新型コロナで休業中のバー それでも氷を仕入れるわけは?
(NHK 2021年5月27日 20時17分)
都内で休業要請の対象となっている、酒類を主に提供するバー。その中に、店は閉じているのに氷を継続的に仕入れているバーがあります。いったいなぜでしょうか。

「飲食店はもう限界」
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東京・神楽坂にあるバーは緊急事態宣言に伴う東京都の要請に応じて、4月25日から休業を余儀なくされています。

去年の売り上げは例年の6割以下に落ち込み、ことしに入ると営業時間の短縮などで売り上げはさらに減少。

休業して以降は全く売り上げがありません。

東京都から1日あたり4万円の「協力金」を受け取れることになっていますが、家賃や光熱費などを差し引くと家族の生活費を確保するのがやっとだということです。

政府が緊急事態宣言を延長する方向で調整していることについて、オーナーの木内壮一さんは「いつまで続くのか全く先が見えず、延長するならもう一歩踏み込んだ対策をしてほしい。飲食店はやれることはやり、もう限界だ」と話しています。

しかし、木内さんは休業中にもかかわらず、週におよそ1回、古くから取り引きのある氷の加工販売会社からウイスキーやカクテルに使う氷を仕入れています。

協力金受け取れない 氷業者
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木内さんの仕入れ先は、東京 新宿区にある氷の加工販売会です。

この会社の去年の売り上げは、前の年より3割以上減少。

ことしに入っても厳しい状況は続き、現在は、飲食店からの注文が例年の5分の1ほどにとどまっているといいます。

1年の売り上げの半分以上は夏場を中心とした7月から9月に集中しますが、ことしは多くの在庫が倉庫に積まれています。

この会社は営業時間の短縮や休業要請の対象ではなく、東京都の協力金は受け取れません。

従業員の雇用を維持するため雇用調整助成金を受けているほか、コロナ禍で売り上げが落ちた事業者を支援する国の持続化給付金も受け取りましたが、厳しい状況は続いています。

もし感染が収まらず今の状態が続いた場合は、年間1000万円ほどの赤字となるおそれがあるといいます。

内間英行社長は「新型コロナの拡大を抑えるため、われわれはみんな言われたことを守っている。今度は国の出番で、『ここで終わらすんだ』というもう一段強いメッセージをしてほしいが、それがまだ伝わってこない。宣言が延長されても今回で決着をつけてほしい」と話しています。

「少しでも力になれれば」
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バーの木内さんは「バーは、氷の販売会社無くしてはやっていけない。私たち飲食店は協力金をもらえるが周辺で支えてくれる業者さんには支給されない。うちも厳しいが少しでも力になればと氷を仕入れている」と話しています。

仕入れた氷は小分けにしたうえで、SNSなどを通じて常連の客によびかけ、店で無料で配っています。

木内さんは「再開した時にまた来てもらえるようにお客さんとのつながりを維持していきたいという思いがある。先が見えないが悩んでいてもしょうが無いので、店を再開した時に備えやれることを考えていきたい」と話しています。


閑話休題(それはさておき)

「ヤングケアラー」支援へ 道が有識者会議設ける方向で調整
(NHK 06月09日 19時10分)
家族の介護や世話などに追われる子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」の実態を把握するとともに、家族の介護などを担う人への支援を強化するため、道が近く有識者会議を設ける方向で調整を進めていることが分かりました。

「ヤングケアラー」とは、両親や祖父母、きょうだいの世話や介護などをしている子どものことで、国の調査では「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、▽中学2年生のおよそ17人に1人、▽全日制の高校2年生のおよそ24人に1人に上ることが分かっています。
道によりますと、去年4月から10月までに道の児童相談所が対応した通報や相談のうち、子どもが家族の介護や世話に追われるなど「ヤングケアラー」とみられるケースは24件あったということです。
札幌市を除いた児童相談所ごとに見ますと、▼函館市など道南の2市16町を管轄する函館児童相談所が7件と最も多く、次いで▼室蘭が6件、▼釧路が4件、▼岩見沢が3件、▼中央と北見が2件となっています。
このため道は、こうした「ヤングケアラー」の実態を把握するとともに、高齢化や核家族化が進む中、家族の介護などを担う人への支援を強化するための方策について議論しようと、近く有識者会議を設ける方向で調整を進めています。
道の担当者は、「幼いきょうだいの面倒を見るといった家庭の事情で学校生活に支障が出ているケースなどで必要な支援を講じる体制づくりを進めたい」と話しています。

【置かれている状況は】
函館市で家庭で暮らすことができない子どもたちの自立支援を行っている児童自立援助ホーム「サイド7」のホーム長、沙弥和広さんは、これまでに勤務した道内の施設などで「ヤングケアラー」とみられる子どもたちと多く接する機会があったといいます。
このうち、病気の母や障害がある兄などと一緒に暮らしていた道内の女性は未成年の時からおよそ10年間、家事や介護に追われ、高校を卒業できなかったということです。
また、別の道内の女性は母子家庭で育ち、幼いころから障害のある母親の介護を行っていて、高校に入学したものの、介護の負担が大きくなり中退したということです。
沙弥さんはこうしたケースについて、「あくまで家庭の問題と捉えられ子ども自身も自分の置かれた状況が言いだしにくかったりして家庭そのものが社会から孤立してしまい、外部の介入を難しくしている実態がある。その背景には経済的な困窮を抱えているケースが多い」と指摘しています。
その上で「潜在的にはかなり多くのヤングケアラーが道内にも存在していると思うが、今は特にコロナ禍で学校の授業がオンラインになったりして家庭の様子がますます見えにくくなっていて、学校の先生などが子どものSOSを見逃すおそれもある。まずはヤングケアラーの存在を多くの人に知ってもらい、自治会や民生委員など今ある地域の仕組みを柔軟に活用して、できることを増やしていくことが必要ではないか」と話していました。

【“早期発見・理解を”】
ヤングケアラーの実態に詳しい「日本ケアラー連盟」の中村健治理事は、表面化しづらいヤングケアラーを早期に発見し支援につなげていくための仕組み作りが必要だと指摘します。
中村理事はヤングケアラーの実態について「家族の世話などで過度な負担を負っているため勉強に集中できないだけでなく、クラブ活動や友達とのふれあいなど、本来、社会性やコミュニケーション能力を学ぶべき場が持てなくなってしまう。そのため人間関係を築けずに孤立を深めてしまったり、年齢を重ねてもどう働いてよいのかがわからず生活の自立に悩んだりするケースもある」と指摘しています。
そのうえで、本人自らがヤングケアラーであることを自覚することは難しいとして、「学校では子どもの会話や行動、服装の変化などを注意深く見たり、周囲の人がすぐに気づけるような地域作りを進めることが必要だ。そのためには地域の住民がケアラーやヤングケアラーとは何かをしっかり理解できるよう啓発を進めていく必要がある」と話していました。
また、自治体に求められる役割については「単に支援制度を整備するというだけでなく、当事者も含めて議論し、理解を進めていくことが望ましい。道や道内の市町村も、国の動きを踏まえて、しっかり取り組んでほしい」と話していました。



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