
  アメリカは今や、COVID-19危機の中心となっている。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、アメリカでは日本時間20日午前の時点で75万8700人以上が感染、4万600人以上が死亡している。
  一方で、一部の州で新たな感染の増加ペースが鈍化するなど、アウトブレイク(大流行)のピーク到達の兆候が現れている。
  
各州で規制緩和にばらつき
  複数の州知事は、感染拡大の伸びに鈍化が見られる状況で、経済再開にむけた議論を開始している。しかし、その他の地域では依然として、厳格なロックダウンが敷かれている。
  カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は米国内で初めて、3月19日から国内で最も人口の多い同州を閉鎖。州全土に自宅待機命令を出した。
  西海岸で隣接するワシントン州とオレゴン州も、カリフォルニア州に続き、3月23日から合わせて約1150万人に対し自宅待機を命じている。
  ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は16日、同州は5月15日まで在宅命令を延長すると発表した。新型ウイルス対策に関する19日の定例会見では、住民に対し、「自宅待機によるストレス」や、州の経済再開を切望するなど、悩まされるかもしれないと注意を促した。
  「我々にはまだ、この厄介なウイルスを制御できていると確かめる必要がある。(中略)我々は皆、くじけずに前向きに生き、前進したいと強く願っている」
  クオモ氏は、「今は、この状況全体のハーフタイムにすぎない」と述べた。
  トランプ大統領(共和党)は17日、ミネソタ、ミシガン、ヴァージニアの各州における規制は「厳しすぎる」と述べ、厳格なロックダウン措置に対抗するデモを支持する姿勢を見せた。
  厳しい行動制限は、新型ウイルスの感染者数の上昇曲線を平らにし、医療機関がパンクしないようにするため、必要とされている。
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自宅待機命令に反対するミシガン州のデモで、「我々は州知事こそ不要不急だとみなす」とのメッセージを掲げるデモ参加者

国民の気をそらすためのデモ支持と
  ワシントン州のジェイ・インスリー知事は、トランプ大統領がデモ隊を支持するのは「危険」で、州法への「不服従」をけしかけているに等しいと主張した。
  インスリー知事は19日、「アメリカの大統領が法律に違反するよう国民にけしかけるなど、生まれて初めて見た」と、米ABCに述べた。
  米野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、トランプ氏が国民の「気をそらす」ためにデモを支持していると非難した。
  「大統領は、ウイルス検査や治療、接触者の追跡や隔離といった対策を、きちんと実施できなかった。その失態から国民の気をそらすために、デモを支持している」と、ペロシ氏はABCに述べた。
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  リバタリアン系団体による「グリッドロック作戦」(Operation Gridlock)と呼ばれるデモでは19日、コロラド州デンヴァーやアリゾナ州フィーニックスの州議会周辺に最大数百人が集まると予想されていた。
  デンヴァーでは、社会的距離命令に反対するデモ参加者の車数十台が議事堂の周りを走った。また、約200人が議事堂の芝生の上に陣取り、メッセージや旗を振り回したと、地元メディアが報じた。
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「私に自由を、さもなければCOVIDを」というメッセージを掲げたデモ参加者。独立戦争の際の、「自由を、さもなくば死を」というスローガンをもじったもの(インディアナ州、18日)

  18日には、デモ隊がメリーランド州アナポリスの路上を占拠し、車のクラクションを鳴らしてロックダウン措置に抗議した。インディアナ州では州知事の住居周辺に200人以上が集結したほか、テキサス州オースティンでは約200人がデモに参加した。
  ユタ州、ワシントン州、ニューヨーク州でも18日にデモが行われた。
  20日にも、引き続きデモが行われるとみられる。


閑話休題(それはさておき)


本作は2017年秋に撮影。2018年の合衆国公開が予定されていましたが、セクハラや性的暴行を告発する「#Me Too」運動が活発化する最中、アレン氏が養女への性的虐待を働いていたという長年の疑惑が再燃し、配給担当の合衆国Amazon Studiosは公開予定を撤回したのでした。2019年2月にAmazon Studiosは企画を離脱し、これを受けて、彼は4作品配給の契約を「25年前の根拠なき疑惑」のために破棄したことに対し訴訟を起こしています。
ティモシー・シャラメが案内する雨のニューヨークの楽しみ方
(清藤秀人 6/4(木) 16:32)
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  新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ニューヨークでは3月以降、小売店が閉鎖された状態にある。市の経済活動もすべて停止していて、有名ブランド店が立ち並ぶソーホーでは、ほとんどの店のガレージか閉じられたままだ。さらに、ここ数日はミネソタ州で黒人男性が拘束時に受けた暴力によって死亡した事件を機に、全米各地に広がった抗議デモにより、マンハッタンでは略奪が横行している。シャネルが襲われ、H&Mなどの店のガラスが叩き割られ、服が剥ぎ取られたマネキンが路上に転がっているという。これらの痛ましいニュースは、かつてコロナ以前にニューヨークを訪れた人々の旅の記憶を否が応でも呼び覚まし、同時に、現状、そして将来的にもニューヨーク再訪が容易ではないと感じさせる。ローマやパリやロンドンも同じことだ。



  そこで、在りし日のニューヨークへ旅してみたいと考えている人のために、絶好の映画がこの夏公開される。案内人は生粋のニューヨーカーで街を隅々まで熟知しているウディ・アレン。彼にとって50本目の監督作であり、原題にニューヨークが初めて使われた長編映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(19)だ。不思議に思うかもしれないが、かつてニューヨークを舞台にしたアレン作品では、マンハッタンが2回(『マンハッタン』(79)と『マンハッタン殺人ミステリー』(93))、ブロードウェイが2回(『ブロードウェイのダニー・ローズ』(84)と『ブロードウェイと銃弾』(94))使われているが、ずばりニューヨークはこれが初めて。それだけに、映画には彼のニューヨーク愛がぎっしり詰まっている。そこがまた、今見るのには最適なのだ。
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ブルジョワ大学生が彼女のためにNYツアーをデザインするが
  物語はこうだ。アメリカ東部ペンシルベニアのヤードレー大学に通うブルジョワ大学生のギャツビー(ティモシー・シャラメ)は、キャンパスで知り合った恋人で同じく富豪の娘、アシュレー(エル・ファニング)に付き添って、故郷のニューヨークを訪れることになる。アシュレーが学校の課題で著名な映画監督にニューヨークでインタビューすることになったためだが、ギャツビーはニューヨーク初体験のアシュレーのために、超豪華な、とはいえ、彼にとっては普通のニューヨーク旅行を企画する。アッパー・イーストサイドにある5つ星ホテル、ピエールのパークビュー・ルームにステイして、父親のコネで人気ミュージカル『ハミルトン』のチケットを2枚取ってもらい、近代美術館MOMAの写真展にもできれば足を運び、夜はセレブ御用達のホテル、カーライルにあるベメルマンズ・バーで一杯、というのがギャツビーの計画だった。
  しかし、計画は大幅に狂う。アシュレーは取材相手の監督に一瞬にして気に入られ、その流れで訪れたクイーンズにあるカウフマン・アストリア・スタジオで出会った人気スターに夢中になってしまう。一方、アシュレーから立て続けにドタキャンを喰らったギャツビーは、旧友が撮影する学生映画にエキストラ出演することになり、そこで共演した元カノの妹、チャン(セレーナ・ゴメス)といい感じになる。このあたり、そもそも中に抱え込んでいた矛盾と欲望が、偶然の連続によって表面化していく人間の可笑しさを描き続けるウディ・アレンならではのタッチだ。
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  前記の人気スポット以外にも、劇中にはニューヨークのランドマークが随所に登場する。アシュレーとなかなか連絡が取れないギャツビーが足早に通り過ぎるのは、今年4月、新型コロナの影響もあって民事再生法の適応を受けた高級デリ、ディーン&デルーカのソーホー本店の前だ。ギャツビーとチャンがデートするのはメトロポリタン美術館のエジプシャン展示室だし、ギャツビーとアシュレーはセントラルパーク周辺を走る馬車に相乗りし、セントラルパーク動物園にある時計台、デラコート・クロックが重要なシーンで印象的に使われる。すべてが、ニューヨーカー、またはニューヨーク通の旅人にとってはお馴染みの場所ばかりだ。また、ギャツビーがアシュレーに教える、アーティストたちがソーホーからトライベッカを経て、今はブルックリンに拠点を移したという情報もベタすぎる。

外は雨でも中は暖かい名カメラマンの匠の技
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  しかし、ウディ・アレンは一つだけ新しいニューヨークを本作で提案している。タイトルにもある通り、映画が始まって約20分が過ぎて以降、マンハッタンは常に雨降りと曇天の連続なのだ。こんなに雨が降るアレン映画、またはニューヨーク映画を見たことがない。おかげで、お馴染みのスカイラインは勿論、高層ビルの間から見える青空は最後まで望めない。でもその分、ギャツビーが雨に濡れた体を温めるホテルやバーの明かりが、人物や背景をオレンジ色に照らして、観客の心も温めてくれる。カメラマンはアレンとは過去に『カフェ・ソサエティ』(16)や『女と男の観覧車』(17)で組んだことがある名手、ヴィットリオ・ストラーロ。『地獄の黙示録』(79)『レッズ』(81)『ラストエンペラー』(87)で計3度アカデミー撮影賞に輝いているストラーロの光の取り入れ方が、これほど物語に貢献した例は最近なかったと思う。

"雨のち晴れ"を願う監督の思いが溢れる
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  常時降り続ける雨や、曇天の空の下に、生まれ育った故郷ニューヨークの誰もが知る姿を描いて、いつか訪れる快晴を待つウディ・アレン。監督としてのその姿勢は、偶然にも、パンデミックや抗議デモでボロボロになったニューヨークに、微かな希望の光を灯している。映画が製作されたのは2018年のことだ。
  アイビーリーガーらしいラルフ・ローレンのヘリンボン・ジャケットを羽織り、透明のビニール傘をさして肩をすぼめて通りを歩くディモシー・シャラメのノーズラインは相変わらず美しいし、ちょっと田舎っぽいセーターとミニにバッグをタスキかげにしているエル・ファニングは、勿論可愛い。でも、本作のベスト・パフォーマーはチャンを演じるセレーナ・ゴメスだ。堂々として迫力がある態度でギャツビーを圧倒するその演技は、スカーレット・ヨハンソンに続くアレン映画のミューズになる可能性大だと思う。
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セレーナ・ゴメスは新ミューズか?


『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』7月3日(金)より全国公開
(C) 2019 Gravier Productions,Inc.
Photography by Jessica Miglio (C) 2019 Gravier Productions,Inc.


清藤秀人:映画ライター/コメンテーター
アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。映画.com、CINEMORE、ぴあ、SCREEN、Mono Master等にレビューやインタビューを執筆。また、テレビ朝日"グッド!モーニング"等に映画コメンテーターとして出演。



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