私たちの血税の一部を投下したアフリカ南部モザンビークでの日本の農業支援事業「プロサバンナ」が先月終了したのは、小さな農家を畑から追い出そうとしている批判が原因であったようです。JICAには、プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討するフィジビリティスタディ(feasibility study)の能力ある人材が不在なのでしょうか。または、能力ある人材の調達に失敗したのでしょうか。途上国や国際協力・開発をテーマとする硬派のNPOメディアganasは、約3年前に問題点を指摘する記事を掲載していましたので、ここに転載させていただきます。feasibility studyについては、以下の図を参照していただければと思います。
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日本の農業支援終了 「小規模農家排除」と反対運動―モザンビーク
(時事 2020年08月03日19時21分)
モザンビークの農民団体、北部ナンプラ州農民連合のコスタ・エステバン代表=2019年8月、横浜市
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  アフリカ南部モザンビークで7月、日本の農業支援事業「プロサバンナ」が終了した。事業の問題点を指摘してきたNGO、日本国際ボランティアセンター(JVC)などが3日に東京・永田町の参院議員会館で行った記者会見に、現地で反対運動を続けてきた農民団体、北部ナンプラ州農民連合のコスタ・エステバン代表(53)もオンラインで参加。「小さな農家の声を聴かずに進めようとしたことが間違っていた」と指摘した。
  プロサバンナは、ブラジル中部を大豆など輸出作物の農地に変貌させた経験を同じポルトガル語圏のモザンビークで生かそうと、ブラジルと日本が組んで約10年間続けられた。しかし「ブラジル企業が入り込み、小さな農家を畑から追い出そうとしている」(ブラジルのNGO)と批判され、昨夏来日したエステバン氏も横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD)の会場で見直しを訴えていた。
JICAプロジェクト「プロサバンナ」は誰のための開発? モザンビークの農民を支援するNGO職員へのビザ発給拒否続く
(ganas 2017-12-05)
9月22日に都内で開かれたプロサバンナの報告会で話す日本国際ボランティアセンター(JVC)の渡辺直子氏
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  アフリカ南東部モザンビークの日本の政府開発援助(ODA)プロジェクト「プロサバンナ」を推進したいモザンビーク政府は、国際協力NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の職員である渡辺直子氏へのビザ発給を拒否し続けている。JVCがプロサバンナに反対する農民を支援しているというのが理由とされる。プロサバンナは日本とブラジルが協力してモザンビーク北部の農地を開発するものだが、モザンビークの農民組織の間では土地が奪われるのではとの不安が根強い。「日本政府はプロサバンナに非協力的な組織は少数意見として無視する方針」との内部告発も明るみになったなか、渡辺氏は「住民の声を聞かないで、誰のための開発なのか」と怒りを表す。

■ビザ拒否は市民の弾圧
  渡辺氏は、8月24〜25日にモザンビークで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)フォローアップ閣僚会合に参加するため、ビザを申請した。ところがモザンビーク政府は8月10日に発給を拒否。これに対してJVCは市民活動に対する言論弾圧や活動妨害が進む可能性があると危惧し、日本のNGO「モザンビーク開発を考える市民の会」と共同で8月23日から、渡辺氏へのビザ発給を求める署名活動を続けてきた。
  日本の外務省からその後、「未来永劫ビザを発給しないと決定したわけではない。通常の手続きに従い、ビザを申請できる」との連絡が入った。このため渡辺氏は10月2日にビザを再申請。しかし12月4日になってもビザは発給されてない。渡辺氏は、10月25日からモザンビークの首都マプトで開催された「第三回:プロサバンナに関する三カ国民衆会議」に参加する予定だったが、現地に渡航できず、日本からオンラインで参加した。

■反対意見は無視する?
  渡辺氏は2013年から、約10万人の会員をもつモザンビーク最大の農民組織「モザンビーク全国農民連合(UNAC)」と協力して、農民の現状と土地収奪の実態について現地調査し、その結果を踏まえて日本政府・JICA・モザンビーク政府にプロサバンナの見直しを提言してきた。渡辺氏は「私たちは一方的にプロサバンナに反対しているのではない。農民の声を聞いてほしい、話し合いの機会がほしいと要求しているだけ」と話す。
  渡辺氏によると、日本政府とJICAは表向きには「ていねいな対話が重要」とのスタンスだが、2015年4〜6月にプロジェクトサイトの19郡で開かれた公聴会では、農民が公聴会に出席できないよう妨害したり、地元の郡政府関係者が農民を脅迫する発言をした場面もあったという。
  2016年4月にJICAの内部告発でリークされた文書によると、JICAは2013年に3カ月300万円で現地のコンサルタントと契約し、プロサバンナに関係する現地の団体を調べあげ、協力的な団体のみと対話した。UNACなどの非協力的な団体は「マイノリティ」として無視する方針だった。

■食べない大豆を栽培する
  モザンビークではプロサバンナが計画される前から土地収奪はひんぱんに起きていた。モザンビークの土地法は、土地の所有権こそ認めないが、10年耕せば生涯にわたってその土地を利用できる権利を与える。
  しかし実態は有名無実のようだ。「学校を建ててあげると外国の企業が住民をだまし、ブルドーザーで農地を破壊している。モザンビーク政府の高官がその企業の株主だったりして、農民を守るはずの政府が土地収奪に加担している」(渡辺氏)。UNACは、プロサバンナでも同じように土地が奪われるのではないかと懸念する。
  プロサバンナでは、大企業の農業投資を呼び込み、輸出用の大豆を栽培する計画。2013年には日本でも投資説明会が開かれていた。ちなみにモザンビークには大豆を食べる習慣はない。「大豆の生産が増えることで、国のGDP(国内総生産)は増えるかもしれない。だが自分たちが食べるものを作ってきた小農が農地を奪われ、輸出用の大豆を作るための農業労働者となることは、本当に小農のためなのか」。渡辺氏はこう問題提起する。
  プロサバンナの正式名称は「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム」。1970年代に日本がブラジルで手がけた「セラード開発事業」を成功モデルとして、日本とブラジルが一緒になってモザンビーク北部の農地を開発する。2009年に日本、ブラジル、モザンビークの3カ国で合意した。現在は、反対運動の成果もあり、プロサバンナのマスタープラン策定は停止し、個別の農民組織だけを対象とした小さいプロジェクトのみが進んでいる状態だ。

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