菅義偉首相は先週16 日(金曜日)午後(日本時間17日午前)、バイデン合衆国大統領とホワイトハウスで首脳会談を行いました。その共同声明に、台湾問題について「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、平和的解決を促す」と明記したのです。バイデン合衆国政権の要求をのまざるを得なかったのだと思います。日本企業の多くが、衰退の一途を辿る合衆国で儲けられなくなっており、チャイナとの良い関係を望んでいるのですから、チャイナとの関係を悪化させかねない今回の共同声明は回避したかったに違いありません。多分、当初「台湾」と記されていた箇所を「台湾海峡」と書き換えさせたと見るのは私だけではなさそうです。(参考:『「台湾海峡」と「台湾」は違う 52年前の日米共同声明との比較は無意味だ』
K10012980681_2104171251_2104171301_01_05
今回の声明は、日本とチャイナが1972年の『日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明』の第2条と第3条に明記した、いわゆる「一つの中国」の原則を日本側が反故にしたとチャイナ側から指摘されかねない事案です。台湾がチャイナの領土の一部であるとするチャイナの立場を尊重してきた49年間の歳月を無駄にはしたくありません。今後、日本が食っていくためにはチャイナとロシアを中心に形成される焦点(focus)を二つ持つ楕円型経済圏のメンバーシップを手に入れる必要があります。チャイナ敵視を強要するバイデン合衆国政府の対チャイナ政策の艀(はしけ:barges)に日本を位置づけてはいけません。チャイナの日本敵視がバイデン合衆国政権の狙いだとわかっているでしょうから、チャイナ共産党政権が今回の『日米首脳共同声明』に怒って『日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明』を破棄することはないと考えています。バイデン政権は合衆国の覇権体制を維持するというグランドデザイン(合衆国の単独覇権体制は既に崩壊しているというのに!)を以て、これからも日本政府に対して無理難題を押しつけてくるに違いありません。要注意です。のらりくらりと、合衆国からの難題を回避しながら、チャイナを刺激することなく、両国に上手に属しながらの「全方位外交」(懐かしい響き!)を構築したいところです。
日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明

二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。


日米首脳共同声明
「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」
2021年4月16日

U.S.-Japan Joint Leaders’ Statement:
“U.S.-JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”
April 16, 2021

  菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。日米両国は、普遍的価値及び共通の原則に基づき、引き続き連携していく。日米両国はまた、地域の平和及び安定を維持するための抑止の重要性も認識する。日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。(President Biden and Prime Minister Suga exchanged views on the impact of China’s actions on peace and prosperity in the Indo-Pacific region and the world, and shared their concerns over Chinese activities that are inconsistent with the international rules-based order, including the use of economic and other forms of coercion. We will continue to work with each other based on universal values and common principles. We also recognize the importance of deterrence to maintain peace and stability in the region. We oppose any unilateral attempts to change the status quo in the East China Sea. We reiterated our objections to China’s unlawful maritime claims and activities in the South China Sea and reaffirmed our strong shared interest in a free and open South China Sea governed by international law, in which freedom of navigation and overflight are guaranteed, consistent with the UN Convention on the Law of the Sea. We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. The United States and Japan recognized the importance of candid conversations with China, reiterated their intention to share concerns directly, and acknowledged the need to work with China on areas of common interest.)

0e2959c8