美しさとは、刹那の輝きで終わるものなのか。
それとも、手入れを重ね、季節を慈しみながら、
静かに育まれてゆくものなのか。

足立美術館の庭園は、その問いに対する、一つの答えを私たちに示してくれます。

島根の地に生まれた実業家・足立全康翁(1899年2月〜1990年12月)は、故郷に文化の灯をともしたいという純粋な願いを胸に、美術館を創設しました。彼の「庭園もまた、一幅の絵画である」という確固たる理念のもと、自然と芸術が溶け合う唯一無二の空間が生まれたのです。横山大観をはじめとする百点を超える日本画のコレクションを鑑賞したあと、展示室の窓から庭園を望めば、まるで額縁に収められた絵画のように、その美しさが静かに心身に語りかけてきます。

この壮大な理想を形にしたのが、稀代の庭園作家・中根金作氏。彼はかつてこう語りました。「庭は造って終わりではない。維持し、更新し続けてこそ完成する。」その言葉通り、この庭園は今もなお、生きている絵画として息づいています。

苔庭、白砂青松庭…多様な様式が織りなす5万坪の広大な敷地には、約44名の職員、そのうち5〜8名の専属庭師が、日々静かな営みを続けています。約800本もの赤松を一本一本丁寧に剪定し、砂を手入れし、石組みのわずかな変化も見逃さない。その地道な手作業は、創設者と作庭家の智慧と、この庭園を守り続ける強い意志の証なのです。彼らの仕事が、数十年先を見据えた「生きた絵画」を次の世代へと継承していきます。
美は、維持の営みの中に宿る

合衆国の専門誌やミシュランで幾度となく最高評価を受けてきましたが、それはあくまで外からの光にすぎません。本当に輝いているのは、創設者と作庭家の理念が、半世紀を経た今も揺るがず、日々の手入れの中で静かに息づいていることなのです。

足立美術館の庭園は、私たちに「美とは何か」という真理をそっと教えてくれます。

美は、維持の営みの中に宿る──その姿こそ、永遠の庭園と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。
この美しさが、私たちの身心にも宿りますように。



(追記)
🌳 草苅 健 氏主宰の「雑木林&庭づくり研究室」にて、本稿を取り上げていただきました。深く御礼申し上げます。

http://hayashi-kokoro.com/

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